#毎週ショートショートnote
逆光のみクジラ【#毎週ショートショートnote裏お題】
年末、魚崎と初日の出はどこで見ようか話し合っていた。
「いつも山の方ばかり行っているから、たまには海に行こうぜ」
魚崎はスマホで海の初日の出スポットを検索した。
「京野、A海岸のクジラを初日の出と一緒に撮影すると、その1年良い年になるってさ!」
「俺達受験だから、御利益あるかもな!」
初日の出はA海岸に決まった。
年が明け、俺達は始発の電車に乗ってA駅に着いた。
薄明るくなった空は、雲
白骨化スマホ【#毎週ショートショートnote】
20xx年。生成AIは進化して、人に組み込まれた。
AI化した人は、【スマート・ホモ・サピエンス】(賢さの進化した人類)と呼ばれた。
一方で、それを拒んた人は火星に幽閉された。
21xx年、旧人類は火星から地球に降り立った。
そこで彼らが見たものは、全スマホの白骨化した姿だった。
旧人類は彼らの死因を調査した。
組み込まれたAIチップのデータが、彼らの最期を記録していた。
己の脳で物
助手席の異世界転生【#毎週ショートショートnote】
サスペンスに出てくるような崖の上に二人の還暦近い男女が立っていた。
「この異世界転生装置は二人乗りでな、一人では発動しないんだよ」
そう言われて、幼なじみのテツロウに言われて、ミサトはどう見ても自動車にしか見えない装置の助手席に乗せられた。
「さぁ、異世界に出発だ!」
テツロウはアクセルを踏み込んだ。
装置はミサトの叫び声をBGMに、崖から真っ逆さまに落ちていく。
ドボンという音と波しぶ
戦国時代の自動操縦【#毎週ショートショートnote】
時は天正。時の権力者、豊臣秀吉は京都に大仏を建立した。この大仏、実は対立していた徳川家を滅ぼす為に南蛮の技術を駆使して作らせた最強兵器だった。
「南蛮のでうす(神)の信心が、この大仏の動力じゃ!人力が要らんから、躊躇うことなく徳川勢力を皆殺しじゃ!」
秀吉は下品な高笑いをしている。
「御前様、でうすは南蛮の神。盧遮那仏にでうすの信心を動力にするのは、バチが当たりませぬか?」
そう進言するのは、
カフェ4分33秒【#毎週ショートショートnote】
カフェ・ムジークの店長は、新装開店に向けて準備を進めていた。
「うーん、何かこの店の目玉になるイベントが欲しいな」
スイーツには自信があったが、特に目ぼしいものは無かった。
「あなた、店名がムジーク(音楽)なのだから、BGMを募集してみてはどうかしら?」
店長の妻のアドバイスで、SNSで募集をかけてみることにした。
ルールは、4分33秒のオリジナル曲であること。賞品は1年間の無料券にした。
塩人(しおんちゅ)【毎週ショートショートnote】
戦国時代。山奥に城を構えた武将の元に一人の【塩人】が連れてこられた。
「そなたが伝説の塩人か。山奥でも塩の在り処を見つけることが出来るとはまことか!」
武将は前のめりになって叫んだ。
「はい。塩は昔から貨幣と同等の、いやそれ以上の価値があります。それは人が生きるのに不可欠だからです。お殿様が所望するのは、生きる糧としての塩ですか?それとも……」
塩人の目が鋭く光る。
「儂が所望するのは、塩を
メガネ朝帰り【#毎週ショートショートnote】
はぁ、はぁ…
付き合っているのに、あまりにも素っ気ない彼の顔から眼鏡を奪ってきてやった。
スマホの電源も切ってやった。
今宵はこの眼鏡を肴に、自宅でヤケ酒を飲むことにした。
「紫のメタルカラーのフレームか」
眼鏡をかけてみると、頭がくらくらした。
「うわっ、度が強すぎ……」
自分は両目1.5である。すぐに眼鏡を外した。
「困っているかな……」
罪悪感を感じたが、誤魔化すようにビールをいっき飲
半分ろうそく【毎週ショートショートnote】
私は気づくと冥い場所にいた。あれだけ強く地面に叩きつけられたのに、体の痛みはまったく無い。
「おかえりなさい。ここは冥界、魂の還る場所。」
角の生えた女性が、私に話しかけてきた。
「私はやはり死んだのですね」
「ええ。ただ、あなたの場合、不具合で半分命のろうそくが残っています。人生をやり直す権利があなたにはあります」
角の生えた女性が営業スマイルを浮かべた。
「人生を変えられるってこと?」
名探偵ボディビルディング【毎週ショートショートnote】
20XX年現在。世の中はAIによる犯罪が増えていた。
何せ、人間なら直前で倫理感や罪悪感で留まるであろうシチュエーションで躊躇うことなく遂行するのだ。命乞いも意味を成さない。
AIによって人類は考えるという事を手放した。AIが作ったニュースに踊らされ、政治家や著名人の醜聞が起こるたび、短絡的に一般人がAIに完全犯罪を行うよう命じるから、現在は法律やドラマ、声優、スポーツまでAIによるものに取って
大増殖天使のキス【毎週ショートショートnote】
「ねぇ、知ってる?外国にキスっていう意味のチョコがあるんだって」
幼なじみ(男)が私の部屋のベッドでマンガを読みながら言った。
「何、急に。」
私は冷めた目で幼なじみを眺めた。
「今読んでいるマンガに描いてあってさ」
ほら、と私にそのページを見せた。
「へぇ、最初売り出した時は『げんこつ』って名前だったんだ……」
私はベッドでポテトチップスをつまんでいるこいつを殴りたい。
「でも『げんこつ
運試し擬人化【毎週ショートショートnote】
ある夫婦に男の子が産まれた。
夫は芸人だった。芸能界は実力だけでなく、運にも恵まれていないとならない。
「なあ、子どもの名前なんやけどさぁ、あみだくじで決めたらオモロイと思わん?」
夫は、大吉、中吉…と紙に鉛筆であみだくじを書いた。
「はあ?何言うとんの!大吉とかならええけど、凶とか縁起悪いの出たらどないすんの?」
夫の提案に、妻は反対した。
「それはそれで、オイシイやろ!さあ、ひとつ選ん
男子宝石【毎週ショートショートnote】
年末の片付けまつりと称して、家に溢れかえった物を処分していた。
物、物、物!
ごみ袋に詰め込んでいくが、際限ない。
どうしてこんなに要らないものばかり買ってしまったんだろう。
気が狂いそうになる。
「ねえ、お母さんお腹すいたー」
小さい息子の言葉に、深い溜息を吐きながら、ご飯の準備に取りかかる。
何でこんなにイライラしているんだろう、私。
炒め物のジュージューする音が、やけに耳に残る。
息子
ジュリエット釣り【毎週ショートショートnote】
政治家の秘書のロミオと、大臣の娘ジュリエットは婚約者だった。
しかし、ジュリエットは何者かに殺害され、湖に遺棄された。
そうとは知らず、ロミオは呑気にその湖で釣りを始めた。
ロミオの釣り竿に大物がかかった。
引き揚げてみると、金色に輝く女神であった。
「青年よ、貴方の婚約者は金のジュリエットか、銀のジュリエットか、それともこの骨になったジュリエットか……」
女神はロミオに三択を迫った。
「普
二重人格ごっこ【毎週ショートショートnote】
妻と結婚して10年。
新婚時代のような、トキメキはとっくにさめてしまった。
妻と共通の友人が言うには、「顔は今でも好きなんだけど、無難過ぎてツマラナイのよね」とのこと。
無難て何だ。妻の意思を尊重して、頼まれたことは何でもしてきたつもりだ。
「そんな言いなりになっている所が、だめなんじゃない?」と友人。
だけど、人間急には変われない。
「じゃあ、夜だけ裏人格が出てくるとかどうよ。」
裏