2021.1.17 少しだけ悲しいお話
友人がいた。
地元に。
今はもういない。
しばらく、バンドをやっていた。
そのメンバーの1人であった。
小学校の時から遊んでいた。
今はもうない。
正確には、去年の6月で縁が切れた。
*
先述だが、彼とは小学校時代から遊んでいた。
いつもふざけて、面白い、ひょうきんなやつだった。
仲が良かった。
未だに覚えている、毎年クレヨンしんちゃんの映画を一緒に見に行っていた。
自由帳に自作キャラクターを描いて遊んでいた。
家にお邪魔して、PS2をやっていた。
中学校に入って、僕らは遊ばなくなった。
何となく、冷めたような態度。
少しずつ、人を馬鹿にするような性格。
多くのことを他人のせい、時代のせいにするように。
僕たちの間には距離が開いていった。
*
どれほどか。
僕たちの好きなもの、笑い方、正義。
全部、すべて、1から10まで、何もかもが変わってしまったあと。
今のバンドメンバーである、太鼓叩きと、彼ともう一度、出会った。
そこから、僕たちの止まっていた時間が動き出した。
*
2、3年ほど、バンドをやっただろうか。
曲を作り、ぼくたちの音楽をやりだした。
どこかで彼はすれ違っていった。
歌詞は書かない、歌わない、練習しない。
ぼくたちはあくまでもあそびだった。
あそびのなかで、全力だった。
ぼくたちは、3人で生きていた。つもりだった。
彼だけは、ぼくたちと同じ方向を向いていなかった。
*
時が過ぎ、彼を除いたメンバーで音楽をすることとなった。
" テツ "、だ。
" テツ "は、上手だ。
" テツ "のコーラスは響き、歌詞は甘ったるく、ベースの腕は確かであり、ぼくたち2人の誰よりも、センスがあった。
ぼくたちと同じ方向を向いていたのは、" テツ "だった。
*
また、時が過ぎ、彼は就職した。
失礼だが、予想通り仕事をやめた。
そして、遠く離れた僕のいるまちに来た。
最後のチャンスであった。
ここまで生きてきたぼくたち。
違う正義をお互いにもち、僕たちは、僕たちがすれ違うことはもうなかった。
彼の言うこと、彼の理想、彼の生き様、彼の人生、そして、彼の正義はもう、僕には届かなかった。
" 友人 "であった僕は、全力で伝えようとした。
しかし、彼には届かなかった。
彼は拒んだ。
彼は、彼の、彼だけの正義を貫いてしまった。
しかたがない。しかたがない。これは、しかたがない。
しかたがなかった。
今日をもって、僕は彼を思い出すことはないだろう。
彼もきっと、僕を腫れ物のように思っており、僕のことは思い出さないだろう。
彼はきっと、彼の正義を貫いて生きていくだろう。
*
もう一度、言う。
今日をもって、
僕は彼を忘れる。
思い出すことはもうない。
さようなら。
二度と会うことはない
友人よ。
少しだけ悲しい、お話し。
2021.1.17
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