本日の一曲 vol.117 メト管弦楽団室内合奏団 モーツァルト グラン・パルティータ (MET Orchestra Chamber Ensemble: Morzart: Serenade No.10 B dur Gran Partita, K361/370a, 1784)
モーツァルトのセレナード第10番変ロ長調「グラン・パルティータ」は、管楽器の合奏のためのセレナードで(小夜曲)です。全7楽章で通して演奏する50分弱もかかりますが、もともと全曲を通して演奏して聴かせるということは想定されていなかったと思いますので、好きな楽章を好きな時に聴けばよろしいかと思います。
楽器編成は、本日ご紹介するMETのアンサンブルは、指定通りの編成で演奏していますので、アイキャッチ画像でいうと、前列は木管楽器陣で、左からオーボエ2人、ファゴット2人、バセットホルン(クラリネット属の大きい楽器)2人、クラリネット2人、後列は真ん中の弦楽器のコントラバス1人をはさみ、両翼に金管楽器のホルン2人ずつとなっています。
本日ご紹介する「メト管弦楽団室内合奏団」とは、アメリカ・ニューヨークにあるメトロポリタン歌劇場専属のオーケストラの有志メンバーが集まって合奏をしているということです。
もともと木管楽器は、楽器の中では柔らかな音色を出す楽器であり、これに金管楽器の中でも一番柔らかいホルンを加え、低音部をコントラバスが支えるという構成になっているので、どこかほのぼのとした、落ち着いた雰囲気を醸し出してくれる楽曲です。
この曲の第3楽章のアダージョは、ミロス・フォアマン監督の映画「アマデウス」で、サリエリがサロンで盗み見たモーツァルトの楽譜がこの楽章だったのですが、もちろん初見で、「はじめファゴット、そこにオーボエが舞い降りてきて、クラリネットが引き継ぐ。私は神の声を聴いた!」と嫉妬をこめて感嘆するという場面に使用されていました。
ところで、メトのみなさんが使っている楽器はモダン楽器だと思いますが、クラシックの作曲家が作曲した当時に使用されていた楽器のことを「ピリオド楽器(オリジナル楽器、古楽器)」といって、現代でも、ピリオド楽器を使った演奏がさかんに行われています。昔からある楽器は、だんだんと改良が加えられて現代のモダン楽器になったという歴史をもっていますので、音色や響きが微妙に違ってきているはずです。しかし、作曲された当時の楽器環境で演奏してみよう、というのが現代のピリオド楽器による演奏です。
ピリオド楽器による演奏も紹介しましょう。イタリアのアンサンブルで、ゼフィーロ合奏団(Ensemble Zefiro)による演奏です。
楽器の音色や響きが違うことにお気づきになるかと思います。ピリオド楽器は、管楽器だけではなく、ピアノやヴァイオリンなどの弦楽器にもありますので、いろいろな楽器による演奏を聴いてみるのも楽しいことだと思います。
その他、いくつかの演奏をご紹介します。まず、往年の巨匠カール・ベームさんの指揮で、ベルリン・フィルのメンバーによる演奏です。こちらのプレイリストには、ヘルベルト・フォン・カラヤンさん指揮のウィーン・フィルのメンバーによる演奏で、セレナードとしては珍しい短調(c moll)の第12番「ナハトムジーク」(アイネ・クライネは第13番です)も入っていますので、こちらもお聴きになってみてください。
もう一つ、モダン楽器による演奏ですが、オルフェウス室内管弦楽団による演奏です。ハイドンとモーツァルトの楽曲を集めたプレイリストになっていますので、作業用にどうぞ。
(by R)