本日の一曲 vol.427 ニーナ・シモン 悲しき願い (Nina Simone: Don't Let Me Be Misunderstood, 1964)
ニーナ・シモン
ニーナ・シモンさんは、1933年2月21日にアメリカ・ノースカロライナに生まれ、2003年4月21日にフランスのカリー・ル・ルエで70歳の生涯を終えた歌手です。2008年のアメリカのローリング・ストーン誌のオールタイム・偉大な100人のシンガーでは第29位に選ばれています。ちなみに第28位はジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)さんです。
ニーナさんは、幼い頃にピアノに才能を発揮し、黒人初の女性クラシック・ピアニストを目指し、17歳のときジュリアード音楽院でカール・フリードベルク(Carl Friedberg)さんに師事し、フィラデルフィアのカーティス音楽院に進学しようとしましたが、入学できませんでした。
ニーナさん自身や後にご紹介する2015年公開の映画「ニーナ・シモン 魂の歌(What Happened, Miss Simone?)」では、黒人であることを理由に入学を拒否されたとされていますが、カーティス音楽院側はこれを否定しており、真偽のほどは不明です。
その後、ニーナさんはカーティス音楽院の教授であったウラディミール・ソコロフ(Vladimir Sokoloff)さんに個人的に師事しますが、カーティス音楽院に入学することはできませんでした。
ニーナさんの家庭は貧しかったため、酒場で歌手の仕事を始め、1958年にはジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin)さんの「I Loves You, Porgy」をヒットさせ、1959年にデビュー・アルバム「Little Girl Blue」をリリースしました。
「Little Girl Blue」のプレイリストです。
1963年には、ニーナさんの人生を変えてしまった2つの出来事がありました。1つは6月12日のミシシッピの公民権運動家メドガー・エヴァース(Medgar Evers)さん暗殺事件と、9月15日のバーミンガム・16番街バプテスト教会爆破事件です。これらの事件をきっかけとしてニーナさんは公民権運動を象徴する歌手へと変貌します。
ニーナさんは、1964年に「ミシシッピ・ガッデム(Mississippi Goddam)」を歌いました。「ミシシッピ、くそったれ」という激しい表現になっています。
ニーナさんは、公民権運動にのめり込んでいくのですが、この当たりの経緯は先ほどご紹介したNETFLIXのドキュメンタリー映画に詳しく描かれています。
noteにも「木曜日はあそびの日」さんの記事がありましたので、こちらもご覧ください。
ニーナ・シモンの「悲しき願い」
本日ご紹介する「悲しき願い」は、ちょうどニーナさんが「ミシシッピ・ガッデム」を歌った直後にシングルとしてリリースされた曲です。邦題は「悲しき願い」ですが、原題の「Don't Let Me Be Misunderstood」を直訳すると、「誤解しないでください、ちゃんと理解してください」という意味であり、公民権運動のことを直接歌ったものではありませんが、当時のニーナさんの行動にもリンクするような曲です。
アニマルズの「悲しき願い」
「悲しき願い」のニーナさんのバージョンは、売れ行きは不調だったのですが、1965年にアニマルズ(The Animals)がこの曲をカバーし、大ヒットになりました。ニーナさんのバージョンの最後に使われているフレーズがアニマルズ・バージョン以降有名になったリフに使われています。
アニマルズというバンドについては、ボーカルのエリック・バードン(Eric Burdon)さんの歌唱が素晴らしく、以前にも「朝日の当たる家」をご紹介したことがありましたので、こちらの記事もご覧ください。
日本では同じく1965年の尾藤イサオさんのアニマルズ・バージョンのカバーが有名です。
ジョー・コッカーの「悲しき願い」
1969年のジョー・コッカー(Joe Cocker)さんのカバーです。
ジョー・コッカーさんの「悲しき願い」は、アルバム「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ(With A Little Help From My Friends)」に収録されているのですが、このアルバムには、ビートルズ(The Beatles)の表題曲や、ボブ・ディラン(Bob Dylan)さんの「アイ・シャル・ビー・リリースト(I Shall Be Released)」のカバーも収録されています。アルバムのプレイリストです。
「悲しき願い」いろいろ
1977年にはサンタ・エスメラルダ(Santa Esmeralda)さんのディスコ・バージョンがリバイバル・ヒットしました。
1986年のエルヴィス・コステロ(Elvis Costello)さんのカバーです。
2020年には藤井風さんもカバーしました。
(by R)