幕間
その物語は作り物だよと
現実が言うので
私は私になってしまい
今までどうしていたか忘れてしまった
私は私ではなくて読者であったのに
歩き出すと雨が
傘を差せば風が
付いてきて
空や地や風
猫や自転車や飛行機や
これらは愛すべき現実だ
愛すべきはずが
政治家が気に入らなくて
ポスターから目を背け
交差点では歩行者の権利を主張したくなり
戦争の影響で価格は上昇し
現実なんか何ひとつ好きになれないじゃないか
好きな方向には変わらないじゃないか
私は言い返し
現実は私の真似をしながら
振り返り
振り返り立ち去った
ようやく安心して物語に没頭できるはずが
どうにも後味が悪く
それにいつの間にか
物語の舞台よりもひどい世界にいるのだった