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産業医の判断が、時に人の命を救う

さくらSOC労働衛生コンサルタント・産業医事務所です。

産業医は医師のキャリアパスの一つの選択肢として、多くの医師がその一つに挙げていることは承知しております。ワークライフバランスが良い、当直がない云々と、まさに令和の働き方にピッタリとした医師としての一つの生き方かもしれません。

ただ、産業医制度が形骸化して機能してない負の部分もあると私は思います。

・大手広告会社に入社した女性の過労自死
・自己研鑽の名のもとに過労自死した後期研修医
・長き伝統という名のもとに過労and/orハラスメント自死した女性劇団員

いずれも労働安全衛生法的には、産業医がいたはずです。しかし、これらの悲しい自死を防ぎえる企業内キーパーソンとして、一ミリも報道されていない。産業医を生業とする一人としては寂しい限りだと思います。

しかし、産業医の介入が結果的に社員さんの命を救えた場合もあると思うんです。どれくらいあるのかはわかりません。報道でこれを知ることはできないけですから。

産業医定型業務の一つに、法定の医師面談があります。長時間労働面談と高ストレス者面談です。

私はこれらの面談を通じて、過去10年ほどの中で、複数名の社員さんに、その場で、ドクターストップをかけ、直ちに職場環境からの切り離しをしたことがあります。

その中には、ここに来るまでに、首つり自殺未遂を告白してくれた社員さんや、自社ビルの屋上に数日前に足を運んで下見をしてきた社員さんにも出会いました。

そういうことを初対面の産業医に話してくれたことを言葉と態度で深い感謝をするとともに、直ちに就業禁止の措置を講じる意見書を発行しました。もちろん、即時の精神科専門医への紹介も現場の保健師さんとともに行っています。

こういう社員さんに我々産業スタッフが介入できるのは、ある意味国が作った制度があったからだと思うんです。

こういう体験を通じて思うことは、やっぱり産業医には、臨床経験が必須で、そこで、人の生死にまつわる臨床現場での実体験があればこそ、死の危険が差しせまった社員さんを感じとり、死なさないために、産業保健の現場でブレのない自信を持った行動ができると思うのです。

以上、思うままにつらつらと書かせていただきました。
ありがとうございました。