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コラボレーション作品

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#エルバヴェール

【コラボショートショート】思い出と手を繋ぐ

【コラボショートショート】思い出と手を繋ぐ

11/10は「ハンドクリームの日」ということで、コラボ小説「ただよふ」の、澪さんとお別れした後の航さんのショートショートを書きました。

香水を買いにロクシタンのショップに来た僕は、見覚えのあるハンドクリームを見つけた。

別れた最愛のあなたが、香水とお揃いで使っていたエルバヴェールのハンドクリーム。

僕はテスターに手を伸ばし、クリームを付けていた。

クリームの香りと柔らかなテクスチャー。僕は

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【コラボ小説】ただよふ 21(「澪標」より)

【コラボ小説】ただよふ 21(「澪標」より)

僕と同じ日に出社していた志津に、あなたの異動の詳細を聞かされた。

「北関東事業所の水沢が退職して、向こうの人員が足らなくなったので、本社から1人北関東に寄越してほしいと頼まれてな。ちょうど鈴木が北関東で働きたいと異動願いを提出していたので、そのまま異動してもらったんだ」

あなたと別れたあと、Zoomミーティングで何度か顔を見ていたが、僕は内心気まずくなってしまっていた。それは、あなたも同じだっ

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【コラボ小説】ただよふ 9(「澪標」より)

【コラボ小説】ただよふ 9(「澪標」より)

あの日から4か月、あなたとは、上司と部下のお行儀のよい関係を維持してきた。
互いに、それを逸脱できないことを理解していた分、相手の眼差しや仕草に潜む特別な思いを探していた。
2人の間に流れ出してしまった親密な空気を周囲に悟られないように用心することも忘れなかった。
もっとも、僕とあなたが2人きりになったのは、たまにランチをともにしたときくらいで、周囲には、気の合った上司と部下にしか見えなかっただろ

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【ショートショート】人魚の夢(「澪標」6話より)

【ショートショート】人魚の夢(「澪標」6話より)

僕は冷たい海に沈んでいった。
切り刻まれるような痛みが体温を奪っていった。
肉体は指先から泡と化し、今にも消えそうになった。

絶えそうな意識の中で、泡になってしまった僕の体をひとりの人魚が集めていくのを見た。

僕は人魚のキスで目を覚ました。
そこは洞窟の中で、夜の海が見えた。

「間に合って良かった。」
人魚は微笑んだ。

僕は体を起こした。
全身は痛むが、確かに僕は生きていた。

しかし、人

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【コラボ小説】ただよふ(「澪標」より) プロローグ

【コラボ小説】ただよふ(「澪標」より) プロローグ

この小説は、may_citrusさんの小説「澪標」を、海宝課長の視点から私の想像で書いたものです。

あなたが北関東事業所に異動してしばらく経った頃、本社にいる僕のもとに青天の霹靂の情報が舞い込んできた。

それは大学の弓道部時代からの友人、志津からもたらされた。

「航、鈴木が寿退社だってよ。」
「…志津課長、仕事中は海宝と呼べと…って、え?鈴木さんが?」

鈴木澪。僕が愛した運命の女性。
双極

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