夢をもう一度見ないか 28
次の日、いろはは早速スタジオに来ていた。
いろは:…失礼します。
??:あっ!いらっしゃい!
いろは:…本物だ!!!
??:改めまして、
『深川麻衣です!』
なんと、葉月さんはあの深川麻衣さんとのレッスンを取り付けてくれた。七瀬さんにも感謝だ。
麻衣:残り2日!よろしくね!
いろは:よろしくお願いします!
麻衣:…ということで。スタジオに来てもらってありがとね〜。
いろは:こちらこそ!光栄です…!
私は深川麻衣さんが運営するスタジオに来ていた。優しく暖かく迎え入れるさまはまさに聖母そのものである。
麻衣:聞いた話によると?強がる蕾を歌ってくれたとか。なぁちゃんから聞いた時凄い嬉しかったんだよね。
いろは:歌わせて頂けて、嬉しかったですし、何より楽しかったです!
麻衣:ふふっ、ちょっとさ、一緒に歌おうよ。
そういいピアノに向かう麻衣さん。軽やかなメロディーと共に優しい歌声が響く。
『家族や友達残して、旅立つ日は夢への一歩、そういつでもサヨナラは、強がる蕾…。』
いろは:…すごい。
私がただ歌っているよりも感情がこもっている…。
麻衣:…いろはちゃんが歌ってるのも、凄く上手。凄い。でもね、楽器に引っ張られてる部分があると思う。
痛いところをつかれた。ギターをまとめようとするあまり声がおざなりになりがちだった。
いろは:…やっぱりですよね。
麻衣:ふふっ、多分指は覚えられてると思うよ。だからね、
『歌声が主役だよ!って意識を持って欲しいな。』
いろは:なるほど…。
麻衣:楽器も凄く重要なんだけどね。人の心に響くのは歌声だなって。
いろは:…。
麻衣:茉央ちゃんの記憶も、きっと歌声が強いと思うから。一緒に頑張ろう?
本当に優しい人に恵まれている。
いろは:はいっ!
ーー
い母:ついに明日退院ね!
茉央:病気も治って、身体自体は凄い元気になりました!
七瀬:…無茶はしたらあかんからな?
茉央:うん、大丈夫や。
陽子:茉央ちゃんがついに帰ってくるんやなぁ。
茉央:お待たせしましたよホンマにな。
七瀬:…明日は忙しい一日になると思うから、今日は早めに休むんやで?
茉央:うん、どこ行くの?
陽子:…探し物を見つけに行くってとこかな?
七瀬:なんや、やけにオシャレな言い方してるなぁ。
茉央:…いろはちゃんのこと?
七瀬:ま、そんなとこやな。
陽子:今はなにか思い出せたことはある?
…夢の話は現実なのか…気になるな…。
茉央:夢でな、一緒にギターを弾く夢を見んねん。ただ。相手は誰かわからん。
七瀬:…そか。
陽子:どんな曲やってるん?
曲…歌詞……。曲…。
茉央:…サルビア…?
ふと思い出した言葉を言うと、なぁちゃんと陽子が笑いながら顔を見合せた。
ーー
麻衣:…うん!凄いよいろはちゃん!
2時間ほどレッスンをつけていただいた。
いろは:…これで心に響くかどうか…ですね。
麻衣:大丈夫!いろはちゃんは茉央ちゃんのこと凄い想ってるって感じる。
いろは:深川さんに言って貰えたら安心しますね笑
麻衣:ふふっ、さ、今日はもう帰ろ〜。遅くなる前に家に着くようにね。
いろは:ありがとうございました!
準備をし、スタジオを出る直前
麻衣:いろはちゃん!
いろは:はい!
麻衣:頑張ろうねっ!
優しい笑顔には不思議な力を感じる。
いろは:頑張ります!
笑顔は愛の処方箋とはよく言うもので、周りを幸せにする力があると感じる。
また1歩、運命が近づいた。