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産業医がなぜ社労士資格を取ったのか?
合同会社さくらSOC労働衛生コンサルタント・産業医事務所です。社労士資格を併せ持つ独立開業型の産業医です。
今回のお題は、産業医の私がなぜ社労士資格を取ろうと思ったのかです。もし、産業保健職の方の中に、社労士も取ろうかなと思っている方のなにがしかの参考になれば幸いです。
臨床医から専属産業医に転身して、最初に感じたことは、
やべ、法律関係を知らないと、メンタルヘルス対応ができねえ
と痛感したことでした。
休復職に関する産業医の意見書を書こうと思ったとき、今まで経験してきた臨床体験の蓄積があっても、それが役に立たたない
と言い換えても良いかもしれません。
私がこのように感じた当初は、まだ、産業保健法学会もできておらず、今ほど、プロフェッショナルの産業医の先生方との人的つながりも少なく、孤独な専属産業医でした。
そこで、孤独だった自分が、自分なりに導き出した結論が、
そうだ、法律を勉強しよう
だったのです。産業医実務を行いながら、どうせ勉強するなら、国家資格で形にしておいた方が後々役に立つかもしれんと思いたち、一人書店で、TACの社労士本を買って独学を始めました。「および、並びに、または、若しくは」などの法律表現を、へえ~~~と思った思い出があります。
幸い、産業医業務には、臨床医時代と異なり、当直や緊急呼び出しもなく、規則的に勉強時間を確保できたことも幸いし、なんとかぎりぎりでしたが、一回目の挑戦で合格できました。
ただ、試験に合格しただけでは、社労士を対外的に名乗ることはできませんので、翌年に指定事務講習をうけたうえで、社会保険労務士としての登録手続きを行いました。2015年の頃です。
私は登録して良かったと思っています。社労士先生方とリアルな人間関係ができ、医者であることを珍しがってくれ、講演の講師をさせていただく機会が多々あり、それはそれでまた自分の経験と勉強になったわけです。
今、私がリアルに知る範囲内では、産業医と社労士の両方の資格をもつ先生は、6名います。社労士を目指した動機はメンタルヘルス対応のためというところで概ね共通しているように思います。
もし、産業保健職の方のなかで、社労士取ってみようかな?とうっすらとでも思っている方は、是非頑張ってほしいと思います。そして、合格したら、是非登録までされることをお勧めします。合格した知識は、どうせすぐに忘れます。ですので、せっかく合格したことを契機にして、新たな人間関係を拡げることに、とても大きな意味があると私は思うからです。
なお、今であれば、社労士の国家資格ではなく、産業保健法学会のメンタルヘルス法務主任者という学会資格を目指すという選択肢もあるかもしれません。
産業保健のメンタルヘルス実務は、医療の視点と法的な視点の両者をうまくバランスをとって進めることが大切です。もちろん、それぞれの専門家に聞くことはとても大切ですが、自分の中である程度知っておいたうえで専門家を頼ることが良いでしょう。そういう意味でも医療を学んできた専門職が法律を学ぶ意義は大きいと私は考えます。
実際に資格取得して、実務で役に立ったこと、今後、資格をどう生かしてくかなどについては、また折を見て、語っていきたいと思います。
ありがとうございました。