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【官能エッセイ】と或るおとなのおもちゃ屋さんのお仕事 第8話

第8話 悪戯の代償

※体験談に基づいて構成されていますが、実在の人物や団体などとは
 一切関係ありません。

「あんたねぇ・・貞操帯つけてるくせにいちいちフル勃起させてたら
 うっ血して本当に腐って取れちゃうわよ?
 昨日あれだけ出したのにもう何でこんなになってるの?
 せめて一晩くらいはどうにかなると思ってたわ。
 かなり精力の強い男だって2日くらいは我慢できるものなの。
 まさか、未だにオナ禁とか信じてるんじゃないでしょうね?
 オナ禁する奴って想像力だけは馬鹿みたいに凄まじいからちょっと
 したことですぐ反応する傾向にあるけど。
 あんなの嘘よ。3日もすれば溜まった精液なんて体に吸収されるから
 それ以上溜まっていくことなんか無いわ。
 それを続けていけば生産能力も落ちるし。
 だんだん感度も勃起力も落ちていくの。
 女をいつでも充分に満足させるパフォーマンスを保ちたいなら
 むしろ毎日した方がよっぽど効果あるわね。
 精液の生産機能も強くなるし、回復も早くなるわ。
 でもね貴方は今、その真逆の行為をさせられているの。
 それを付け続ければ嫌でもまともに勃起しなくなるわ。
 心配しなくても無限に溜まっていくこともないし
 勃ちっぱなしが永遠に続くことなんか無いのよ。
 まったく、散々出しまくってあげたのに
 1日目からこれじゃ先が思いやられるわ。」

朦朧として何を言っているのか、全てを理解できる状態ではなかったが仰向けの僕の顔を覗き込むのは間違いなくハイリではなくイソだった。
微かにあの靴音が近づいて来たことは覚えている。
吐瀉物で汚れたTシャツとスラックスを脱がされ、貞操帯から解放された剥き身の僕を冷えたタオルで綺麗に優しく抑えてくれている。
初めて触れるイソの優しい一面に少しの安心感を覚えた。

「すいません。ご迷惑をお掛けして・・・
 帰宅するまでは大丈夫だってんですけど、いただいたクリームを塗って
 ドリンク飲んだら急にとんでもないことになってしまって・・・
 結局、疼きと痛みで一睡もできなくて。」

いつもどこかツンとしていて冷淡な彼女が顔をこわばらせるほどの驚きを見せた。

「え?ちょっと待って、いただいた?
 クリーム?ドリンク?それ何?誰に貰ったの?」

「え?レイさんですが? 昨日、コレ着けられた後に
 痛くなるし痔になっちゃうからクリームちゃんと塗るようにと。
 ドリンクも水分補給にって・・・」

「着けられた??
 着けていただいた、でしょ?
 まぁ、今はそんな事どうでもいいわ。
 でもなんでレイがそんな事・・」

彼女は怪訝な表情を浮かべ爪を噛んだ。

「そのクリーム今、持ってる?」

僕はレイに突き返そうと思っていた小さく丸いクリームの容器を鞄から出した。彼女は奪うように取り上げると一瞥しただけですぐに理解したのか大きな溜息をついた。

「ごめんね。相当辛かったでしょう・・・」

弱々しい中に確かな怒りを混ぜ込んだその言葉に、僕は彼女の中に潜む何かを見た気がした。

今月の棚卸も無事に終わり、再開店までの1時間程度の休憩時間の事だった。僕はと言えば役に立つほど動けるわけもなくただイソに付いて回りながら計算機を叩く作業が精一杯で既に疲労困憊、フラフラになっていた。
24時間営業のこの店はそれが真夜中だったとしても棚卸が終わり次第、再び店を開けることになっている。
不稼働在庫や過剰在庫には店長が利益度外視で安値を付けるものだから常連さん達の中では駐車場で再開店を待つ強者までいる。
店長はいつの間にか帰っており、事務所の電気は半分消えていて薄暗い。パーテーションの丁度その陰になっているところで2人が何か揉めていた。
イソとレイだ。僕はとっさに重なった段ボールに背を向け身を潜めた。

「レイ、あんた何考えてるの?どうしてこんな事したの!!?」

「あぁ~ぁ、バレちゃいましたぁ??
 そぉんなにぃ~怒らないでくださぁいよ~
 ちょっとした、いたずらですよぉ~。」
 
「これ、なんだかわかっててやったのよね?
 わかってる上で、ドリンクまで渡したのよね?」

「うぇえ~ほぉんとぉぉぉに
 ぬりぬりして飲んじゃったんですかぁ~!?
 あらまっ。かぁわぁいそぉ~」
 
「私のおもちゃ、壊そうとしたのね?」

「そんなわけないじゃなぁいですかぁ~
 ただの、いたずらですよ、いたずらぁ~」

「あらそう。へぇ~・・・そうなの。」

バチィィィィンッ!!

「おすわり。」

事務所内の空気が一瞬で張り詰めた。不意打ちで頬を張られたレイのその顔から明るさが消え去った。足元に素直に正座するレイの姿はさっきまで喜んでボールを追って走り回っていたのに今や耳をたたみ尻尾を内に隠し主人の声、一挙一動に集中している完璧に躾を施された犬そのものだ。

「これ全部飲みなさい。」

イソは僕が昨日渡されたドリンクを3本投げ落とした。
ゴトン、ゴロンと転がり響いた鈍い音をレイは拾い集める。

「さ、3本・・ぜ、全部ですか・・・」

猫なで声ではない彼女の声はまるで別人だ。
いつものどこから来るかわからない自信とふざけた印象は全く無い。

「なに?なんか言った?何も言ってないわよねぇ?
 さっさと飲んじゃいなさい。
 ほら、貴方もそんなとこで隠れてないでこっちいらっしゃい。」

僕は言われるがまま、二人に近づいた。
正座しているレイから突き刺すような視線が送られる。僕が何かしたってわけじゃないが明らかに僕に対する怒りだ。小さい頃、いじめっ子が先生に怒られている時にいじめられっ子に送る視線、正にそれであった。

バチィィィィンッ!!!!!

「は・や・く・の・め」

その音と痛みは容赦ない事を理解させるには充分過ぎた。
レイは慌てて1本目のドリンクの栓を震える手で開けると一気に喉へと流し込んだ。2本目に手を伸ばしながらレイの顔を見るがレイは黙って顎をしゃくった。2本目の途中で一旦呼吸を入れ、顔色を窺うが舌打ちをされる。どうにか2本目も飲み干し3本目に手を伸ばす、というところで流石に手が止まる。量的にも味的にもこれ以上飲むのは無理だろう。

「も、もう飲めません。お腹が・・いっぱいです・・・」

「だから何?私、待ってるんだけど?」

冷笑の目線に対し、苦々しい諦めの笑みで返すのが精いっぱいのようだ。
込み上げてくる吐き気と戦いながら3本目を少しずつゴクリ、ゴクリと
ゆっくりと体内へと落とし込んでいく。残り1/3というところで咽て逆流しそうになるのを耐える。なんどもなんども嘔吐く。
みるみるうちに目が充血し涙がボロボロと零れる。口をギュッと膨らませてブルブルと震えだしている。
もう限界だという事は誰の目にも明らかだ。

「少しでもこぼしたら、1本目からやり直し。」

吐き捨てるように発せられたその言葉でレイの震えは更に激しさを増した。


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