オンライン時代に求められる話し方⑩「アイ・コンタクトで“目力”を使う」
日本人の場合、昔から人と話す際に「目を合わせる」のが苦手でした。私の親の世代の80歳、90歳代の人たちに関しては、「人と目を合わせて話すのは失礼だ!」と教育されていたくらいです。
このことは実は私も経験したことがあります。私自身も話し方や聞き方は勿論のこと、人と目を合わせる「アイ・コンタクト」についても、一切学んだことがなかったので、話し方を勉強し始めて一番プレッシャーに思っていたのがこの「アイ・コンタクト」でした。
しかし、私の時代には、すでに「プレゼンテーション」という言葉が少しずつ浸透し始めた頃でしたので、「目で言葉を届けて、目で相手の反応をキャッチする」という認識はありました。トレーニングによって、「目を合わせて話さないと気持ちが悪い」「目を合わさずにはいられない!」という習得レベルにまで至り、しっかりとした身について来ました。
そんなある日、友人の家に泊まった私は友人のご両親が会話している様子を、いつも通りアイ・コンタクトをしてしっかりと聞いていました。
それから1週間位経ったある日、その友人からの話を聞いてびくりしてしまいました。なんと私の「アイ・コンタクト」が友人のご両親からすると、「観察されているみたいだった!」という感想だったのです。自分では努力してやっと身につけたアイ・コンタクトでしたが、年配の友人のご両親にすれば、人と目を合わせて話す習慣がないので、「違和感」にしか思えないのでした。
この辺も、コミュニケーション・スキルの重要なポイントで、「相手と状況に応じて、変化させる」という「柔軟性」が求められる場面でもあり、まだまだ未熟だと反省した体験でした。
このように、一般的な日本人の場合、頭でわかっていても、トレーニングして身についていないので、実際の生身の人間を前にすると、とてもぎこちなく、目を合わせるというアイ・コンタクトは難しいと言えます。
私の場合は、毎日の通勤時にアイ・コンタクトの「トレーニング」を行いました。例えば、駅について階段やエスカレーターにいるとき、反対側の人たちにアイコンタクトして行きました。そして、駅のホームに立って電車を待って並んでいる反対側のホームの人たちをざっとですが、顔を認識するように見渡しました。
そして、昼間のやや空いている電車の中では、できるだけ端の車両に乗り、連結部分に来て、ドアをさっと開けたら、大股で一歩前に出て、立ち止まってから、まるでプレゼンテーションのスタート時のように、車両にいる乗客全体を見渡します。そして、車両の通路をゆっくり歩きながら、左右の座っている人たち一人ひとりに対して、アイ・コンタクトをするのです。
このように端から端まで車両の通路をアイ・コンタクトしながら歩くことによって、何十人、何百人の人に目を向けるトレーニングができるのです。
ただしこのトレーニングの時の注意事項が一点あります。それは「あまり怖そうな人とは目を合わせないようにすること」です。最近はあまり聞かないフレーズですが、私が10代、20代の頃は下手に目を合わせると「ガン付けた」などと文句を言われ喧嘩になるケースがそう珍しくなかったのです。
でもご安心ください。今の時代電車の中では、ほとんんどの人がスマフォや携帯電話の画面を見ていますので、直接目が合うことは極端に減ってきました。そして、もしも目が合ったとしても、相手の方から視線を外すはずです。その理由は「私はあなたの知り合いではありませんよ!」という合図のようなものだからです。このように、眼差しひとつで、我々は言葉以上に相手に伝えることができるのです。「目は口ほどにモノをいう」「目は心の窓」と言われる所以です。
さて、オンライン時代の現代においても、このアイ・コンタクトをすることで、「目で言葉を届ける」ということはますます必要になってくると思います。
例えば、SNSで最近流行っている「Clubhouse(クラブハウス)」は音声だけのコミュニケーション・ツールです。相手を認識するスタートは相手の顔写真等の「アイコン」が頼りです。
この時に相手と話すような場合は、その相手のアイコンをしっかり見ながら話すようにしてみましょう。すると相手への伝わり方も変わってくるはずです。
これは、日常のリアルの「挨拶の場面」などを思い浮かべてください。職場に行って、恥ずかしいからと言って「床に向かって挨拶」をしたのでは、相手も誰に対して挨拶しているのか判断がつきにくく、その分返事も返って来にくいでしょう。オンライで「アイコンを見ながら話す!」ということは上記のリアルの場合に「○○さん!」と相手の名前を呼んで、相手がこちらを向いたら、「目を見て、おはようございます!」と挨拶の投げかけをするのです。すると相手は挨拶をしっかりキャッチして、すぐに返事を返してくれるはずです。
さて、それでは、「相手としっかり目を合わせる効果的な方法」をご紹介します。この方法だと、見る方も見られる方もプレッシャーがあまりなく、言葉のキャッチボールもかなりスムーズに行くはずです。
その方法とは、結論から言うと「自分の両目で相手の両目を見なくて良い」もっと具体的に表現すると、「自分の左目で相手の左目を見る!」というやり方です。
なぜ左目かというと、左目は「右脳」と繋がっていて、右脳は「感覚やフィーリング」を司っていて、「感じの良さ」を伝えることができるのです。そして、「片方の目」ですので、見る方も見られる方もリラックスして自然体でコミュニケーションを図ることができます。左目が見にくいという場合は、右目でも構いません。「両目見ない」と思うだけでも気持ちの負担感が半減します。
ZOOMなどの相手の動画映像が見えるような場合は、目の前にいない分だけでもかなり負担感が違ってきます。それと同時に、「自分から目を向ける」、「目で言葉を届ける」というトレーニングになるのです。
パソコンのカメラに向かって、「ここは大事!」というような箇所は、自分からパソコンのカメラに近づいて目を大きく開き、左目で相手の左目を見ているイメージでアイ・コンタクトをしながら「目力」で話しかけてみてください。話しかけられた相手も自然と「しっかりこちらをみて話しているから、こちらもしっかりと聞かなければ!」という気になるのです。実はこの状態は「相手の頭脳と感情に働きかけて、行動変容を促す」という人を動かす「説得」のコミュニケーションと言えるのです。このように「アイ・コンタクトは言葉以上に相手を動かす!」と言っても過言でないのです。
まずは、オンラインでのコミュニケーションの時に、相手の顔やアイコンをしっかりとみて話す場合と、そうでない場合の伝わり方の違いを体験して確認してみましょう。
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