#6 毒親との戦い
反抗期の勘違い
思春期に大人に憎しみを抱くようになり、大人のずるさを目の当たりにした私は勘違いした。
大人は自分が一番に生きてる。なんで私だけがあんな親に我慢しないといけないの?
せっかく小学生の頃に、あの人を悪魔にさせないようにと見出した技「口ごたえをしない」が出来なくなってしまった。
例えば、人の悪口。
あの人は普段から、先生や近所の主婦、父親の悪口を言っていた。それを黙って聞いていることが出来なくなり、そんなことはない、いい人だよ、とか、聞きたくない、しまいには、うるさい。とか言ってしまった。
悪魔は進化した---
自分が一番正しいと思っているあの人は、自分に意見を言う人を敵とみなす。みるみる暴言はエスカレート。興奮して泣きわめき、人に対して決して言ってはならない言葉をためらいもなく吐き出す。文字にできない。おぞましい。
トラウマ
私も黙ってはいなかった。
やめればいいのに言い返しては暴言を浴びる、を繰り返していた。
最初は普通に話しているのに、ふとした一言で悪魔になる。悪魔に常識は通じない。どんなに理不尽なことでも、自分が正しいのだ。
私の意見など聞く耳をもたない。むしろ子供が親に逆らうなどもってのほか、服従して当たり前と思っていたのだろう。
ある日、あの人がいつものように悪魔となって叫んだ。
あんたなんか産まなきゃよかった。
この一言に、ついに私も大声を出して叫んでしまった。
その瞬間---
私の頭の中に雷が走った。
私の叫び声が、あの悪魔と同じ声だったのだ---
両手で耳を塞いだ。吐き気がした。紛れもない遺伝子。私にも悪魔の血が流れているのか。憎い。自分が怖くなった。
悪魔に戦いを挑んだ自分を悔やんだ。
そうだった、世の中の普通の大人とは違うんだった。話が通じる人じゃないのはわかっていたはずなのに。一ミリも変えられるわけないんだ。自分の無力さを思い知った。
この時の体験はトラウマとなり、私は人にたいして怒りや不満を感じても、声に出すこと、ケンカすることができなくなった。
悪魔になったらどうしよう。
この恐怖とは今でも戦っている。きっと死ぬまで戦うのだろう。