
誰よりずっと輝く君を
あやめ:ねぇ、どうしてそんなに優しくしてくれるの?
〇〇:んー、優しくしたいからでしょ
あやめ:意味わかんない…
〇〇:…そっか。
性格も、やりたいことも、何もかもが真反対。
でも、生まれる前から知ってたんじゃないか?ってくらい心は安らぐ。なんなんだろう。
…いつか素直になれる時が来るかな。
ーー
大学で出会った〇〇、必修が同じでよく話すようになって、いわゆるいちばんの友達と呼べるくらいに仲がいい、と思ってる。
〇〇:あやめー。
あやめ:はいはい、また課題?
〇〇:いや、今回は大丈夫。
あやめ:なら良かった。
〇〇:隣失礼します。
今日も講義が始まる。
2回生では、まだまだ履修の数は多い。
特段興味もない話を聞き流しながら考える。
あやめ:…。チラッ
私たちはどんな関係なんだろうか。
ーー
友達からはよく
レイ:付き合ってないの!?
あやめ:うん。
レイ:なんでぇ?お似合いだよ?
あやめ:なんか、そんな感じじゃないし。
なんて言ってるけど、思った以上に私は〇〇のことを気にしてる。目で勝手に追ってしまうのだ。
ーー
あやめ:はぁ。
〇〇:どしたん。
あんたの事で悩んでんだよ。なんて言えなくて
あやめ:なんでも。ほら、スクリーン変わったよ。
〇〇:やべ、メモってなかった。
あやめ:なにやってんのよ…。
〇〇:あやめ見して。
あやめ:はい。
〇〇:サンキュ。やっぱ字上手いな。
あやめ:…そ。
こんな何気ない一言を貰えるだけで嬉しくなってしまう。意外と単純な女なんだな。って思ってしまう。
ーー
今日もなんとなく講義を聞いて過ごす。
隣には…
〇〇はいない。なんでも今日は予定があるとか。
あやめ:…はぁ。
レイ:ため息出てる!どした!
あやめ:いや、別に。
レイ:わかった!〇〇くんでしょ!
あやめ:…べつに。
レイ:ふっふっふ。あらかたどんな関係なんだろうって思ってるんだろう!
なんでこの子普段なんも考えてなさそうなのにいつもこういう時はするどいんだろう。
あやめ:…はぁ。
レイ:正解みたいね。そんなに悩むことないと思うけどなぁ。
あやめ:…難しいんだもん。
レイ:うん。恋は難しいよね。私もわかんない。
あやめ:…ん。
レイ:もうちょい素直になってもいいんじゃないの?
あやめ:それが出来ればどんだけ楽か…。
レイ:たしかに。難しそぉ。
あやめ:…全然そんなふうに見えなさそうなんだけど。
レイ:私は割と出してるからね。
あやめ:フルで出してるでしょ…。
レイのようにとまでは行かないけど、ある程度は気持ちを出さないとなのかな。
迷宮の中に入った気分。
ーー
今日は講義の後に2人でお出かけ。
駅周辺は施設が充実してて暇を潰すにはもってこいだ。
レイ:んー、いいね!楽しい!
あやめ:だねぇ。
レイ:次どこ行こっか〜。
あやめ:んー、喫茶店とかでゆっくりしたいかも。
今度〇〇が課題を見せたお礼に喫茶店で奢ってくれるって話になってる。ここから右に行けばすぐだし、せっかくだし下見にでも。
レイ:おーいいね。あ、ごめん、ちょっとお手洗い!
あやめ:はーい、ここで待ってるから。
モニュメントの前で待つ。さっきトイレ結構並んでたし少しかかるかなぁ。
なんて考えてると…。
男:お姉さんひとり?
ナンパだ。
あやめ:いいえ、待ってる人がいるので…。
少し場所を変えようなんて歩き出そうとすると…
男:友達よりも楽しませるからさぁ
付いてきた。しかも回り込んで。しつこい。
あやめ:やめてください。
男:ふーん、なんか反抗的だねぇ。
そう呟き腕を掴まれる。
あやめ:!?やめ
男:騒ぐな。行くぞ?
凄まれる。怖い。声が喉から出てこない。
身体も上手く動かせない。
あやめ:や、いや…!
もう連れていかれると思ったその時。
『あやめ!!』
聞き覚えのある声。
○○:ごめん待たせたな!
あやめ:○…○…!
右手をサッと握ってくれて。
○○:すません、人の彼女に手出さんで貰えます?
男:なんだよガチかよ。つまんねぇの。悪かったよ。
そのまま手をほおり投げて解放される。
あやめ:あ、……
ダメだ、体が強ばってる。
○○:…大丈夫?安心して。
優しく手を握ってくれる。
ゆっくりと、ゆっくりと落ち着いていく。
レイ:おまた…せ?
○○:あれ、清宮。お前ひとりぼっちにさすなよ。あやめ大変だったぞ?
レイ:え!なんかあったの!?
一部始終を伝えられて
レイ:…本当にごめん!
平謝りされた。でも別にレイは悪くない。
あやめ:わたしが、上手くまけなかったから。大丈夫。
右手に暖かな温度を感じながらいう。
レイ:…うん、ごめん。ところでさ。
『なんで手繋いでるの?』
○○:あー…。えと。
あやめ:!?!?///
色々落ち着いてやっと気づいた。私、手繋いじゃってる。
レイ:…ちょっと別のとこいようかなぁ!
あやめ:あっ!ちょっと!
そのまま立ち去ってしまうレイ。
口パクで『ガンバレ!』なんて…。
あやめ:…むりだよ。
○○:なにが?
口から出てしまっていた。
あやめ:…なんでもない。
そんな素直になれない。可愛げなんてないんだろうな。
あやめ:…ねぇ?
○○:ん?
ふと気になった。どうして。
あやめ:どうしてそんなに優しくしてくれるの?
可愛げもない。素直でもない。そんな私になぜ優しくしてくれるのか。
○○:んー、優しくしたいからかな。
あやめ:…意味わかんない。
でも嬉しかった。
○○:そっか。
性格も、やりたいことも、何もかもが真反対。
でも、生まれる前から知ってたんじゃないか?ってくらい心は安らぐ。なんなんだろう。
あやめ:…ありがとね。
○○:いやいや、助けられてよかった。
あやめ:ごめんね、レイに勘違いされちゃったね。
…勘違いじゃなければいいのに、なんて思ってしまう。
○○:ははっ、勘違いでもいいんじゃない?
あやめ:…えっ?
○○:俺はあやめのこと好きだよ。女の子としてね。
急に言われて、頭がショートする。
あやめ:あ、ば、ばっかじゃないの!?私なんかにそんな…。
その時、頭を撫でられる。
○○:素直じゃないのも、でもすごい優しい人ってのも、何となく気づいてるから。俺はそんなあやめが好きなの。
あやめ:……。っ…うぁ…。
○○:え!?泣くほどやだった!?ごめんごめん!!
あやめ:…ちがうがらぁ…!!
○○:…えっ?
あやめ:…わたしも…好きだから…っ…。
やっと、やっと素直に言えた。
○○:まじ?
少し間抜けな顔が目に入る。
あやめ:…ふふっ、うん!
初めてこんな笑顔で○○を見れた。
○○:…めっちゃ嬉しいわ。
あやめ:…離さないでね。
○○:まかせて。
少しは素直になれたのかな。
ーー
あやめ:そういえばなんでここに?
○○:あー、実はさ、この前行きたいって言ってたあのお店。ちょっと試しに行ってみたいなぁなんて。
あやめ:…それで大学サボったの?
○○:…それだけじゃないけど。
あやめ:…ふーん。
○○:ま、いいだろ。清宮探しに行こ。
あやめ:…特別にレジュメもなんでも見せてあげる。
○○:ふふっ、ありがとな、あやめ。
なんだかんだ優しくしてしまう。
そんな彼のことが好きなんだ。
ーー
あやめとは、ずっと仲良くしてた。
好きだったし、それに素直じゃなくても優しいところとか、講義中真面目に聞いてるときとか。
そんな誰よりも輝いて見える君を、俺は守りたかったし、1番近くで見たかったんだ。
○○:…これやっぱ美味いっしょ。
あやめ:なかなかやるね。○○にしては。
○○:…素直じゃないねぇ?笑
あやめ:うるさいなぁ。
○○:ふふっ、楽しいか?
あやめ:…たのしい。
ちょっとずつ、君の迷宮を解き明かしてみたいな、なんて思ったんだ。