Sweet Valentine 【前編】
本編「紫陽花の季節」の少し前、柊司とあおいの物語です。
2020年2月。俺があおいの家に泊まっていた時のこと。
目を覚ますと、朝陽の差す中あおいが泣いていた。
「あおい…どうした?」
俺は彼女が泣いている理由が分からず困惑した。
「柊司くん、私ね…時々理由もなく悲しくなることがあるの。気にしないで。」
彼女はゴシゴシと手の甲で目をこすった。
泣いている理由が、俺が何かしたわけではないのだと安堵するのと同時に、彼女が俺のいないところでひとり泣いていると思うと心苦しくなった。
彼女は両親が離婚していて父親が不在、母親も仕事一辺倒でほとんど彼女を構うことがなかった為、心に悲しみを抱えている。
出会った当初はおどおどしていたあおいも、俺と付き合ううちに笑顔も増えていったのだけど…。
俺はすっかり冷えきってしまった彼女の身体を抱き締めながら、自分には彼女に何をしてあげられるだろうと考えていた。
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