孤独ねグルメ 第二話
中野、久しぶりに来たな
ここに来るといつも人の、そして街のエネルギーを感じる
ただ単純に栄えてるというだけじゃないエネルギー
夢を持った若者が多いからか
趣味に没頭した人が集まるからか
いや、それだけじゃない気がする
なんだろう
うまく説明できない
とにかく、魅力の詰まった街である事は確かだ
さて、仕事も終わったし
用事も済ませた
少しブラつくか
お!
ここの喫煙所は開いている
ちょっと一服していくか
タバコを吹かす人の群れと
それを遮る高い壁
そして人間共を見下ろすような抜けた青空
なんだかな〜
体にいい事しなきゃいけない気になってきた
体にいいといえば食事だよな
そうだ
なんだか無性に
腹が
減った
店を探そう
うわっ!
気づけばもう2時半過ぎてるじゃないか
ランチタイムが終わる時間だ
通し営業の店
ランチタイム終了で一旦閉める店
中野はどっちが主流なんだ?
もし後者なら一刻も早く店に入らなければ
店はたくさんある
選り取り見取りだ
あとは、
俺の胃袋が何を求めてるか、だ
数時間前にサンドイッチをつまんだから
ガッツリを所望してるわけじゃない
かといって軽食で済ましたくもない
さ〜 どうするか
今は寿司の気分じゃないな〜
今日はチェーン店はやめておくか…
インド定食?
カレーライスって事か?
でもナンもあるな
謎だ
気にはなるけど、一旦パスだ
ラーメンって感じでもないんだよな〜
名店じゃないか!
でも…
今日はすいません
さ〜 どうする?
いろいろあり過ぎて目移りしてしまってるぞ
時間が無い焦りもあるな
何かビビッとくるものはないか…
ステーキ
いいじゃないか
あしたのジョーが座ってる
テレビで観た事ある気がする
はっきりとは覚えてないが、
名店かもしれない
決まりだ
建てつけの悪い引き戸
こんなもんじゃ怯まないぞ
カウンターメインの店だな
やっぱりご時世だな
座れない席を作って間隔を空けてる
とりあえず空いてる席に座ろう
あ!
入り口すぐの席に座ってしまった
奥の方が店の感じも見れるのにもったいない
メニューが見当たらないぞ…
隣の使われてない席のメニューを勝手に取ってもいいものか
あ、その隣の人がメニューを渡してくれた
ありがたい
ランチメニューはざっくり
ステーキかハンバーグかだな
今の気分はもちろんステーキだ
130gならいけるだろう
“すいません、ランチのビフテキ130gを”
「ソースはいかがなさいますか?」
ソースを選ぶのか
う〜ん、悩むな
“1番オーソドックスなのってどれですか?”
「おすすめは特製バターですね」
“じゃあそれで”
バターで肉
まぁでもおすすめには乗っとくべきだよな
お冷とおしぼりはセルフサービスか
なんだ?
ウルトラマンがいるじゃないか
入り口のジョーといい、こういう遊び心は嫌いじゃない
しかしお店でステーキなんて久しぶり過ぎて
130gの見当がつかない
大丈夫かな…?
お、来たぞ
早いな
これくらいならペロリだな
ライスとスープもセルフ、と
おかわり自由らしいし、好きなだけ食べられるシステム
いいじゃないか
お腹がペコちゃんの時は重宝しそうだな
欲張って少し多めによそってしまった
貧乏性、万歳
“いただきます”
まずはステーキからだ
けっこう切りにくいな
筋が…いや、ナイフの使い方の問題か
あぁ、肉の塊、いい
特製バターをつけてみるか
これだけで食べるのか?
ちょっと物足りないような…
ん?
よく見ると、お好みで卓上の…あった!
ステーキにはソースだと思っていたがこれは醤油
いや、正油
味がしっかりした!
ちょっと濃い味だけど、ご飯がすすむ
何より、やっぱりステーキはこういう方がいい
付け合せのコーンもバター正油で
いいじゃないか
ご飯がどんぶりだからナイフとフォークじゃ
食べにくいな
さっきの人、フォークだけでご飯食べてる
そうか、気取らなくていい店なんだな
お店の人がのれんを下げた
もう3時過ぎてるし
店を一旦閉める時間なのかもしれない
長居しても迷惑だし
ご飯のおかわりも、今日はいいか
よし、一気にいくぞ
ふぅ〜
“ごちそうさまでした”
あ、さっきの人にお礼言っとこうかな
耳にイヤホン、スマホで動画観ながらの食事か…
無理に声かけるほど野暮じゃない
自分の世界に浸ってていただこう
やっぱり肉はいい
ん?
3時半までは開いてたのか
そんなに慌てる事もなかったな
どうりで彼女もゆっくりしてたはずだ
まぁいい
時間的にはまだ昼間なのに
太陽はもう夕陽の顔をしだしてる
ステーキに元気をもらい
中野に元気をもらった
いい1日だった
帰ろう
第二話
東京都中野区の満腹ステーキランチ