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#5 毒親との暮らし

初めての目標

小3で私は決心した。

一日も早く一人で生活できる力をつけよう。強くなって脱出しよう。

一人で生きる力をつけるには何をどうすればよいか、子供なりに毎日考えていた。

まだ10才。
大人になるまであと10年くらいはこの暮らしを続けなければならない。
できるだけ被害を受けないように、家から追い出されないように、どうすればよいのか。
また、自活するには学歴が必要と思ったので、高校、大学とお金を出してもらうためにどうすればよいのかも考えていた。

平穏な生活を送るには、あの人が悪魔にさえならなければいいので、何がきっかけで悪魔になるのか、顔色を窺う生活を続けながら観察した。
するといくつかのキッカケが見えてきた。

●自分が一番正しい

あの人はこの世で一番自分が正しい、正解だと思っている。まるで自分が中心に地球がまわっているかのように。なので意見が合わない人間は敵とみなして徹底的に攻撃する。服従するまで攻撃は延々に止まらない。非常にやっかいなのだ。
なので、できるだけ口ごたえをしないようにした。間違っていると思っても、自分の意見は抑え込んだ。たまに失敗して痛い目にあったけど。

●世間体を異常に気にする

あの人は異常にプライドが高かった。自分は人とは違う、特別とも思っていた。周りより裕福に見えて優秀な子供がいることがステータス。なので成績上位をキープしている限りあの人の機嫌は良かった。
特に担任から褒められたり、近所の母親たちから羨ましがられたりすることが大好物、優越感に浸れたのだろう。小さい世界だ。

このせいで自分の子育てが一番正しいと勘違いもしてしまうのだが。

ある日、近所の母親たちと井戸端会議している時に遭遇した。
みんなから「さくらちゃんは出来がいいから羨ましいわ~。どうやったらあんないい子が育つの~」と言われ、あの人は恍惚の表情でこう答えていた。

「そんな特別なことは何もしていないのよぉ~。勉強しろなんて言ったこともないしね~。おほほほ」

心底ゾッとしたが、あとで悪魔になられては困るので、優等生の笑みで通り過ぎた。

成績もよくいい子を演じていれば悪魔にはならない
大学も行きたかったのでちょうどよかった。とにかく勉強だけはちゃんとやった

●夫婦げんか

よくケンカしている夫婦だった。といっても一方的にあの人が悪魔になり、父親は諦めている様子にも見えた。

私に被害が及ばないようにしてほしかった。
小3の頃、父親に泣いて頼んだことがある。喧嘩してもいいけど、お願いだからあの人を悪魔にならないようにしてと。

その後から、父親は私の前ではケンカはしなかった。でも、ケンカの後の私への八つ当たりは終わることがなかった。父親が知らないところで。

こればかりは私の手には負えなかった

反動

やはり抑圧されると反動はくるものだ。
こんな生活をつづけたせいか、次第に私の心は歪んでいく。

思春期になった私の思いは怒りとなって世の中の大人へ向けられた。

大人が憎くてたまらない。社会も憎い。

まさにザ・反抗期。

家ではいい子が必須なので、外で発散していた。

とはいえ、私には目標がある。一日も早くちゃんとした大人になるために、自分が損することは決してしなかった

例えば、グレる、薬、暴走族、警察沙汰。といいうような、大人になるのが遠回りになることはしなかった

先生に反抗する、無視する、授業をさぼる---
こんなんで気が晴れるわけでもなく、常に大人に対してはイライラしていた。本屋やスーパー、レストランの店員さんが笑顔で接客してくれても、ムスッとした態度をしていた。

学校では私が授業をさぼっても無視しても、成績さえよければ先生はたいして怒らなかった。同じことを友達がするとひどく怒る。大人の保身。ムカついたが、大人になりたい私はがっかりもした。

大人も結局は自分が一番かわいい。ずるいじゃん。

勘違いした私は、だんだんと、あの人の機嫌を窺うのもバカらしくなった。

この勘違いが毒親との関係を悪化させるとは知らずに---

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