「耳屋」② 私の美容師さん遍歴
「耳屋さんが聞いてくれるのって、どんな話でもいいの?」
「はい。大丈夫です。」言葉少なに耳屋は答えた。
その言葉が終わるか終わらないかの内に、わたしは話し始めていた。
ねえ、自分に合う美容師さんを見つけるのって、重要だと思わない?
わたしね、地元の美容室にずっと通ってたの。
長谷さんと宮田さんって人が2人で立ち上げた小さなお店。
わたしはずっと長谷さんに切ってもらってて…。
何年か経った頃に、3つ隣の大きな駅にお店が移転したの。
お店が広くなって、カット以外アシスタント任せになってしまったし、価格も結構強気な感じになって、いつの間にか足が遠のいちゃった。
その後、長谷さんと宮田さんは別々のお店を出す事になったんだって。
宮田さんは、メディアに出て事業拡大路線で、長谷さんは小さ目のお店でアットホームなサービスを提供したかったみたいで…。
そんな中わたしは、たまたま行った別の美容室で気に入った栗山さんに切って貰って一年位経った頃…
「実は別なお店に行くことになりまして…」
って言われちゃって。
こんな時って
「どうしてもあなたに切ってほしいから、新しいお店を教えてください!!」
って粘れば、教えてもらえる事があるって知ったのは、随分経ってから。
栗山さんロスの後は、散々色々なお店でスッキリしない目にあって、やっと見つけたのは、また地元の美容師さん。
美容師さん4人で立ち上げたって言う美容室。菅野さんに切って貰ってたんだけど、一年位通った辺りに、体調的な要件で菅野さんが美容師を辞める事になってしまって…。
菅野さんは今、都内の美容室をプロデュースしてるんだって。
次は、職場が入っているビルの2階に入ってる美容室に行ってみたの。
仕事が終わって、3分後には美容室のイスに座ってるって言う便利さが良くて。
しかも、ビル割??みたいなのがあって、同じビルの人は1割引きだったし。
でもね、美容師さんは悪くなかったのにシャンプーをしてくれるアシスタントの人が、すっごい力なのよ。
痛くて、涙目になる位。
美容師さんの事が嫌いで、そのお客への嫌がらせ?!って邪推しちゃった。
2回行って、2回ともその人にシャンプー されて、腹が立つ程痛い目に遭ったら、もうその店に行く気になれない!
で、やっと今の美容師さん。
お店から独立する時にも、無事、連絡先を教えてもらえてね。
今は、その人が一人でやってるお店に通ってるから、暫くは安泰かなー。
わたしは一気に喋り終えて、ホットコーヒーを一口飲んで、耳屋を見た。
耳屋は、クリームが乗った甘そうな飲み物を口に運んでいた。
おわり
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