#14 毒親育ちが子供を産むこと
葛藤
もし子供を産んだら、私はあの人と同じことをしてしまうのではないか。
毒親はおそらく自覚はない。自分が正しいと思っているから。
私も気付かないうちに同じことをしてしまうかもしれない。
歴史は繰り返してしまうのか。
負の連鎖は断ち切れるのか。
私は専門家でもない。
大学では別の学問を学んだし、子育て・親子関係に関してはド素人だ。自分の経験、つまり、毒親に育てられた経験しかない。
普通の親子関係を知らない。
普通の家庭を知らない。
何が普通?
社会人になって毒親と絶縁できても、こんな葛藤は続いた。
毒親育ちの私は結婚願望がなかった。というか、子供を持つ自信がなかったのだ。
同じことをしてしまうかもしれないという可能性が怖かった。同じ思いをする人を増やしたくない。こんなの私だけでまっぴらだ。ただそれだけ。
結婚、家族、出産、育児、子育て。
未知の世界。自分の力でコントロールできる自信もなかった。
子供欲しいー!
無邪気に話す友人たちが、心の底から羨ましかった。
結婚、子育てに夢と希望だけを持ってみたかった。
信じる
夫も結婚願望がなかった人だった。
不思議なもので、結婚願望が無い2人が出会って、結果、結婚した。
ただ、子供を持つことについては、何度も話あった。
とにかく怖い。きっと理性を失って同じことをするに決まってる。自信がない私は決めつけていた。
夫は、僕が隣で見てるから、何かあったら止めるから、と言ってくれた。
その言葉を信じてみた。私は2人の子供の親になれた。
普通の家庭って?
妊娠中。あの人と同じことをするのではないかと、やはりどこか不安で自信がなかった私。
普通の家庭を知らない私。
子供とどうやって接するのが普通?
普通の母親って何?どんな人?
振り返ると、かなり頭でっかちに考えすぎていたようだ。
出産後、自分の命よりも大事な存在ができて---
今まで生きてきた中で知らなかった新たな感情が生まれた。
この子は命をかけて私が守る、そして、自然にこう思えた。
自分がされて嫌だったことをしなければいい。
自分がしてほしかったことをすればいい。
娘と息子には自分がしてほしかったように接してきた。
子供が誰よりも信頼して甘えてくれる、頼ってくれる、好きでいてくれる、いま、母の喜びをかみしめている。
毒親育ちでも子育てできてる。負の連鎖は断ち切れる。
母になり無償の愛を知った。
だが、あの人のことはますます理解できなくなった。
自分の命より大事な存在に、なぜ、あんなことができた?
30年たった今でも理解できない。
やっぱり理解できないうちは会わないほうがよいのだろうか。
かといって理解できる日が来る気もしない。
危篤だから会う、というのは気分で流されているだけではないだろうか。
あんなに毎日いなくなればいいと思っていたのに。
なぜ迷いが生まれるのだ。
そもそも会わないといけないのか?会わなきゃいいのに。
なぜ迷うのだ?親だから?
危篤というパワーワードが私を迷わす。
苦しいなぁ。
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