桔梗信玄餅
どこの、だれの土産物なのか知らないまま、子どもの頃から信玄餅を食べる機会が度々あった。桔梗柄の布製バッグに入っていて、更にビニールの個包装がされている。既にきなこにまみれた餅に黒蜜をかけていただくお餅である。
おやつにと食卓に出され、きなこを散らさぬようにと言われ、ビニールを敷き物のように広げた上で、慎重に添付の楊枝を用いて、容器いっぱいに入っているきなこを少しもこぼさず、黒蜜をかけて食べる。また、きなこをこぼさずに食べられるのが微かな自慢でもあった。家族の中では少し得意になっていたと思う。
それが結婚して家を出て、滅多に信玄餅を食べなくなって更にかなり経ったわりと最近、SDGsとやらで桔梗屋の社長さんと思われる方がテレビに出ていらした。
SDGsと信玄餅に何が関係あるんだ? と思ったら、ビニールの敷き物の中の容器を最中にしたと話している。なるほど、プラスチック削減かと納得したが、その前の容器入りの方の食べ方の説明に引っかかった。
結んであるのを開いて敷き物を敷き、容器の平たい蓋を取ると、敷き物の上にひっくり返す!
ひっくり返す???
私の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいになった。きなこを散らさぬばかりか、ひっくり返したんである。そこへ黒蜜をかけ、いただくのが正解らしかった。
今までの苦労は?と思ったが、私が勝手に苦労して、しかも自慢に思っていたに過ぎない。
それからまたしばらく信玄餅を食べる気にはなれなかった。今日は久しぶりに買って来て、思う存分に敷き物の上、きなこを散らして食べた。