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みんなで動かない【毎週ショートショートnote】

文明開化頃。
写真に撮られると魂がとられるという迷信があった。

これはある家族の物語である。

「写真に魂をとられるのは、あたしゃまっぴら御免だよ。」
とその家の祖母が写るのを拒否した。

「だけどさ、嫁ぐ娘の為に写真を撮ろうって皆で決めたじゃないか。」
と父親が説得する。

「嫁ぎ先が遠方だから、里帰りも難しいからね。」
母親の目が潤んでいる。

「写真技術師の人待たせてるから、早くして!」と息子がせっつく。

「では、こうしたらどう?」
と末娘が提案したのは…。

「──はーい、撮りますよ~。」
と合図を送った技術師は面食らった。

一家全員が猛スピードで踊り狂っているではないか。

当時の技術ではカメラの露出の関係で、ある程度静止していないと、姿を写せない。

「わー、みんなで動かないっ!」

しかし家族は「これで撮って下さい」の一点張り。

現像した写真を送られた娘は、こう一言。
「何これ。心霊写真?」

エレキテルの次は写真機。
目的が写真を撮ることじゃなくなってます。

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