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みいちゃんと山田さん 連載版感想〜5話目「みいちゃんの友達」〜

前回の記事はこちら。
※ヘッダーはみいちゃんと山田さん(亜月ねね著)からの引用。

今回は、みいちゃんの地元で唯一の友達だというムウちゃんの登場回。

注意⚠️
・ネタバレあり
・みいちゃん=神経発達症の視点で読んでいます。
・個人の感想です。批判は受け付けません。

それを理解できる方は下記の感想へどうぞ〜。


なんとみいちゃんの万引きから始まる5話目

近場のコンビニで会計前のパンを「お腹空いて我慢できなくて」と食べてしまったみいちゃん。
身元引受人がいないみいちゃんの代わりに、なんと店の店長(と野次馬精神の山田さん)が迎えに行きます。
でもなぜか警察には通報しないというコンビニのオーナー。

なぜかというと、コンビニのオーナーにペロペロ(フ●ラ)をしたからだという。

は?????どういう世界線??????

「みいちゃんをいじめてきた同級生も、学校の先生も先輩も、前のバイト先の店長も、ペロペロでみんな怒るのやめて優しくなるんだ~」

というみいちゃん。それを聞いた山田さんの顔が切ない…。
信じられない世界だ。しかもみいちゃんをいじめたり怒ったりしている周囲の人たちもみんなまともじゃない。普通はペロペロなんか受け入れない。

社会常識や善悪がまかり通る世界で、みいちゃんやその周囲は生きていないのだ。

ちゃんと叱ってくれる人がいたとしても、たぶんみいちゃん自身がそれを拒否してしまうんだと思う。
2話目でココロちゃんの親切な指摘を受け入れられなかったように。

亜月ねね みいちゃんと山田さん2話より引用
これじゃあ指摘したくもなくなる。

みいちゃんの友達ムウちゃん

みいちゃんと一緒に上京してきたムウちゃんは、

・保育園からのみいちゃんの友達
・風俗嬢勤務
・万引きを繰り返して刑務所に入っており、最近出所

というかなりパンチの効いた子のようだが、なぜそんなことになってしまったのかというと、知的障害のある子だったからという側面もあったみたい。
刑務所入所時にする知能テストの結果を見るまでもなく、

・姿勢が保てない
・視線の動き方や表情が不自然
・会話の反応から、言葉のキャッチボールができない
・字がまっすぐ書けない

などの特徴から知的障害があると判断されたようだった。これらはすべて神経伝達症(発達障害)の子に見られる特徴だという。
そして受刑者の半数近くが知能指数80未満だという。(真面目にテストを受けないため低く出る傾向もあるが)
※知能指数が低い=犯罪が起こしやすいというわけではない。

亜月ねね みいちゃんと山田さん5話より引用

みいちゃんは目の前の怒られるという嫌なことを回避したいがために、警察にも捕まらず福祉に繋いでもらえなかった。

ここを読んで「ケーキを切れない非行少年たち」という本を思い出しました。
(最後の関連図書的なもので紹介)

初対面でもわかるムウちゃんの違和感

亜月ねね みいちゃんと山田さん5話より引用 

山田さんの思っている通り、トータルコーディネートができていない見てわかるムウちゃんの違和感。
しかもみいちゃんも同じだという。類友だったか。

知的障害があると判断されたムウちゃんは、福祉事務所に繋いでもらい、今は障害者手帳を与えられ、正式な支援を受けられるようになった。
今は風俗勤務も辞め、ホチキスの芯の上下を合わせる仕事をしているとのこと。

そして「みいちゃんもなんか障害ありそう」(言いたいことはわかるけどストレートすぎる)というムウちゃんに、みいちゃんは自分は違う!と受け入れません。それより立ちんぼにムウちゃんを誘うという…ただ、ムウちゃんは周囲の真っ当な人の影響を素直に受け入れられたこともあるのか、「そういうのはもうやりたくない!」とちゃんと意思表示をします。

そしてみいちゃんは怒ってお店を出て行ってしまう。。

環境と意思決定の大切さを痛感する

ここでもみいちゃんは真っ当な意見を受け入れられずに自分から回避していってしまった。

山田さんの独自「スタート地点と能力地が同じでも、出会う人と自分の選択で結末は大きく変わる」というのはその通りだと思う。

ここで重要なのが、環境だけではなく「自分の選択」というのも重要だということ。みいちゃんにも親切心から助言をしてくれる人がいたはずなのに、最後まで聞き入れられなかった。

正しい選択をするための環境が重要というのももちろんあるんだろうけど、自尊心がそうさせてしまった部分もあるのだと思う。だから読んでいるこちらは複雑になる。

まとめ

今回は、同じスタート地点に立っていたと思われるみいちゃんとムウちゃんの対比が描かれている。

既に上にも書いたことだけれど、山田さんの独自「スタート地点と能力地が同じでも、出会う人と自分の選択で結末は大きく変わる」というのはその通りだと思う。

みいちゃんだって出会う人が全員悪い人ではない。山田さんやココロちゃんや、その他の人達にだって、みいちゃんを嗜めて正しい道へ連れてこうとした人はいたはず。

それをみいちゃんは悪意なく受け入れられない。だから周囲の人(読者含め)はモヤモヤと見てるしかない。

何かが少しでも違ったら、大きく未来は異なっていたのでは?そう思ってしまう。

バタフライエフェクトという言葉がふと思い浮かんだ回だった。


以下、関連図書的なもの

児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。

宮口幸治 ケーキの切れない非行少年たち あらすじ

この本は知能指数が低く、自分が犯罪を犯したこと自体理解できず、反省も出来ない非行少年について書かれている。
歪んだ認知によって出来事を解釈してしまっては、反省にも繋がらない。それをどう支援すればよいのか書かれている。

漫画版もあって、unlimitedでは無料。
書籍で紹介された非行少年たちの各エピソードが描かれる。
絵柄も相まって雰囲気が掴みやすくなってる。

まだ発売されていないけど、みい山は書籍化するらしい。12月23日、クリスマスイヴイヴだあ。

ダイアナは亜月ねねの別名義らしい。名義が違うだけで作風や内容の方向性は同じだとは思う。

著者の別の作品。
今話題?のトー横キッズ的なお話。

ホス狂いって身近では本当に聞かない話ですが、実際こんな感じなんですかねえ、、りりちゃんの動画などを見ていると同じ空気感を感じるので、リアルに描かれているのかもしれない。

名作アルジャーノンに花束を。
みいちゃんと山田さんを読んでいるときに沸き起こる感情はなんだろうと思っていたけど、これにも近いものがあるのかもしれない。

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