UAE「日本式ストーリー講座」

「あなたにもアニメが作れる! 日本式ストーリー講座」  

2018年11月8日、アラブ首長国連邦のシャールジャの高校で特別授業をしました。
そのまとめです。  

(1)自分
あなた自身が感じている喜び、悲しみ、人生の課題を、物語にして、たくさんの人に伝えてみましょう。
最初は、まず、「自分」を主人公にしてみてください。
そうすると書きやすいのです。  

(2)他者
自分と、自分とよく似た人(仲の良いお友達とか)で、お話を作ると、広がりづらくなります。
そこで、もう一人の登場人物「他者」を作ってください。
他者とは、誰でしょう?
それは、あなたが女性なら、別の属性の人。若者なら、お年寄り。それに、わたしのような異国からきた人のことです。
「自分」と「他者」を置くと、価値観や利益の違いから、さまざまな感情が湧きあがり、ドラマが生まれます。
また、他者を置くことによって、自分とは立場も価値観も違う人に、物語を理解してもらいやすくもなります。  

(ここで生徒さんから、アニメ『君の名は。』が人気だと発言がありました。そこで「日本で作られたアニメが、UAEの人に楽しんでもらえるのも、この「他者」の視点があり、それによって相対化されているからです」と補足しました)  

(3)社会
「自分」と「他者」を作ったら、2人をとりまく「社会問題」について考えてください。
家庭内の軋轢、政治、自己実現を阻む文化、事件……。
たとえば、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を思い出してください。
少女ジュリエットがいて、他者のロミオがいて、2人の家の長年の確執という問題があります。
この問題によって恋人たちの運命が変わっていくのです。
『君の名は。』も、都会の少年と、山奥の村の少女がいて、●●●が起こります(生徒さんはみんな観たと言うので、授業では話しましたが、ここではネタバレ回避のため伏字にしました)。これはじつは2011年に日本で起こった大震災について描いています。  

では、この3つの要素で、あなたの物語の舞台を作ってください。  

ーーー創作タイムーーー  

ここで生徒さんに発表してもらいました。
エジプト系の生徒さんが、
「裕福な少女が主人公です。厳格な父親との間に、価値観の違いがあり、確執があります。もう1人の人物は貧しい庭師の少年です。少女は、自分は父親とは違うと思っていますが、少年は少女に対して憎しみを感じています」
と発表してくれました。
続いて、シリア系の生徒さんが、
「成績優秀な少女が主人公です。もう1人の人物は、勉強しますがなかなか成績が上がらず、焦りと嫉妬から、主人公の机にカンニングペーパーを入れて陥れたことがありますが、主人公は彼女を許しました」
と発表してくれました。
どちらも、自分、他者、社会問題(経済格差、学歴社会)があり、生き生きとしていて、とても面白かったです。聡明な生徒さんたちでした。  

こうして舞台ができたので、つぎに展開の作り方に移りました。  

(4)起承転結
「起」プロローグ、導入部
「承」舞台の説明、その舞台での日常
「転」事件と変化、その解決
「結」エピローグ、お話の終わり  

さて、いま作ってもらった(1)〜(3)は「起」と「承」に当たります。
舞台はできているので、つぎに、事件を起こして、ドラマを作ってください。
たとえば、『ハリー・ポッター』を思い出してください。  

「起」主人公ハリーのもとに魔法学校から手紙が届く
「承」魔法学校での新しい生活。友達、先生、授業、ライバル…
「転」ところが、学校に悪者がいて、事件が起こる
「結」ハリーたちの活躍で悪者が退治される  

「転」を盛り上げるのに、重要なのが、さきほど作ってもらった「他者」「社会」です。価値観や利益の異なる人物の行動、環境の問題があると、お話は変化していきます。  

(5)2つ目の転
応用編で、「転」のあとに「転2」を入れると、より物語らしくなります。
「転1」で起きた事件は、仲間、両親、先生などの助けを借りて解決できたことにします。
ところが、つぎに起こった「転2」には誰の助けもありません。主人公自身の力で解決して、それによって成長する展開があると、物語として生きてきます。  

(ここで1時間経って、時間切れに)  

最後に発表してくれたエジプト系の生徒さんは、日本のアニメ好きとのことで、
「主人公は日本人の女の子。太っていてコンプレックスがあって……」
と話してくれたのですが、そんなの共感できないですと、担任の先生に不評……。パーフェクトな人物ではなく、なにかしら欠けた部分のある主人公にすると、聖痕となって共感を得られやすい、というお話をしたらよかったんだけど、とっさに話せずに終わったので、そこだけちょっと心残りでした。
個性、主張、自分の世界があって、生き生きとした少女たちで、いま説明したらもうどんどん書いてくれて、とても興味深かったです。  

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