やけに余裕のある男はあなたのことは大して好きじゃないという事実。
スマートな男が好きだった。
話が上手で、デートも自然に誘ってくれて、連絡もマメ。
多分この人ってモテるんだろうな。
そんなふうに思える男性が好みだった。
けど、あまりにも余裕があって慣れている男は大体私のことは大して好きではないのも事実である。
そのことに気がついたのは20代も半ばになって、旦那と離婚して一皮剥けた後の話。なので、まだ、頭ポンポンおじさんとデートをしていたこの時の私にとってはずっと先。
ということで、この記事は前回の続きです。
↓前回の記事はこちら↓
そう、前回の出会編でわかる通りポンポンおじさんはとてもスマートなおじさんだった。
デートも毎回高級っぽい所ではなく、たまには大衆居酒屋的なところ(しかし知る人ぞ知るみたいな逆におしゃれなプレイス)にも連れて行ってくれたり、謎の美術展に連れて行ってくれたり、とにかくバラエティに富んでいて飽きることはなかった。
大学の授業を終わらせて、豪速でデートプレイスに向かう。
そんな日々を楽しんでいた。
惹かれていた。
が、体の関係などはやんわりと避けていた。
なんとなくそうしてしまったら全部壊れるような、そんな予感がしたのである。
後は彼がバツイチだということも、なんとなく引っかかっていた。
大真面目だった私は彼はバツイチだし、年齢も年齢だし、次に交際する人とは結婚を考えているのでは?!
私、まだ大学生だし、無理だよぉ〜
なんて考えていたのである。
ピュアである。
そんなわけでなんとなーくそういう誘いやらそんな雰囲気になってもうまいこと断り続けて2ヶ月、ついにポンポンおじさんが動く。
「まだ時間あったら行きたいBARがあるんだけど、付き合ってくれる?」
いつもは1軒目で解散するのに、珍しくおじさんが2軒目に誘ってきた。
この段階までくると私もポンポンおじさんへの警戒心は皆無だったし、いつも早めに解散するのでもう少し一緒にいたいという気持ちも高まっていたのでノールックでokした。
表参道の焼肉屋を出て、中目黒のBARに移動した。(もつろん移動はタクシーだ)
薄暗ーーーいBARのソファ席に通された私たち。L字のちっさいソファに座ると、それまでの遠慮は何処?!というくらいのボディタッチの嵐である。
いつもの頭をポンポンに始まり、さりげなく足を開いて足にタッチ!笑いながら肩をトン!つけていたでっかいネックレスを触る!
そして最後!
ソファの手すりに置いていた手に、手をソッッッ…
サッッ!!!!!!!
反射的に手を引っ込めてしまった。
自分でもなんでこんなに過剰に反応したのか、この時はよくわからなかった。
が、なんか違うと思った。
流石にそれ以降は過剰なボディタッチは止んだが、ポンポンおじさんは諦めなかった。
「よかったらうち来てみる?」
普通だったら行かない。
しかし私はついていくことにした。
断ったら嫌われると思ったからだ。
さっき手をサッと引っ込めたくせに、こういう所は推しに弱い。
アホである。
ポンポンおじさんの家は中目黒の駅から少し歩いていった所にあった。
一人で住むのには広すぎる3LDKの新しくてオサレなマンション。
夜だから見えなかったが、大きなバルコニーもあるのだという。
「僕、神山さんのこと好きなんだけど、付き合わない?」
直球だ。
部屋のソファに座るなり、ポンポンおじさんは告白してきた。
ここまでどストレートだと曖昧に誤魔化すこともできない。
大体家まで着いてきた女である。
断られるはずもないと、ポンポンおじさんは余裕の笑みさえ浮かべていた。
「ちょっと…考えたいです。」
はああああああ〜〜〜〜〜〜〜?!?!?!?
おま、じゃあ、なんで家まで来た〜〜〜〜〜〜ん?!??!
さっきまで甘い目をしていたポンポンおじさんの目が、一気にそういう色を帯びた。
当然だと思う。私が男でもそう思う。
「そうか。でも、今日は一緒にいられる?何もしなくて良いからさ」
そう言いながら覆い被さろうとしてくるポンポンおじさん。
言動と行動が噛み合っていない。
そしていつの間にか部屋の電気はおしゃれな間接照明を除いて全て消えていた。
マジックかよ。
多分飲み物を取りに行くタイミングで全部消されたのだろう。
慣れすぎだろ。
いや、そんなこと思っている場合じゃない!
食われる!!!!!
身の危険を感じた私は咄嗟に「あ!!!!!」と大声を出した。
驚いて離れるポンポンおじさん。
「お、お父さんに!!ブチギレられる!門限が!ある!!!(絶叫」
カタコトで叫んだ。
そこまでくるとポンポンおじさんの目も冷ややかである。
(そりゃそう)
「私も、ポンポンおじさんと話しているとすごく楽しいし、惹かれてもいます。でも、再婚とか考えているのかなと思うと年も離れているなあと思うし、あなたの大切な時間を奪うことになる気がするんです。
だから今中途半端なことをするのって違うのかなと思います。」
俯きながら早口で言った。
恐る恐るポンポンおじさんの顔を見るとその距離わずか10センチ。
マジックかよ。
てか話聞いてねえだろ。
「帰ります!!!(絶叫」
こいつはもう何を言ってもあかん。そう思い、絶叫して家を出た。
駅まで猛ダッシュで帰った。
ポンポンおじさんは追いかけては来なかった。
こうしてポンポンおじさんとの束の間のロマンスは終焉を迎えたのである。
そして後日ポンポンおじさんのインスタを見ると
「良くしてあげた人に裏切られるって、しんどいですね。
今までしてあげた事全部、なんだったんだろう」
的な内容の長文が真っ黒な夜の画像とともに投稿されていた。
憎悪がすごい。
でもこうなるのも仕方ない。
ポンポンおじさんの立場からしたら私は完全に悪役だ。
が、この時ポンポンおじさんと付き合っていたとしても、少ししたら飽きられて捨てられるだろうと思う。
だってムーブが本当に好きな人に対するそれじゃないから。
本当に好きな相手だったら話くらい聞くし、明らかに迷っているのに強引に迫ったりもしない。
最初だけ熱心で付き合ったら冷めるいつものパターンが関の山。
こんなことばかりだった。
男性と向き合って傷つくのは怖い。
だけど嫌われるのも嫌だった。
そういう中途半端なことを繰り返し、私もクソ女になっていた。
だけどこの時は男だけがクソで、自分はそういうクソ男に食い物にされるかわいそうなヒロインだと思っていたのである。
目の前の人は自分を映す鏡。
尊敬している女性の言葉だ。
私がクソだから、相手がクソなのだ。
恋愛指南を読み漁っていた時に
「男にとって都合の良い女は体の関係だけの女だけど、女にとって都合の良い男は自分のことが好きだけど絶対に告白してこない男友達」
という言葉を見つけたことがある。
この時の私にはそういう男友達が何人もいた。
やけに余裕のある男は私のことを大して好きではない。
だけど全て従って相手に合わせる女も同様にその男を本質的には好きではない。
自分を知ってもらうことも、相手を知ることも放棄して、上部だけの楽しい部分だけを享受して愛されようとしていた。
嫌われたくないのは他でもない自分の為だ。
自分の保身しか考えていないからかえって相手を傷つけたり、失望させたり、したり、そんなことを繰り返しまくった20代だった。
では、一体どうしてこんなに拗らせてしまうようになったのか。
次回からはもっと過去、初めて男性を異性として意識して、意識され始めた頃の高校時代に遡ろうと思う。