本日の一曲 vol.415 スティーリー・ダン ドゥ・イット・アゲイン (Steely Dan: Do It Again, 1972)
スティーリー・ダンは、ドナルド・フェイゲン（Donald Fagen）さんとウォルター・ベッカー（Walter Becker）さんのバンドであり、その妥協しない音楽造りをするバンドとして有名です。
特に、スティーリー・ダン名義ではありませんが、ドナルド・フェイゲンさんの1982年にリリースされた「ナイトフライ（The Nightfly）」を愛聴盤として絶賛するリスナーはたくさんいらっしゃいます。このアルバムは「音がよい」ことでも有名です。
さて、本日ご紹介するのは、スティーリー・ダンの1972年のデビューアルバム「キャント・バイ・ア・スリル（Can't Buy A Thrill）」のトップを飾る「ドゥ・イット・アゲイン」です。
まず、「Steely Dan」というバンド名の由来ですが、これは、ウィリアム・バロウズ（William Burroughs、1914年2月5日生～1997年8月2日没）さんの小説「裸のランチ（The Naked Lunch, 1959）」からの引用です。この作品は、バロウズさん自身が麻薬中毒だった時期の体験をベースに書き上げた「いかれた」小説です。この小説の前半に「Ａ・Ｊの例年のパーティ」という章にメァリーとジョニーの絡みに部分があり、そこからの引用になります。以下、該当部分を引用しますが、✕部分は自粛部分です。
メァリーは、ゴム製の✕✕✕を身体にくくりつけている。「ヨコハマからきた丈夫な鋼鉄✕✕✕3号よ」と彼女は言って、シャフトをなでまわす。噴出して部屋の向う側まで飛ぶ。「ミルクは殺菌することにしてくれ。炭疽熱だの鼻疽だの口蹄疫なんていうようなおっかない牛の病気をおれにうつさないでくれよ……」
「あたしがシカゴで女装趣味のリズだった頃、害虫駆除業者をやってたわ。男としてぶちのめされるスリルを求めて、きれいな男の子にモーションをかけるわけ。そのうち男の子を一人捕まえて、レズの禅僧から習った超音波柔道で圧倒してやった。縛り上げてカミソリで服を切り裂いて、鋼鉄の✕✕✕1号で犯してやったわ。去勢されるんじゃないってわかったら、その子すっごい安心して、誇張ぬきであたしのダニ・スプレー一面にぶちまけたもんよ。1号はレズの男役にまっ二つに引き裂かれたの。あたしの味わった中じゃ最高の✕圧の持ち主ね。鉄パイプをつぶせたくらい。それがその娘の演（だ）し物だったの」
「それじゃ鋼鉄✕✕✕2号は？」
「バブーンアスホール上流で、飢えた吸血ナマズにかじられて粉々よ。それと今度は『ひい−−−！』なんて言わないでよ」
小説の「いかれ」具合がよくお分かりになるかと思いますが、「ヨコハマからきた鋼鉄✕✕✕3号」が「Steely Dan III from Yokohama」であり、これがバンド名の由来です。
次にデビューアルバムの「Can't Buy A Thrill」は、ボブ・ディラン（Bob Dylan）さんの1965年にリリースされた6枚目のアルバム「追憶のハイウェイ61（Highway 61 Revisited）」に収録された「悲しみは果てしなく（It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry）」の歌詞の一節から引用したものです。題名の意味は「笑うには多くのことが必要だが、泣くには列車が必要だ」ということですが、その歌詞に「郵便列車に乗ったが、スリルを買うことはできない（Well, I ride on a mailtrain, baby, can't buy a thrill）」とあり、ここからの引用です。
そして、スティーリー・ダンのアルバム「キャント・バイ・ア・スリル」のジャケットは、客待ちの立ちんぼ売春婦の写真のコラージュになっており、スペインではジャケットの写真を差し替えられたりしました。
本日の「ドゥ・イット・アゲイン」の歌詞の大意は、人生には何度も繰り返すことばかり、ということです。
音楽的には、演奏の完成度は別にして、スティーリー・ダンあるいはドナルド・フェイゲンさんの音楽はデビュー以来ずっと一貫しているのだなと思います。どのアルバムでも間違いないということだと思います。
アルバムのプレイリストです。
残念ながら、ウォルター・ベッカーさんは、2017年9月4日に67歳でお亡くなりになりましたが、ドナルド・フェイゲンさんは、ソロ活動とともにスティーリー・ダンの楽曲もずっと取り上げています。
(by R)
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