
この瞬間を無駄にはしない
桜とのLINEが終わり悶々としていると
??:んで?なんで顔赤くしてんのよ。
〇〇:うるさいなぁ、
『美波ねぇ』
美波:姉に向かってうるさいって何よ!
美波ねぇ、大学3年生、美人だし高身長でスタイルいいけどなんか、彼氏はできてない。
美波:なんかいった?
素敵な女性です。
〇〇:さーせんさーせん。
美波:あーあ、可愛い弟の悩み相談に乗ろうと思ったのにな〜。
〇〇:…。
美波:もう、で、どうしたの?
〇〇:…恋煩い?
美波:…!?そっかぁ、〇〇についに好きな子が…、
〇〇:…好きなのかな、
美波:…どういうこと?
〇〇:…俺さ、人好きになったことなくて。
美波:確かに、浮ついた話1回も聞いたことないかも。
〇〇:それは余計かも。でもまぁ、そうだね。
美波:まぁね、好きになるって分からないよね。
〇〇:なんかきっかけがあったりとかさ。
美波:…きっかけっているかな?
〇〇:?
美波:いつの間にか好きになってた…って話もよく聞くしさ。
〇〇:…。
何となく思い返してみる。
屋上で食べたご飯、一緒に買ったラムネ、
初めて会った時のこと…。
〇〇:…あぁ、なるほど…。
美波:…相手がどんな子か知らないけどさ。〇〇は〇〇の考え方もあるから。
〇〇:…うん。
美波:…ふふっ、ちょっとはためになった?
〇〇:あはは、やっぱ美波ねぇには勝てないな。
美波:じゃあ今度デートしよう!!!
〇〇:それとこれとは違うかもなぁ。
美波:なーんでぇ!!
〇〇:…いないの?美波ねぇには。
美波:ふふっ、どーかしらね?
〇〇:ふーん?
美波:さ、明日も練習でしょ?今日はもう寝な。
〇〇:ん、ありがとね。おやすみ。
美波:うん、おやすみ。
部屋にもどる〇〇を見送る。
美波:…ついに〇〇にも…!!史緒里にLINEしなきゃ…!
ーー
〇〇:…俺、桜のこと好きなんだな。
自覚してしまうとなんだか照れくさい。
でも
『絶対に私のこと好きにさせるから!』
あの言葉は本当になる。言霊って大切なんだなって思う。ただ…
〇〇:…落ち着かないな。
何となく△△へLINEを送る。
〇〇:『よう』
△△:『お前何時まで起きてんだよ。』
〇〇:『いやお前もだろ』
△△:『どした急に。』
〇〇:『いや、なんとなく?』
△△:『乙女か。』
〇〇:『お前彼女持ちだろ、少し相談乗れ。』
△△:『まあいいよ笑』
〇〇:『お前ウザ。』
△△は△△でなんか、分かってくれてるんだろうなと思う。
△△:『どうせ川﨑さんだろ。お前好きなの?』
〇〇:『いまさっきちゃんと自覚した。美波ねぇのせいで。』
△△:『…マジか。』
〇〇:『…野球も大切にしたい。』
△△:『…わかる。ただ、待つ側もしんどいよ。』
〇〇:『…そうだよな。』
△△:『頑張れよ。』
〇〇:『ん、ありがと。』
△△:『あと俺明日美空の大会見に行くから。』
〇〇:『は?了解。』
△△:『じゃおやすみ〜。』
〇〇:『おう』
…桜の立場だと、辛いんだろうな。
ーー
次の日、今日は午前練で午後はオフ。
朝からすごい熱気だ。
〇〇:…しゃすっ!
今日は守備に重きを置く。
〇〇:…っ…!?
しかしなかなか練習に身が入らない。
正面の打球もエラーをしてしまう。
〇〇:…くそっ。
集中出来ていないのは、きっと、桜のことを考えているからだ。
〇〇:…しゃすっ!
グランドに立つ、その限りは煩悩は消す。
気持ちを切り替え練習を終える。
主将:…めずらしいな。お前がそんなエラーするなんて。
〇〇:…っす。
主将:…頼むぞ。お前らの代は近いから。
〇〇:はい。
主将:じゃ、お疲れ。
〇〇:おつかれっす。
ーー
同じ頃、桜もまた…
桜:…落ち着かない!
ソワソワしていた。昨日好きな人に声を聞きたいだなんて言われて落ち着いてられなかった。
桜:…ちょっと外出よう。
ついでにアイスでも…なんて思い玄関を開けてすぐに家の中に戻る。
桜:…あつぅ…。
時刻は昼過ぎ、ちょうど地獄のような炎天下。
速攻家の中に逃げた桜。
なんとなくソワソワしながら、ふと
桜:…そういえば、
○○は私のことどう思っているのだろうと、思った。私がずっとアピールしていても中々…。
桜:…私の感情って、迷惑じゃないのかな?
もし迷惑ならって考えると。
桜:…うぅ…。
今日の電話もこんな内容なら…。
桜:諦める…?
猛暑が降り注ぐ、急な不安感で蜃気楼のように桜の精神が揺らいでいた。
ーー
〇〇:…はぁ。
家に帰りシャワーなどを済ませる。結局想いは定まらない。ふと陸上部の大会が終わったことを思い出し、連絡。
〇〇:『残念だったな。』
△△:『美空の本気が見れた。』
〇〇:『なら良かったじゃん』
なんて話をしていると、
△△:『…お前はどうすんの。』
核心を付く質問。
○○:『…俺は、うん、決まったよ。』
△△:『さっさとケリつけろよ。』
…そんな簡単に付けられるものなのだろうか。
○○:『おう、ありがと』
すると、△△が
『お前はさ、もっとジコチューになっていいよ。』
△△:『お前は野球でも、日常でも、周りに合わせてる。だから、もっと自分自身の気持ちをもて。』
△△:『ま、あとはお前次第だ。』
○○の心に突き刺さる。
○○:『…おう。』
ジコチュー…
○○:…自分に、正直に、か。
心のモヤが晴れた気がする。
日は西に落ちていた。
ーー
桜:…と、とりあえず…電話、してみる…?
結局自室で考え込んでいたら夜を迎えていた桜。
桜:いや、でも、なんか…私から行くのも…。
○○の気持ちがわからない。
なんて思っているとスマホが震える。相手は
○○:『…もしもし?』
桜:あ、も、もしもし!!
○○:『いきなりだったよね、ごめんね?』
桜:い、いや、全然…!
○○:『…ふふ、なんか落ち着く。』
桜:…そうなのか。
その言葉の意味はどっちなのか。何も思っていないからなのか…。
○○:『…今日はなにかしてたの?』
桜:いや!外暑くて出ようとしたけど…。すぐ戻っちゃった。
○○:『あはは、今日暑かったもんね』
なんとなく話を繋いでいるが、心そこに在らずだった。
○○:『…桜?大丈夫?』
桜:…ねぇ?
○○:『どうした?』
…私のこと、どう思ってるの?
桜:…んーん!なんでもない!
たった一言が言えない。最初はあんなに大胆に言えたのに。
○○:『…ほんとに?』
桜:…ほんと…だよ…?
○○:『…ごめん、俺にはそう聞こえない。』
○○が向かい合おうとしてくれている。
わかっているけど、その先が…怖い。
桜:…。
○○:『…話すの嫌かな?』
気を使わせてしまっている。
申し訳なさ、不安、自分への不甲斐なさ、すべてが重なってしまい
桜:…うぅぅ…っ…。
泣いてしまった。
○○:『…桜、落ち着いて、大丈夫?』
桜:…わだしっ、○○のことすきなの…っ、
でも…もしめいわくだっだらっで…っ、それで…っ、うぅ…っ…。
○○:『…やっぱ、会おう。』
桜:…えっ…?
○○:『会いに行くから。いつもの待ち合わせのとこいて。』
通話はそこで終わる。
桜:…なんで、っ…?
もうよく分からないまま家を飛び出し、待ち合わせ場所へ向かった。
ーー
どうして、あんなに苦しめてしまっていたんだ。自分で自分を責めてやまない。
○○:いそげ…っ!
いつもの通学路を走り抜け、待ち合わせ場所に着く。そこには
桜:…○、○○…っ!
瞬間、○○は…
ーー
桜:…ふぇっ?
何が何だか分からないまま、温もりを感じる。
○○:…はぁ、はぁ、ごめん。
私、抱きしめられてる。○○の鼓動、すごく早い。
○○:おれ、自分に言い訳して、逃げてた。
桜:…え?
○○:…今まで、人すきになったことなくて、分からなくて。
桜:…うん…。
○○:でも、わかったんだ。
桜:…わたし、○○が…。
言おうと思ったら
○○:ごめん、俺が言う。
『桜のこと、好きだ。』
一瞬時が止まったような感覚に陥る。
あんなに欲しかった言葉を受け取った、のに、実感がわかなくて
桜:…えっ、…えっ?
ずっと戸惑ったまんまだった。
○○:…遅くなって、待たせて、ごめん。
桜:…ほんとに?
○○:うん、桜のことが好き。
桜:………。
○○:…桜?
抱きしめられてるだけで、好きな人に好きって言われるって、こんなにも嬉しいものなのか。
桜:…うぅぅぅ…っ…!!
○○:…ふふっ、ごめん、遅くなって。
桜:…ちが、うっ…うれしぐで…っ!
ずっと願ってた、想ってたから。
桜:…わだじ、不安でっ、好きって感情が…っ、うぅ…っ、迷惑じゃないかって…っ…!
○○:…迷惑なわけない。
桜:…よがっだ…っ!!
○○:ごめんね、ずっと苦しめてた。
桜:いいのっ!そんなことないがら…っ!
ひとしきり泣き続けた桜とそれを優しく抱きしめる○○であった。
ーー
そのまま近くの公園のベンチへ
○○:…落ち着いた?
桜:だいぶ。目腫れてる。みないで。
○○:それは無理な相談だよ。
桜:…むぅ。
○○:…//
桜:…どうしたの?
○○:…やっぱ可愛いよね。
桜:…へぁ///
ストレートに伝えられて顔を赤くする。
にしても…
桜:…なんで、急に?野球のことも…
○○:…わかんない
桜:…んん?
○○:でも、なんか、今この時じゃないとダメだって思って。
桜:…ふへへ…。
○○:野球も、桜も、両方とも大切にする。欲張りかもだけど…
桜:んーん、欲張りでいいの。
そっと手を重ねる桜
桜:欲張りな○○が辛い時は私が支えるの、逆に私が辛くなっちゃった時は…よろしくね?
○○:…まず辛い思いをさせないようにするよ。
桜:…えへへへ…////
○○:…かわいい…///
改めて可愛さを認識した○○は赤面、桜も安心してしまい気が緩みきっている。
○○:…よし、そろそろ夜も遅いし、帰ろっか。
桜:…うん。
○○:…桜?
すると
桜:…ん…。
両手を広げて待っている。
○○:…何してるのかな?ニヤニヤ
桜:…ん!!///
○○:ふふっ、ごめんね。
優しく、強く、抱きしめ合う。
桜:…大会、頑張ってね。応援行くから。
○○:もちろん。甲子園連れていくから。
桜:楽しみぃ
○○:ふふっ、じゃあ行こうか。
桜:うん!ありがとう!
迷い晴れ、2人で歩む。
桜の恋心は満開になりました。