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『介護の日』によせて

 『【○○】と聞いて、どんな事を思い浮かべるでしょうか?』と言う質問をされたら、大抵は人それぞれに様々な答えが出てくると思います。

 でも、○○に【介護】や【認知症】が入るときっと、同じような答えばかりが出てくると思いますし、おそらくそれはネガティブな内容ばかりなのだと推察します。

 さて今日11月11日と言えば、『ポッキー&プリッツの日』とか『乾電池の日』(プラスとマイナスが、漢数字の十一に見えるところから)とか『鮭の日』(鮭と言う漢字の、魚へんのとなりの圭が、漢字の十一を重ねたように見えるところから)等が思い浮かぶと思いますが…実は『介護の日』でもあります。

 平成20年7月に厚生労働省が『介護の日』を制定するにあたり、国民に広く意見募集を行った中から最も支持が多かった11月11日が定められました。ちなみに『いい日、いい日』と言う語呂からとの事。

 私は現在、介護の仕事に就いて丸16年になります。つまり17年目。そして介護福祉士の資格取得してからは、12年経ちました。
 ちなみに、奇しくも介護の日が制定された平成20年7月から介護の仕事をスタートさせました。
  
 介護の経験も介護職にまつわる資格をなんも持ってないだけでなく、興味も知識もないのになぜか介護業界に飛び込みました。その理由は語れば長くなるしこの文章には関係ないため割愛しますが、介護の仕事に就いた当初は、仕事がツラくて毎日毎日『辞めたい』と思っていたものでした。

 でも、辞めずに勤め続けて来られたのと働きながら介護福祉士の資格を取得できたのは、他の誰でもなく施設の入居者さん達の存在のおかげでした。

◎出勤すれば『あ、来たな~。良かった良かった。いや~心強い』
◎帰宅するとなれば『明日も来る?来る?』
◎明日も来ますよと言うと『あー良かった。安心だ』
◎明日は休みですと言うと『いやぁ…さびしいなぁ…来ないのかぁ…何日休んだら来るの?』
◎明日は泊まりに来ます(つまり夜勤入り)と言うと『一晩だけじゃなく、いくらでも泊まって行って』
 
などなど。

※ほんとは入居者さん達は方言で話していますが、そのまま書くと地域がバレちゃうwので、方言なしで書いています。

 お世辞と言うか社交辞令だとしても、入居者さん達からもらった言葉はどれもこれも嬉しいお言葉です。   
 ただ、こう言ってもらえるようになるまでには容易ではありませんでした。
 
 私が介護の仕事に就いてから、いくつかの施設を渡り歩きましたがほぼ『グループホーム』で勤務しています。人事異動などで『特養老人ホーム』で勤務した事もありますが、圧倒的にと言うか、ほぼ『グループホーム』で勤務しています。

 『グループホーム』は、様々な種類や形態のある介護施設の中の一つです。
 認知症と診断され、なおかつ身の回りの事を自力でできる、あるいは一部介助でできる方しか入居できません。

 職業を聞かれた私が『認知症の方が入居する施設に勤める介護福祉士』だと答えると、たいてい
 『あら~、大変でしょう?そもそも認知症の人って話通じるの?』と言う答えが返ってきます。

 これこそ、この文章の冒頭で触れた内容にも通じる訳ですが、介護業界に入る前であれば私も同じ事を言っていたでしょうし、介護の仕事について理解できていなかったと思います。
 
 いわゆる『中の人』になり、その中で色々と揉まれて苦労しながら学んで経験を積んだ今だからこそ、ネガティブな反応が返って来る事を想定した返答として『確かに大変は大変だけど…、認知症の種類とか程度に合わせたり、個人個人の性格に合わせて対応して、うまく意思の疎通が図れた時は嬉しいです(^^)♪』と、言えるようになったと思います。

 確かに介護は、きれいで華やかな仕事とは言えないです。つらい事やしんどい事の方が多いし、地味です。

 でもだからと言って、悪い事ばかりではないです。

 人は歳を重ねるうちに、身体機能の低下の為に少しずつ『できる事』が減り『できない事』が増えて行きますし、認知機能の低下の為に少しずつ『わかる事』が減り『わからない事』も増えて行きます。
 
 その『できない』や『わからない』の部分を【介助】【傾聴】【コミュニケーション】などの方法を用い、個々に合わせる為に介入の仕方を様々に工夫して導き出したフォローの仕方で補うのが、介護職員である私たちの仕事であり役目です。そして、介護施設の種類や入居者さん達の状況によって関わり方は様々に変わります。

 その関わりの中で、入居者さん達の状況が好転して行くのを目の当たりにできます。

 もちろん、全ての方の状況が必ずしも好転する訳ではないです。
 元々持っていたり、年齢を重ねる中で患った病気の影響で状況が悪化して行く方もいらっしゃいます。

 そうなった場合に私たち介護職員ができる事は、日頃の状況との違いにいち早く気づいて医療職との連携を図り、悪化に対しての対応をお願いする事です。

 『生活』と言う言葉には2つの『いきる』(【生きる】【活きる】)が含まれています。
 【生きる】は医療職が担い【活きる】は私たち介護職が担うのだと、とある研修でお世話になった講師の方がおっしゃっていました。

 日々の生活は、自分の思い通りに自分の好きな場所あるいは馴染みの場所で過ごしたいと、誰もが思うはずです。

 でも、自分の思いに反してそれが叶わなくなってしまった時、人は何を思うのでしょう。

 施設に入る事を不本意に思う方は少なからず、いえ、むしろ多くいらっしゃいますし、介護スタッフの世話になるのを拒む方を実際に沢山見て来ました。     
 
 かく言う私も、殴られる、つねられる、つばを吐かれる等の介護拒否を受けて来ました。
 
 それは確かに介護スタッフの経験年数や技量も関係して来る事ではありますが、頑張っているのにうまく行かないと落ち込み、介護職を辞めてしまおうと日々思い詰めていた駆け出しの頃の私に、先輩は『入居者さん達から信頼を得られているかを考えて、それを意識しながら仕事してみようか。認知症の人だから何もできないとか、話が通じないって決めつけてないかな?信頼できない人に世話になりたいと思う人はいないでしょ?』と、アドバイスをくれました。

 認知症になると、痛みや苦しみ、不快感等をうまく伝えられない方が多くみられます。
 でも、うまく伝えられないだけで痛みや苦しみが無いわけでも、不快に感じる事が全く無いわけでもないのです。仕草や態度、表情や言動など、その人なりの方法でサインを出しています。

 関わり方を改善して信頼を得ると共に、サインを見逃さずにキャッチしてそのサインの意味を自分なりに考えたり捉えたりするだけでなく、他のスタッフとも共有して相談し判断する事で入居者さんへより良い対応ができるように一歩ずつ進んで行けるようになりました。

 この仕事をする前は、人見知りで人と関わるのが苦手でした。でも不思議なことに、この仕事に就いてからは少しずつ人見知りが改善して来ました。

 今まで頑張って来た事と学んで来た事を大事にしつつ、仕事に慣れたからこそ惰性にならないよう、新たな気付きを見つけながら介護福祉士として一歩一歩前に進みたいと思います。

 この仕事について正しい理解が進み、この仕事に就きたいと思う人が少しでも増えますように…(^人^)

※タイトル上の写真は4年前に99歳で亡くなった、大好きな祖母に面会に行った時に撮ったものです。施設(老健)に入所していた当時はコロナ禍でしたが、亡くなる時期が近いからと施設の方で面会を許可して下さっていました。

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