本日の一曲 vol.470 リンダ・ロンシュタット 悪いあなた (Linda Ronstadt: You're No Good, 1974)
アメリカのシンガーであるリンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt, 1946年7月15日生)さんは、自らを「カメレオン」である、声を大きく変えることができる、と話しています。
リンダさんのシンガーとしてのスタートは音楽が好きな一家に育ち、兄姉妹でのハーモニーから始まったことから言えることだと思います。リンダさんの生い立ちについては、2022年にリンダさんのドキュメンタリー映画「サウンド・オブ・マイ・ヴォイス」が公開されました。
この映画のオープニングでは、リンダさんの1974年のアメリカ・ナンバーワンのヒット曲「悪いあなた」が使われています。歌詞は、「You're no good!」ということなので、今風に言えば、「あんた(おまえ)なんか、サイテー」という意味だと思います。
「悪いあなた」のオリジナルのライターは、クリント・バラード・ジュニア(Clint Ballard Jr., 1931年5月24日生~2008年12月23日没)さんであり、最初は、ディー・ディー・ワーウィック(Dee Dee Warwick, 1942年9月25日~2008年10月18日没)さんの1963年のシングル曲としてリリースされました。このときはリズム・アンド・ブルース風のアレンジでしたが、ヒットには至らず、日本でもリリースされなかったようです。
1963年11月、ベティ・エヴェレット(Betty Everett, 1939年11月23日生~2001年8月19日没)さんがカバーし、ビルボード・ホット100では51位まで上昇しました。このバージョンもリズム・アンド・ブルースのアレンジになっています。
翌年の1964年には、イギリスのスウィンギング・ブルー・ジーンズ(The Swinging Blue Jeans)がカバーして、イギリスでヒットしました。ここではいわゆるマージービート(Merseybeat)のアレンジになっています。
その後、約10年の間をおいて、アメリカではウエスト・コーストの音楽が持て囃され、リンダさんがウエスト・コーストのロック風のアレンジとその「カメレオン」としての歌唱でリリースして、これがアメリカではナンバーワンの大ヒットになったわけです。「悪いあなた」という邦題は、リンダさんのバージョンで初めて与えられた題名だと思いますが、リンダさん以前の3つのバージョンは日本ではリリースされていないと思います。そして、リンダさんが取り上げたことで、アメリカの女性シンガーがこぞってこの曲を歌っています。
さらにその約5年後、エレクトリック・ギターの革命を起こしたヴァン・ヘイレン(Van Halen)がセカンド・アルバム「伝説の爆撃機(Van Halen II, 1979)」の1曲目にこの曲をハード・ロック・バージョンとして取り上げました。
本日取り上げたアルバムの音盤です。
(by R)