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平成14年、おもちゃのネット販売は難しい…と実感

この連載では、戦後すぐに私の父が開業し、後に私が二代目社長を務めたおもちゃ屋「さくらトイス」について書いています。

現在、多くの方がネットショッピングを利用していると思います。
さくらトイスがネット販売を始めたのは、平成14(2002)年のことでした。
今回は、その頃の時代背景や、私が感じたことを書いていきます。


おもちゃ販売店の多様化と、価格破壊

平成14(2002)年ごろ、カメラの価格競争、家電製品の価格競争がとうとう玩具業界まで忍び寄り、玩具売場の拡大が始まりました。 
アメリカから来たトイザらスに加え、靴屋や釣具屋等の他業界の店がロードサイド店で玩具の安売りを始めました。スーパーが自社で玩具売場を設置し、関西の百貨店までもが安売りに参加しました。価格破壊の始まりです。 
 
そして売場も、実店舗からテレビ通販やネットショッピングと多様化し始めました。
会社にしかなかったパソコンが、各家庭に普及し始めたのも、この頃のことです。 
平成14年にはわが社でも会社のドメインを取り、メール環境を整えてホームページを作成。会社紹介や通信販売を始めました。 
sakuratoys.co.jpを取った時は少し大きな会社に近づけたような気がして嬉しかったです。 

「さくらトイス楽天店」をオープン

初めは訳も分からず、とりあえず自社のホームページを作成して会社案内や店舗紹介をし、そして通信販売を始めましたが、売れたのは月に数件。
どうやって宣伝したらよいかと思案していたら、ある人に
「今の状態では、山の中にポツンとお店があるようなもの。リアル店舗と同じで、どこかのショッピングモールに入らないと、お客様はきません」と教えられました。
 
以前に楽天の三木谷社長の講演を聞いた事があったのですが、その際、「これからはネット販売が主流になる」と言っていた事を思い出しました。
講演を聞いた時、私は、国土の広いアメリカではネットが必要だと思いましたが、国土の狭い日本ではネット販売はそれほど普及せず、やはりリアル店舗に買いに行くのが一番だと思っていました。 
でも、三木谷社長の言葉通り、ネット販売の時代が来たわけです。
楽天にさくらトイスのネットショップを出すことに決めました。 
 
それまでは本部にパソコンのできるアルバイト女性を雇っていましたが、ネット通販店を始めるにあたり、商品が分かっていないと困るので、社員の中から通販店専門のスタッフを置きました。

楽天の出店講座に通ってもらい「さくらトイス楽天店」をオープンしました。その後「ビッターズ」にも出店しましたが、通販店は思い通りには伸びませんでした。 

おもちゃのネット販売の難しさ

ネット販売をしてみて、私が感じた難しさを書いてみます。

・商品セレクトと掲載
商品を一品一品掲載していくので時間がかかり、どうやったら見やすい画面になり、興味の持ってもらえる楽しいページになるのか等、商品を並べるのに手間もかかりました。
 
・商品在庫 
これまで在庫のなかった本部でネット販売を始めたので、店舗とは別に商品を用意。在庫リスクが増えてしまいました。 

・接客 
通信販売なので、「注文が来たら送れば良いだけ」と単純に考えていたら大間違い。
一回の販売に、受注・支払い方法・発送と最低でも3回お客様とやり取りがあり、商品詳細の質問なども少なくありませんでした。
実際に商品を見ていない分、お客様への対応が大変でした。 
当時はお客様もネット購買に慣れていなく、操作方法を電話で聞いてくるお客様もいらっしゃいました。 
もちろん当時は自動応答などなく、担当者は大変だったと思います。 
 
・さまざまな消耗品が必要
配送梱包材に、思ったよりお金がかかりました。
おもちゃは大小さまざまな形状の商品が多く、各サイズの段ボール箱・クッション材など、新たな消耗品を用意しました。 

・商品価格競争 
一番の問題は価格でした。 
さくらトイスの名前で通販を始めたので、リアル店と価格を一緒にしないと、お店に来てくださったお客様に申し訳ないと思い、標準価格を一切崩しませんでした。 

他のおもちゃネット販売をしている店を見ると、需要と供給に合わせて価格を変えていましたが、私達は売れても売れなくても標準価格でしたので、売れる商品と売れない商品が自然に分かれてきました。 

始めは木のおもちゃなど、普通のおもちゃ屋さんでは販売していない商品を揃えましたが、売り上げが上がりません。
また、一般商品を並べても売れるのは話題商品、品薄商品などでした。
商品で言うと、「たまごっち」、限定品では「リカちゃん・ジェニーちゃん」「ガンダム」や「ライダーベルト」。

限定品、FIFAワールドカップ フランス大会(1998)モデルのジェニー

売れない商品は、安売り店で2~3割引されている一般商品です。たまに、夜中にテレビ番組で盤ゲームなどが面白おかしく放送されると、それが突然売れたりしました。 

「たまごっち」は発売されてから10年間以上品不足が続いて入手困難だったため、お客様への供給が間に合わず、販売の仕方が難しかったです。
商品が溜まった時にゲリラ販売するか、前もって販売日を設定して告知販売しました。 

かと言って告知販売も難しく、平日の昼休みを狙って昼の12時半に販売したら、注文が殺到してネットが繋がらず、本部にクレームの電話が鳴り響いたのを覚えています。 
 
ネット販売は、一般商品では価格競争に負けてしまい、玩具マニアやコレクター等のお客様に向けた品揃えをしていかないと売り上げが出ませんでした。 

これも限定品 アイルトン・セナのメモリアルフィギュア

ネット通販で変わる、ショッピングのスタイル

当時、さくらトイスのネット通販で買っていただいたお客様商圏を調べました。 
一番はもちろん東京でした。二番目は愛知県で、三番目が神奈川県だったと記憶しています。 

びっくりしたのが、東京国分寺にお住まいの方が何人かいたことです。
当時、国分寺駅ビルに店があったのに、わざわざ送料を払ってネットショップから買うの?と不思議でした。 
 
そこで私が考えたのは、そもそもおもちゃの販売店の多い地域ではおもちゃが売れ、販売店の少ない地域では結局売れない、ということです。
結局、子どもは、友達が流行りのおもちゃを持っていると欲しがるけれど、外遊びが多いなど、周りの友達が誰もおもちゃを持っていないところは欲しがらない。つまり売れないのだなと思いました。
 
そして、やはりショッピングを楽しむよりは、自分の欲しいものを時間かけずに入手する消費者が増えてきたのだなと、時代の流れを感じました。 


昭和27年から平成19年までの55年間、東京・埼玉・神奈川・千葉・茨城の各地に34店舗を構えていたおもちゃ屋「さくらトイス」の2代目社長を務めた私が、おもちゃ屋の思い出話、懐かしいおもちゃのことをつづっていきます。毎月11日に公開予定ですので、続きをお楽しみに!

また「さくらトイス」のことを覚えている方、ぜひコメントをくださいね。

編集協力:小窓舎

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