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2022年10月の記事一覧

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 2 (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 2 (「澪標」シリーズより)

僕は澪さんから受け取った香水瓶を枕元に置くと、澪さんに手を差し出した。

「……手を…握ってもらって…良いですか?」
僕は幼子のようにねだった。

「ええ、良いですよ。」
あなたは僕の手を包むように握ってくれた。

「兄さん、起きてる?入るよ」
見舞いに来た弟の千洋が病室に入ってきた。背の高い弟は、ベッドに寝ているといつもより大きく見えた。

千洋は僕の手を握るあなたに目を向けると、「兄さん、こち

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【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 1 (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 1 (「澪標」シリーズより)

僕と澪さんは、僕の学生時代からの友人であり、彼女の直属の上司だった志津を介して出会った。

お互い磁石のように惹かれ合っていたものの、僕には既に妻子がいた。今は亡き妻の実咲さんは、寛解状態とはいえ、双極性障害という完治しない病を抱えていた。息子は高校・大学とお金がかかる年頃だった。故に、僕は家族を捨てることは出来なかった。

事情を知った澪さんは、妻の病のケアに疲れ切っていた僕の支えになってくれた

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【コラボショート】羽衣をなくした天女(「紫陽花の季節、君はいない」×「澪標」)

【コラボショート】羽衣をなくした天女(「紫陽花の季節、君はいない」×「澪標」)

躊躇なく旅が出来るようになってきた、秋の空気が清々しい日曜日。

俺…夏越は栃木県の茂木にある天子神社にやって来た。辺りは秋草が生い茂り、静まり返っている。

俺は八幡宮の紫陽花の精霊【紫陽】の生まれ変わりを探しに、全国の神社仏閣を巡る旅をしている。

紫陽は俺の恋人だったが、人間と精霊の逢瀬は禁忌だった。俺と共に生きる為に彼女は精霊としての死を選び、この世の何処かに人間として生まれ変わった。

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【コラボショートショート】10/11はハンドケアの日

【コラボショートショート】10/11はハンドケアの日

午後の社内でのデスクワーク。
営業で集めた契約書をまとめていると、あなたが席を離れた。

あなたには、気分転換に香り付きのハンドクリームを塗り直す習慣がある。

(そろそろ、疲れてきたかな。)

僕はあなたの仕事のフォローに回ることにした。

「鈴木さん。手伝いますよ。」

「海宝課長、ありがとうございます!
…課長、いつも思うのですが絶妙なタイミングでフォローしてくださいますね。何でですか?」

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【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む プロローグ (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む プロローグ (「澪標」シリーズより)

この小説は、may_citrusさん原作「澪標」のコラボ小説「ただよふ」のその後の物語です。

窓の外が明るくなってきた頃、僕…海宝航は目を覚ました。

小山のアパートの部屋には、昨日焚いたジャスミンのアロマの残り香が仄かに漂っている。

初夏とはいえ、北関東の朝は都会の生活に慣れきった70過ぎの老いた身には寒く感じる。つい最近、脳梗塞を患ったばかりなので、僕は無理をせずもう少し布団の中にいること

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【コラボショートショート】あなたが悲しそうな顔で微笑うから

【コラボショートショート】あなたが悲しそうな顔で微笑うから

このショートショートは、may_citrusさん原作「澪標」最終回の後、「もしも実咲さんが夫である航さんのつけている香水の意味に気づいていたら?」というお話です。

私が強迫性障害の治療をしていた頃。

強迫症状が落ち着いている時に入った、夫である航くんの寝室で、黄緑色の香水を見つけた。夫は香水が好きで何種類か持っていたが、会社につけていく、サムライのアクアクルーズよりも特別に扱っているようだった

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