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双六岳へ(3日目後半)

鷲羽岳と仲良くなって下山した後、
今回の縦走でもう一つ見たい風景に向けて出発する。

まず、三俣山荘のテント場を抜けて、
三俣蓮華岳の山頂を目指す。岩場の登りだ。アルプスらしく大きな岩がゴロゴロしている。息が大きく荒くなる。

と、前方を茶色のオコジョが横切る。体調20数センチくらいだろうか?

「あ、あ、オコジョ、オコジョ!」

近くにいる人に知らせたが、あっという間にハイマツの中に消えていった。
一瞬だったけど可愛かった。山の中で自然の生き物に出会うと、何故か嬉しい。

また、出会えるかも?と思って歩くと、辛い登りも楽しみになった。


山の天気は変わりやすくて、三俣蓮華岳に湧く雲
三俣峠


三俣蓮華岳の山頂へ行くコースと
双六岳の巻道の分岐、三俣峠に着いた。

双六岳の山頂へ行くには、この三俣蓮華岳の山頂を経由しないと行けない。
よっこらしょ、と最後の急な登りを登ると、元気なお兄さん2人が楽しそうにお話をしていた。

三俣蓮華岳の山頂に立つ頃には、山頂ガスガス

「あーあ、ガスが出てきちゃった。
双六岳から槍ヶ岳を見たいのに」

「私もです。」

ちょっと会話をした後、
お兄さん達は、あっという間にこの雲の中へ消えていった。

山は午後になると、こうしてガスが湧いてくる事が多い。

「奇跡が起こらないかなぁ?」

そう祈りながら、双六岳へ向けて歩く。

雲が湧く、それはそれで幻想的
稜線上は雪渓がたくさんあった。

奇跡を祈り、歩きやすいなだらかや稜線を歩く。山頂直下は急な岩場だ。ここを登り切って、双六岳山頂!

ガスで真っ白で展望がない。
あーあ、がっかり。
双六岳方面へと、下へ目を向けると、

「わー、広々した大地、写真でよく見るやつ、荒野に一本道、日本じゃないみたい、カッコい〜い!」

興奮する。
これが双六岳の稜線の景色、
パタパタと、降りて一本道を歩く。風が出てきて寒い。他に登山者はいない。不思議な気分、ここが日本とは思えない。映画の中のワンシーンの様。
上から見たら道はわかったのに、降りてくると、どこが道かわからない。まだらに草が生えた広い大地が広がっている。

ガスがかかって、迷子になりそうだ。
少し空が見えて、槍ヶ岳が見えるのを期待したけど、
どこかの惑星に降り立ったような光景、雲はとうとう晴れなかった。

晴れていれば、この丸い山肌の上に、槍ヶ岳が覗くのに、その景色を見たかったのに。
ちっさな石ころの上に腰掛けて、
雲がどかないかしばらく待ったけど、ついにパラパラと雨粒が落ちてきた。
レインウェアを着るほどの雨ではない。
ここから槍ヶ岳を見るのはまたの機会にしよう。
この、不思議な景色を見れて、歩けただけでも楽しかった。

さぁ、この下の双六小屋へ向かおう。


双六小屋への下り道は、急なガレ場だ。
気をつけて下る事30分、双六小屋へ到着した。おっさんと約束した16時ちょっと前。
双六岳の稜線で降り出した雨はまだ降っている。しっとり濡れたフーデイを脱いで、山小屋の受付をしようとすると、先に到着していたおっさんが、玄関に迎えに来て、

「明日の朝食は、自分はお弁当にして早く山小屋を出るから、一人でゆっくり朝食を食べてて」

と言う。

日に日に歩くペースが落ちているおっさん、疲れも溜まってきているのだろう。帰りのバスの時間は決まっている。そのバスに間に合わせるため、早く山小屋をでると言う。
予備日があるから、もう一泊してもいいよ(私は温泉に入って帰りたい)と言ったけど、大丈夫、頑張る、と言う。
気をつけて歩いて欲しいなぁ。

この日、双六小屋は満室だ。
いろんなルートが交差する稜線に立つこの山小屋は、いろんなルートをだどってきた人達が集まる。
私も初めての鷲羽岳に興奮気味だが、他の人もそうだ。
夕飯は山の自慢をそれぞれがしていて、食堂は賑やかだ。
私達は明日下山、山登りがもう終わってしまう。うれしいけど、ちょっと寂しい夕飯だ。

双六小屋の夕飯、天ぷら美味しかった。


明日は下山。おっさんはバスに間に合うのか?

つづく

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