この夏、ヒットしそうなおもちゃのキーワードは「アナログ要素」「手触り」「大人も楽しい」
先日、東京浅草で行われたおもちゃの展示会「おもちゃビジネスフェア」に行ってきました。今回の展示会は、夏からクリスマスにかけての各社の新商品、力を入れたい商品を小売店などにアピールするものです。
おもちゃ屋の娘として生まれ、のちに2代目社長を務めた私にとって、おもちゃはずっと身近にあったもの。お店をたたんでしまった今でも、おもちゃの展示会には足を運び続け、気づけば半世紀以上も、おもちゃの流行や変遷を見続けています。
今回は、「おもちゃビジネスフェア」で見たおもちゃの傾向や、私が注目したポイントをレポートしたいと思います。
8月は、三番目におもちゃが売れる月
皆さんは、おもちゃの売り上げが良い月がいつだかわかりますか?
1位は、クリスマスのある12月。
2位は、1月。お年玉をもらった子どもたちが、自分で好きなおもちゃを買うからです。
そして3位は、8月。夏休みで帰省する子どもたちに、祖父母がおもちゃを買ってあげるからです。また、水遊びのおもちゃなど、夏ならではの遊び道具もありますね。
そうした「夏向け」のおもちゃの展示会がこの時期に行われるのは、実は今年が初めてでした。今年は例年6月にあった「東京おもちゃショー」が8月末に開催されることとあわせて、この時期の開催となったようです。
これまでは、夏向けのおもちゃは6月の「東京おもちゃショー」で紹介されていましたが、それでは発注に間に合いません。4月というちょうどいいタイミングに初開催された展示会ということもあって、会場はとても活気がある印象でした。
注目ポイント1:アナログ要素があるおもちゃ
最新の技術を生かしたデジタルなおもちゃは多いのですが、その中にも少しだけ「アナログな要素」のあるおもちゃが増えていると思いました。
例えば、「トミカを運転!ハンドルドライバー(タカラトミー)」は、トミカをセットすると、ハンドルを操作しながらゲームができ、まるで自分のお気に入りのトミカを運転しているような気分になれるおもちゃです。ミニカーという昔ながらのアナログなおもちゃと、デジタルの融合ですね。
「レールキューブ(株式会社サンスマイル)」は、ブロックでレールを組み立てて電車を走らせるのですが、レールと電車が磁石でくっつくため、垂直にも、さかさまになっても走ります。未来の乗り物みたいですね!
「BRIO恐竜王国の火山(ブリオジャパン)」は、恐竜フィギュアが火山に近づくと(スイッチを足で踏みます)、溶岩が光って岩がガラガラと崩れるギミックです。 ごっこ遊び+ギミックの面白さがあります。
また、素材でも、「BRIOビルダー アクティビティセットⅡ(ブリオジャパン)」など、プラスチックに木のパーツを融合させたものが目につきました。
注目ポイント2:手から癒しを。「触って楽しむ」おもちゃ
触り心地のよいおもちゃ、触ることそのものが楽しいおもちゃが多いことも、今の傾向のように思いました。
ふわふわの手触りのぬいぐるみはもちろん、不思議な感触で、ねんどのようにこねたり形をつくったりできるおもちゃもありました。
例えば、粒状粘土の「プレイフォーム(ドリームブロッサム)」や、雪のように真っ白で、握ると固まり、ほぐすとまたサラサラになる「スノー@ホーム(あおぞら)※9月発売予定」など。
また、「ビギーズ(アガツマ)」は、空気を入れて膨らませる、ボール型のぬいぐるみです。大きめのサイズと、ふわふわだけど弾力のある独特の感触が楽しいです。
「おきあがりこぼし ころりんコアラちゃん(株式会社トライブ)」は、やわらかい樹脂製のおきあがりこぼしで、揺らすと顔の部分も動き表情があります。優しい音も心地よく聞こえます。
こうしたおもちゃは、いわゆる癒し系ですね。大人だけでなく子どももデジタルに囲まれた生活で疲れているのかもしれません。デジタルとは対極の、手で触ること、触って感じることが、おもちゃに求められているのかなと感じました。
注目ポイント3:大人だっておもちゃを楽しみたい
今回の展示会では、「おもちゃ屋が選んだ今年売れるおもちゃ」というテーマで投票が行われましたが、その中に「キダルト部門」というものがありました。
「キダルト」、聞きなれない言葉ですね。どうやら「キッズ」と「アダルト」を組み合わせた造語で、子どもだけでなく大人まで楽しめる商品が対象になったようです。
ここ数年の傾向として、子どもだけでなく、大人が楽しむことを意識したおもちゃは増えています。高価格なコレクターズアイテムのようなものから、大人が「懐かしい」と感じるものなど、年々増えていくようですね。
今年は、ルービックキューブが50周年ということで、初代をオマージュした商品「ルービックキューブレトロ(メガハウス)」が登場しました。
当時のロゴやケースを再現していますので、50年前に遊んだ人たちにとっては懐かしいでしょうね。ただし、回しやすいように改良するなど、現在ならではのアレンジも加えているようです。
この連載に協力してくれている40代のライターの方は、「当時、遊んでいたものよりサイズが小さく感じます!自分の手が大きくなったんですね」と言っていました。大人がロングセラーおもちゃに触れると、こんな感覚も楽しいですね。
私が気に入ったのは、「パーラーキャンパス(カワダ)」です。これは、「パーラービーズ」専用のメッシュ状のシートで、ビーズをはめて絵を描いていくものです。取り外しも簡単で、組み直しもできます。
「パーラービーズ」は、形を作ってアイロンで固めて作品を作りますが、これならアイロンなしで楽しめますし、より大人のホビーとして楽しめそうだなと感じました。
今年の1月に開催された展示会も見に行きましたが、そのときにはこれと言って目新しい商品がないように感じ、今年は大丈夫?と思っていました。でも、今回のビジネスフェアでは、夏に向けて各メーカーが同じ方向ではなく、独自の方向性で新商品を出していたので、とてもうれしく思いました。老若男女、全世代がおもちゃで楽しめそうです!
昭和27(1952)年から55年間続いたおもちゃ屋「さくらトイス」の思い出話を毎月更新しています。こちらもぜひご覧くださいね。
編集協力:小窓舎