国連障害者権利委員会の勧告を受け止め、政策実現をめざす
9月に出された国連障害者権利委員会の勧告は、障害者のためのものではなく、障害があるかないかに関わらず、全ての人が人権を尊重される社会にするためのものと、私はとらえています。第3回定例会(9月20日から10月21日)では、世田谷区に新しく「障害理解の促進と地域共生社会をめざす条例」が制定され、今後さらに障害者権利を保障する取り組みが前進することを期待されています。国連の勧告と条例制定が、同じ時期となったことについて意義深いものを感じます。
【国連障害者権利委員会の勧告をどうとらえるか】
2014年、日本は障害者権利条約に批准、今年8月、スイスのジュネーブで国連障害者権利委員会による初めての日本審査が行われました。日本からは障害者団体や個人など約100人もの方々が現地に赴き、世田谷からも何人もの方が派遣団として参加、日本の障害者政策の現状を訴えました。委員会ではこれを参考に、日本政府との建設的対話(審査)が行われ、9月には勧告が出されました。
勧告の一部をあげると、障害関連の法律等のジェンダー主流化、優生思想・能力主義を原因とする津久井やまゆり園事件の法的責任の検証、障害差別における権利救済のしくみの構築、当事者参画の保障、インクルーシブ教育の実現、グループホームを含む施設生活への懸念など、が指摘されています。日本では障害者権利がないがしろにされているかを実感する内容です。国に向けられた勧告ではありますが、地域がどのように受け止め、取り組みに反映していくかは重要です。初めて行われた国連障害者権利委員会の勧告を区長はどのように受け止めているのかを、9月の定例会の一般質問で聞きました。保坂展人区長の答えは以下の通りです。
【区長が国連勧告の趣旨をとらえた取り組みを明言】
先月、国連の障害者権利委員会による日本の取り組みへの審査が行われ、日本政府に対し、「障害者の強制入院をやめ地域社会での自立した生活の支援を行うこと」や「障害のある子どもたちの分離された特別教育をやめること」「手話を公用語として法律で認めること」など、90項目以上もの勧告が行われました。この勧告を通じ、日本の障害者政策の未だ未解決の課題が改めて明らかとなり、障害者権利条約の批准国として、重く受け止めるべきものととらえております。
区は、様々な状況および状態にある区民が多様性を尊重し、価値観を認め合い、安心して暮らし続けることができる地域共生社会を実現するために、本定例会に「世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例」を提案します。新たな条例制定を契機とし、国連障害者権利委員会による勧告と「私たちのことを私たち抜きで決めないで」というこの大変有名になった国連で議論をしてきた障害者権利条約の合言葉を十分踏まえ、勧告の趣旨をとらえながら、インクルーシブ教育や地域共生社会の実現に全力をあげてまいります。(9月22日桜井純子一般質問への区長答弁)
【世田谷区、新たな人権条例を制定】
今回の「障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例」の制定によって、桜井純子政策の一つ「障害者差別禁止条例の制定」の実現を報告出来ることになりました。
ただ、条例制定が目的なのではありません。今後いかに政策実現に結びつけ、誰もが自分らしく生き、共に暮らせる社会を創りだすのか、が問われています。
今回、区長が答弁で語った決意は、障害福祉にとどまらず、すべての世田谷の政策に実現されるべき考え方です。国連の勧告に対し、後ろ向きの態度をとる国とは対照的に、前向きなとらえ方をしている世田谷区。世田谷区政を舞台に、これからますます、地域共生社会・インクルーシブ社会の実現に力を注ぐ決意を固めています☆