1. インクルーシブな視点に立った子どもの権利について(第1回定例会一般質問1)
インクルーシブ教育実現の指標
【質問】
現在、子ども条例に「子どもの権利」を位置付けるための条例改正議論が進んでいます。条例制定時には、子どもに権利があるのか、という議論があったことを思うと、「子どもの権利」が少しずつ社会に受け入れられていることを実感します。
子どもたちに、誰もが排除をされず共に生きることが出来る社会、インクルーシブ社会の担い手として育つ環境を、私たち大人が提供できるかが問われています。子ども一人ひとりの事情は違っても、人権が尊重され権利が享受できる社会にする責任があります。
国連子どもの権利条約は、通常の教育から排除されないことを子どもの権利と位置付けています。つまり、インクルーシブ教育は、すべての子どもの権利なのです。しかし、まだまだこの権利が十分に実現されているとは言えません。
区の就学相談を受けている保護者から、「特別支援学校適と判定されたが、地域の学校に行きたい」という相談が続いています。お聞きすると、通常学級に行きたいという意思を伝えることは、とてもハードルが高いようです。本来、どの子どもにも通う権利があるはずの地域の学校なのに、保護者は強く意思を貫くことを求められます。
2023年3月時点で、区立幼稚園に在籍する配慮を要する子どもは61人、24.3%でした。区立幼稚園には、障害のあるなしに関わらず共に育つインクルーシブな保育環境が整っています。しかし、小学校入学となると状況は違います。通常学級への就学は3人、4.9%と少なくなり、通常学級と特別支援教室の併用は20人、32.8%、その他は、特別支援学級と特別支援学校へ就学します。就学前は、共に育ってきた子どもたちが、障害のあるなしで分けられているのが現状です。
世田谷区は真のインクルーシブ教育をめざしているわけですから、就学前から就学後も一貫して、共に学び共に育つ教育の実現に期待します。そこで、今後、インクルーシブ教育の実現を客観的に評価するために、障害のある子どもが地域の学校・通常学級に就学した割合を明らかにしたらいかがでしょうか。インクルーシブ教育の実現を図る指標を持つべきです。見解をお聞きします。
【答弁】
区はインクルーシブ教育を推進する中で、小学校入学時の就学相談において多様な就学先を示しながら、障害のある子どもと保護者の意向に沿った就学先を選択できるように支援をしています。
就学前の障害のある幼児が、小学校入学にあたり、どのような学びの場を選択したかを分析することは、区におけるインクルーシブ教育の推進状況を把握する1つの視点になると考えられます。
今後、障害のある幼児の就学先を分析し、就学相談される保護者が子どもの就学先を考えるための参考としたり、インクルーシブ教育の推進状況の評価としたりできるよう、精査してまいります。
「 まいぷれいす」と児童館の役割について
【質問】
区は、全ての子どもが「子どもの権利」を実感できる居場所を充実させるために子どもの居場所の検討をしています。子どもが安心していられる場所があること、学校でもない家庭でもない、第3の居場所・サードプレイスがあることは、子どもの成長に必要です。
例えば、顕在化しにくい子ども虐待やヤングケアラー、いじめや不登校など、一律にはくくれない子どもの背景にある困難に、柔軟な対応が出来る居場所が不可欠です。特に、どのような人や居場所につながるかは、子どもの将来に影響を与えます。開設されて3年目、生活困窮など困難を抱えた子どもの居場所「まいぷれいす」には、安心できる居場所を見つけた子どもたちの日々成長する姿があります。
区は、2つ目の「まいぷれいす」の設置を決めました。子どもの居場所として児童館もありますが、それぞれの居場所の役割についてお聞きします。
【答弁】
「まいぷれいす」は、支援を必要とする家庭の中学生を対象に学習支援・生活支援を行う事業であり、秘匿性が保障される環境の中で支援者による子ども一人ひとりへの丁寧な関わりだけでなく、似た境遇の子ども同士による心の打ち解けや安心感も期待できるところです。
一方、児童館は、子どもが置かれている環境や心身の状況等に関わらず、自ら選択して利用できる施設であり、職員の見守り・寄り添いの中で、遊びや行事を通じて、自分らしく過ごすことが出来る居場所です。日常の営みの中で、些細な変化への気づきや言葉にできない声を拾うことで、不登校や貧困等のケースを察知し、関係機関と連携した福祉的対応を実践しております。
こうした児童館の専門性のさらなる向上を図るため、今後は、児童相談所や子ども家庭支援センター等の様々な福祉職で経験やスキルを培うことができる区の福祉職の環境を活かし、人材育成の視点でのジョブローテーション等も行いながら、地区の見守りネットワークの要として取り組んでまいります。
子どもの外遊びとプレーパークの存在意義
【質問】
能登半島地震後、子どもたちが学校再開の時に、「お友達と会って遊びたい」と口々に話す姿を見て「遊び」は子どもにとってなくてはならない大切な「子どもの権利」だと改めて感じました。区が、子ども政策として外遊びを重要視し、各地域にプレーパークを開設、子どもの遊ぶ権利を保障していることを評価します。一方で、のびのびと外遊びが出来る場所の確保は課題です。新しい公園の設置を計画する時には、子どもの外遊びを視野に入れることを望みます。
子どもの権利として外遊びの重要性と外遊びに欠かせないプレーパークの存在意義についてお聞きします。
【答弁】
自然環境の中で五感を通じて得られる興味関心は、やってみたいという主体性を生み、やりたいことをやりきった子どもは、自己肯定感を感じながら成長していくことができるなど、外で遊ぶ機会を充実することは子どもの成長にとって非常に重要であると認識しています。
一方、先般実施した計画策定に向けたアンケート調査では、習い事等で自由な時間がない子どもが多く、外で遊んだ経験も著しく低下している状況を確認したところです。子どもの権利条約では、すべての子どもに遊ぶ権利が保障されていることを踏まえ、次期計画の中で、外遊びができる機会と環境のさらなる充実について位置付けられるよう検討しているところです。
また、各地域に整備するプレーパークは、国おいて名実ともに外遊びを推進するうえで象徴的な役割を果たしているものと認識しております。今後も、外遊びの文化を地域に根付かせていくために、プレーパークの活動の充実、子どもの遊ぶ権利を保障する環境の整備をめざしてまいります。
北烏山7丁目の公園計画と子どもの外遊び
【質問】
また、現在進行している北烏山7丁目公園計画では、子どもの意見を聞くこととプレーパークなど地域の子どもの外遊びの活動と連携した公園づくりに期待します。見解をお聞きします。
【答弁】
(仮称)北烏山七丁目緑地事業におきましては、本年2月に「基本構想」をまとめました。
来年度以降、地域の方々にご参加いただくワークショップなど、地域住民との協働により、緑地の計画づくりを進めてまいります。
子どもの遊ぶ権利を保障するという視点では、近隣小中学校の児童生徒を対象としてアンケート調査や子どもワークショップを開催し、この緑地における子どもの遊びについて検討してまいります。
また、子どもを含めた地域住民との協働により、プレーパーク事業など地域課題やニーズを踏まえて、整備計画の策定に取り組んでまいります。