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夢をもう一度見ないか 29
いよいよ前日…
麻衣:今日はこの辺で終わりだね、明日のために早く帰ろう!
いろは:2日間本当にありがとうございました!
歌の価値観というか、概念を変えてもらった気がする。
麻衣:ふふっ、こちらこそありがとう。すっごく楽しかった!
いろは:そんな私なんか…。
麻衣:ぶー、謙遜なし!いろはちゃんは凄いんだよ!
優しく口の前にばつ印を作る麻衣さん。
いろは:えへへ、じゃあ頑張ります!
そうしてスタジオを出る直前。
麻衣:いろはちゃん!!
呼び止められる。
いろは:…はい?
そして、満面の笑みで
麻衣:自分らしく、だよ!頑張って!
そう言って頭を撫でてくれる。
動作の一つ一つがあたたかい。
いろは:ありがとうございました!!
ーー
いろは:…戻りました〜。
香ばしい匂いに包まれつつ店の中に入ると…
陽子:あっ!なぁちゃん帰ってきたで!
七瀬:おー!!おかえり!!
いろは:この匂いは…?
陽子:そういうこと!
七瀬:…ソースの2度漬けは厳禁やで?
過去一決まった顔で言っていたが
陽子:ごめん、トンカツ揚げてる音のせいで聞こえんかったわ。
いろは:…同じく。
七瀬:…なっ…。
ショックを受けてしまった七瀬さん、まさかのトンカツを焦がしてしまったが…
七瀬:…ソースの2度漬けを許可する。
との事で美味しく頂いた。
ーー
いろは:…ふぅ、さっぱりした。
お風呂上がり、私はいつも最後にお風呂に入る。
陽子:あっ!いろはちゃんおかえり!
七瀬:待ってたで〜!
2人が机を囲んで待っていた。
いろは:そこで何してるんですか?
七瀬:じゃーん!!
陽子:これ!好きなんやろ!!味違うかもやけど!
2人が出したのは
いろは:これって!かぼちゃプリン!?
陽子:そう!買ってきたの!みんなで食べよ!
七瀬:…クリーム乗ってるのがまたギルティやな。
いろは:ありがとうございます!いただきます!
3人でかぼちゃプリンを頬張る。
優しい甘さ、クリームのコク…
いろは:…んまぃ!!
陽子:えっ、何今の、超可愛いんやけど。
七瀬:ずるいわ。んまぃ!!
陽子:なぁちゃんやるとあかんわ。んまぃ!!
七瀬:陽子もあかんな。
いろは:…やめてぇ//
仲良く食べながら明日の話をした。
今日は眠れる日か、分からなかったが陽子ちゃんが
陽子:一緒に寝たってもええで!
と言ってくれたので2人で見事にぐっすり寝ることができた。
ーー
茉央:いよいよ退院やな。
い母:頑張ったね、お疲れ様!茉央ちゃん!
茉央:陽子が連れていきたいとこあるらしいからな。ちょこっとおめかししたろかな。
い母:いいじゃない!
茉央:ほんならこれを…
陽子:茉央ちゃーん!きた!!
化粧ポーチを開けた瞬間に陽子はやってきた。
茉央:タイミングぅ!!!
陽子:え?なんが?
七瀬:陽子!病院の中や!静かにせんかい!!
陽子もなぁちゃんも同じくらい声出てるなぁとは言えずに
茉央:…なぁちゃん。来てくれたんやな。
七瀬:いや来ないわけないやろ
陽子:え?うちは?
茉央:いや陽子はまぁ、何となくわかってた。
陽子:…えぇー。なんか残念やな。
七瀬:まぁええよ、準備出来たらいこか?
茉央:うん、ちょっと待っててな。
ーー
そうして晴れて退院した。
陽子となぁちゃんが行きたいとことやらに付いていく。
陽子:まず最初は…このカフェやね。
茉央:…どこにでもあるタイプのカフェやな。
といいつつも、何だか既視感はある。
七瀬:まぁ行こか。
店の中、雰囲気も、今から案内される席も、何だか見に覚えがある。
店員:こちらの席になります。ご注文お決まりでしたお伺いしますが…。
陽子:アイスティーで!
七瀬:アイスコーヒーで。
陽子:茉央は何にするん?
茉央:うーん…えーっと…。お店のおすすめって…?
店員:カフェオレになります。
カフェオレ…。カフェオレ?
茉央:あ、えと、それで。
店員:かしこまりました。
…なんだかやり取りやったことあるような…。
陽子:この後はなぁ、あそこやな。
七瀬:んな、でもこの時間やし、多分なんもやっとらんよな。
茉央:え、次どこ行くん?
七瀬:そりゃぁ…内緒よ。
茉央:えー、けちんぼ。
七瀬:はいはい、言ってなさい。
陽子:ふふっ、痴話喧嘩見るのも久しぶりやわ。
店員:お待たせしました、ご注文の品になります。
七瀬:あ、ありがとうございます。
陽子:はい、まおちゃんの。
茉央:おん、ありがとな。
1口飲む、ミルクのコクのある甘みとコーヒーのキリッとした苦味…。
茉央:…ウチこれ飲んだことある…?
陽子:ふふっ。
七瀬:…そうか、飲んだことあるかもな。飲み終わったら次行くで!
カフェなのに滞在時間は15分ほど、会計を済ませて次の場所へ。
ーー
七瀬:…真昼間は人多いんよなここ。
茉央:これ…ただ人多い道ちゃうん…?
陽子:もうすぐもうすぐ!
七瀬:見えてきたな。
ロータリーを抜けると、そこには小さな広場がある。
茉央:…なんやこ…こ…?
??:『茉央!大丈夫!?』
??:『茉央、やっぱ凄いよ!』
茉央:…えっ?
陽子:どしたん?
茉央:…うちここにも…来たことある…?
陽子:…じゃ、最後のとこいこか。
七瀬:せやな。すぐ近くやから。
茉央:…なんやこれ。
思い出せない。でも、絶対に思い出さなければならない。そんな気がする。
七瀬:ほら、ここの階段下んで。
陽子:はーい
茉央:…ライブハウス…?
七瀬:茉央から入り。うちらはあとから行くから。
陽子:すぐ行くからな。
茉央:…わかった。
少し重厚なドアを開け、奥まで進む。
そして、カーテンをくぐり抜けると…
??:茉央。待ってた。
茉央:いろはちゃん?なんでここに?
いろは:ふふっ、私の歌、聞いて欲しいなって。
茉央:…貸切までやるなんて、凄いなぁ。
いろは:…じゃあ、茉央。
私の最後のソロライブ、始めるね。