ウィーンのブルータリズム建築 ヴォトルバ教会のはなし
大学院でブルータリズムについての課題が出た時のはなし。
課題の内容は荒れ果て忘れ去られたコンクリートの塊を蘇らせるというものでした。
ブルータリズム建築について少し説明すると、、、
Brutalism(ブルータリズム建築)は第二次世界大戦後の1950年代世界中で流行した建築様式で、ブルータルは獣のような、荒々しいという意味なのですが、その名の通り文化的要素が低く、特徴はBeton Brut(生のコンクリート)でコンクリート打ちっぱなしなど建築資材の質感が荒々しく剥き出しになっている野獣のような建築のことを言います。
しかしこの建築は1970年代に醜い建築 暗くて汚らしいと批判され衰退していくのです。
今回の課題の目的はこの一度衰退した建築に再び光を当てるために何ができるかというもの。
この課題の趣旨を理解するのにも先生が抽象的な言葉(しかもドイツ語)ばかり使うのでかなり時間がかかったのですが、、、その話はまた今度にでも。
シュトゥットガルトから飛行機で1時間半ほど
地理的にはヨーロッパの中心に位置するオーストリアのウィーンへ行ってきました。
ウィーン郊外の丘の上にKirche zur Heiligsten Dreifaltigkeitというカトリック教会があります。
このコンクリートを積み木のように積み上げたような建築は世界のブルータリズム建築の一つとして注目されているので参考のために見学に行きました。
この建築はウィーンの彫刻家フリッツ・ヴォトルバがデザインした模型を基に、建築家フリッツ・G・マイヤーが建築物として1976年に完成したものです。
コンクリート製の積み木を積み重ねたような形が印象的な建物で
それは内部からもはっきりわかります。
対称性や明確性はなくランダムに積み上げられた152個のコンクリートの塊とその隙間をガラスが埋めるように配置されていて、隙間から差し込む光が礼拝堂を照らします。
室内に入るととても不思議なのですが、
この教会の自然光がさまざまなかたちと大きさの隙間から差し込み、さらにランダムに積まれたコンクリートブロックに反射して生み出された光たちはそれぞれに個性があるようなそんな感じです。
強くもあり、柔らかくもある
個性豊かな光たちを見ていると
これは統一や均一からは決して生み出すことのできないことだなあと感じました。
現在も毎週礼拝が行われている教会だそうです。
1970年代にブルータリズム建築は暗く閉鎖的な感じを受け、悪い印象を持つようになってしまいました。しかし住宅街から外れた緑が広がる丘の上のこの荒々しい建築は現在も地域の人々に愛されています。
人々が集まり、決して閉鎖的な印象ではなく
室内に降り注ぐ光が神秘的に目に映るそんな教会でした。
いつも通り発した声が空気に溶けて響くこの空間
不規則で不安定だけどあたたかく照らす光
シンプルな大胆さがとても美しく見えるのです。
一度衰退した建築様式が50年経った今再注目されていますが
「なるほど今回の課題はこういうことか」と合っているか間違っているかはさておき私なりに理解した1日でした。
本日のおすすめ本
さくさくらでした