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ながさく清江 先生『春野誌』2024年度作品を読む

結社誌『春野』2024年 1月号〜4月号掲載 40句
三月に九十六歳のなられたながさく清江先生の今年度春野結社誌への掲載のお句をご紹介致します。
清江先生のどのお句も師の真っ直ぐに俳句に向かうお姿が見え 朗々としたお声が聞こえてくるようです。「人生の写生をと心掛けている」とおっしゃる清江先生 (同人誌『里』一月号の貴方にとっての写生とはの問いへのご回答)俳句を愛する現役作家として限りない俳句への情熱を感じます。

一月号
秋麗の橋くぐりくる水の綺麗
花野みち面影のひとみな笑顔
秋さやか夫の形見の辞書も古り
世の隅のひとり暮しや天高し
秋澄むや透きて念珠の芯の糸
鶏頭の丈にまだある夕日かな
つなぐ手の無き幾とせや秋の暮
成行きに任す齢やいわし雲
糸と針いつも身近に秋灯
ひとり酌む酒はおだやか望の月

二月号
亡きひとと仰ぐ満月寿 (いのちなが)
きらめきて波は弧を張る文化の日
小春日やひかりをつなぐ河と海
真昼日の空しんかんと返り花
遠富士の晴れて小春の畦仏
しづけさを水に広げて冬紅葉
つかの間の夕日をのせて枯尾花
枯尾花吹かれ易きは独りの歩
落葉踏む音を残して去りゆけり
冬深む神杉の弊揺るるたび

3月号
晩年も歩幅は広く冬うらら
大枯野枯を極めし明るさに
日に風にあそびて倦まず枯尾花
枯野みち余生いよいよ怠らず
大空を高く捧げて枯欅
地より湧く水きらきらと冬の芹
夕映えの遠くにのこる浮寝鳥
年逝くや芯の明るき仏の灯
卵酒遺影ほほゑみゐたりけり
ひとすぢの道あきらかに寒の月

4月号
元旦の大地震龍の大暴れ
弟も共に辰年屠蘇の膳
添書きの文字なつかしむ賀状かな
日の光引き寄せ崖の石蕗の花
冬萌やひそやかに湧く水の綺麗
山中に暮しの小径梅探る
健やかを保つ晩年冬うらら
寒満月と語る独りの夜明け前
大寒や走り根しかと岩を擁き
梅東風や母郷の地酒酌み交し

2024年4月12日現在

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