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ろう者と聴者のZoom会議と、プレゼン方法に度肝を抜かれた話。 本当に必要な会話アプリを目指して#2

筆談に代わる新しいアプリ制作を目指して。

字幕は頼るものではなく、補助であるという気づき

ハッカソンはオンライン開催だったので、メール等を通じてチームを作りました。集まった6人のメンバーは北海道・宮城・茨城・京都とバラバラなので、打ち合わせは基本的にZoom等で行います。

Zoomを使い始めたのは、「顔が見える」「チャットで話せる」という条件が必要だったからです。字幕設定や音声認識に頼った話し合いは
・誤認識があると話がわからない
・誰が何を話してるのか分からなくなってしまう
・声中心だと自分で発言しにくくなる
というFさんの意見から一旦使わないことにしました。

聴こえるのが当たり前だとなかなか気づけないんですが、
聴こえないというのは例えば全員がミュートしながら、それぞれ話したり笑ったりしている状況なんですよね。結構なカオス。そこに字幕がついていたとしても、同じ情報量を受け取れるとは限らないということを知りました。

こうやるのか!と驚いた発表方法

ろう者が聴者へZoomでプレゼンしようとするとき、どんな方法があると思いますか?まず思いつくのは、画面共有しながらチャットで説明を打ち込む方法ではないでしょうか?あるいは、用意してきた音声を読み上げ機能に読ませるという意見もあるかもしれません。

スライド画面を操作しつつ、Zoomのチャットを開いて説明文を入力し、さらに聴衆の表情を見ながら発表するのはなかなか大変です。聞き手だって、できたらチャット画面ではなく、スライドの画面に集中したいですよね。
では、音声読み上げはどうか。こちらも、耳が聴こえないと「音がきちんと出ているか」「今どこを読み上げているのか」が分からないため、安心してプレゼンできる方法とは言えません。

それならどうするのか?
なんと、Fさんは下のテキスト欄に説明を書き始めました。言ってしまうとシンプルなのですが、私は衝撃を受けました。この方法であれば、プレゼンを音で聞いている感覚と遜色ないどころか、それ以上に画期的だとさえ思ったのです。

スライド下のノートの欄に、説明を書き込みながら説明。
リアルタイムで入力が進んでいくため、話を聞いている感覚にとても近かった。

・タイトル画面で「ここに打ちます」と説明する
・説明したいイラストや図表を、カーソルでぐるぐると示してから下のテキスト欄に書き込むという流れを繰り返す
・そのスライドのテキスト欄がいっぱいになれば、前の書き込みを消してまた書き始めればOK。
・発表中に実演したいことがあれば、「実際にやってみたいので、私の画面を見てください」と書けばOK。

リアルタイムで入力が進んでいくため、話を聞いているようです。
その上、「!」などを語尾に付けられるのでテンション感も伝わりやすい。「聞き落としがない」「たとえ半年後に見返しても、内容をすぐに思い出せる」という点では、声だけの発表よりも良かったと思います。人によっては、聞くだけのプレゼンよりも、飽きずに楽しく見れるかもしれません。

苦い思い出 チャット会議の失敗談

最後に、これまで最も「この状況どうしよう」と焦ったチャット会議について書いて締めます。それは、「英語」が会議の言語に追加されたときです。

つまり、普段の「日本語チャット」+「英語」「日本語訳」「英語チャット」の3種類が加わることになりました。準備をしていないと、言語が一つ増えるだけでどれだけ大変になるかを思い知りました。

その日は、アドバイザーとして英語話者の方(以下、Aさん)が来て下さいました。その方は初めてだったので、チームの誰かがチャットに通訳を書き込めば問題ないと考えていたのだと思います。

Aさんの発言は声が中心だったため、
①Aさんが話す→②留学生メンバーが日本語訳→③私が日本語訳を入力
という三段階で進めていきました。
一見これでうまくいきそうですが、実際はひやひやです。なぜなら、
「①Aさんが1分話す→②日本語訳を話す→③チャットに打つ」
の間、Fさんにとっては何もわからない3分間が生まれてしまうわけです。

さらに、日本語訳担当とチャット担当が定まる前に、試行錯誤の時間が30分ほど経過していました。Fさん視点では、何か進んでいそうだけど置いてかれている状態が続いてしまっていたと思います。会議後のLINEのやりとりでは「フォローありがとうございました!何を話しているのか分かりにくかったので助かりました」との内容をいただき、少し複雑な気持ちになりました。

もし次の機会に他言語が混ざることがあれば、次の5つは必ずやりたいと思います。
■最初にチャット中心の会話を打診する。相手がチャットでの会話に抵抗を感じる場合は、通訳者とチャット入力の担当者を決める。
■その際も、「今、役割決めをしています。少し待ってくださいね」などとチャットで伝える。
■「通訳→入力」の順番で会話を進めることを、全員で共通認識する。
■「誰が発言中」などとチャット担当が入力するようにする。
■たとえ全ての会話が聴こえていても、考える時間や混乱による沈黙が起こる場合もある。その時は素直に「今、悩んでいます」などとチャットで伝えるようにする。…etc など

いろんな工夫を試してより良い方法を見つけていきたいです。



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