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再往が妖 あらすじと一話【創作大賞2024漫画原作部門】


概要

あらすじ:

 日本の人口は約1億人。その内10万人は魂の半分に妖怪を宿し"妖人"と呼ばれている。彼らの多くは強大な能力を行使し、人々の生活を脅かしている。この不安を和らげるのは、"牙楯軍"と呼ばれる人間たちだ。
 10歳の少しぽっちゃりな洋太は、軍人になることに憧れている平凡な少年。毎日の友達との鍛錬を終え、家に帰る途中、妖人に襲われてしまう。そこに牙楯軍の軍人が駆けつけるのだが、彼もまた妖人だった。軍は妖人だけで構成されているという秘密を知り、落ち込む洋太。そんな時、友人たちの元には新たな妖人が現れ、洋太は現場に向かう。そこで彼はさらなる衝撃の事実を知る…。


一言で:「ぬらりひょんを宿す少年が最強になるために、普通の高校生活を全力で楽しもうとする話」


ターゲット:10代前半


ジャンル:バトル


好きになってもらいたい要素:
・子供の時に憧れた変身シーンを青少年向けにライトでスタイリッシュしている点
・秘密を抱えながら学校では普通のふりをしている、誰しもが一度は考えたことがある妄想を表現している点
・主人公の見た目と精神の変化
・現代社会の分断と対立を人間と妖怪という二軸でマイルドに表現している点
・メインキャラクター同士の強い関係性(幼馴染、兄弟)
・かっこいい妖怪たち


キャラクター:
一話:
枝野洋太(主人公)
1,2話は10歳でそれ以降は15歳。少年期は小太りで子供っぽく、何を考えているのか分かりやすい性格をしている。青年期にかけ毎日鍛錬を積み、体もすらっとして精神も成熟する。冷静で辛いことや悲しいことにも表情一つ変えない。
井達風斗:1,2話は16歳でそれ以降は21歳。妖怪は鎌鼬。優秀だが詰めが甘いところがありよく怒られている。
木櫛一心:1,2話は28歳でそれ以降は33歳。長期視点を好み風斗の隊長として登場する。大天狗
枝野幸代(43歳):洋太の母。血は繋がっていない。
枝野浩一(43歳):洋太の父。血は繋がっていない。
勇田雄二(10歳):人間で牙楯軍に入ることを夢見ている。
江藤蓮真(10歳):洋太の親友。寛大な性格
井内修(10歳):洋太の友人
荒川良樹(10歳):洋太の友人
光浦文人(10歳):洋太の友人
白田一布(24歳):洋太を襲う一反木綿
広田大地(33歳):敵の妖人(大地打)。ゆったりとして残忍な性格
隠田榎吉(47歳):神隠しの妖人。おどおどした性格

二話:
稲川清羅:洋太と同い年。妖怪は清姫。突飛なことをよくする性格。
水里海斗:洋太と同い年。妖怪は海坊主。姉がいる。内向的で繊細な性格。infp
大神三郎左衛門:総隊長。妖怪は山本五郎左衛門。人間嫌いで差別的な性格
大神嗣巳:洋太と同じ年。大神三郎左衛門の息子。エリート志向が強い一方で自己肯定感が低く卑屈な性格。
取巻きA:洋太と同じ年。嗣巳と常に一緒にいてご機嫌取りをしている。
取巻きB:洋太と同じ年。嗣巳と常に一緒にいてご機嫌取りをしている。

三話:
内藤沙奈(23歳):木櫛の秘書に最近就任した。気が弱いが、悪気なくはっきり物事を言ってしまう性格。


一話 これが幸福論?


①N『妖怪は実際にいたのだろうか? その答えはおそらくYesである。なぜなら、人間と妖怪の両方の魂を持つ妖人《ようびと》は現に存在しているのだから』

②〇洋太家、リビング
 ・洋太、10歳の小太りな少年。両親が営む洋菓子屋の二階で生活している
 ・洋太、テレビに釘付けになっている
 ・ナレーター、話している
 ・テレビ、軍人たちが協力(武器を用いながら)をして一人の妖人(牛 鬼)を倒している画が流れている(インパクトある感じで)
ナレーター「日本の人口が1億人であるのに対し、妖人の数はわずか10万。しかし去年妖人のよって起こされた事件は全体の90%以上を占めます。普段は人間と同じ見た目をしていますが、妖怪化をすると特異な能力でたちまち凶悪な犯罪を起こす妖人たち。ですが、不用意に心配する必要はありません。私たち人間には牙楯軍がいます。最新の武器と完璧なチームプレーで妖人を圧倒します。私たち人間は、妖人には決して負けません。人間の希望、牙楯軍が皆さんの生活を守ります」

 ・洋太、座っている状態から仰向けに上体を倒す
洋太「(目を輝かせている)ひゃーーーーー!!!」
 
 ・浩一(父)、幸代(母)、1階から走って上がってくる
浩一「(焦った様子で)どうしたの、洋太!?」
幸代「(イライラした様子で)何事!? 今営業中なんだけど」
 
 ・洋太、うつむけで地面に顔をうずめ、足をバタバタさせている
洋太「牙楯軍がかっこよすぎる」
 
 ・幸代、浩一、テレビに目を向ける
幸代「(呆れた様子で)またそれ? 何回目よ」
洋太「だって何回見てもドキドキするもん」
 
 ・洋太、正座をする
洋太「父ちゃん母ちゃん!俺、絶対牙楯軍に入る!」
浩一「それも何回も聞いたよぉ」
幸代「洋太。軍がどういうところなのか本当に分かってるの?」
洋太「妖人をやっつけて、みんなの生活を守る」
幸代「そんなに簡単な事じゃないよ。入るのもすごく難しいし、入った後も危ないし。夢を持つことはいいことだけど、母ちゃんたちは入ってほしくないよ」
 
 ・洋太、二人のいる反対側を向き、体育座り
洋太「(拗ねた様子で)俺ならできるし、危なくないし」
 
 ・浩一、横にいる幸代の方に顔を向け洋太を指さす
浩一「拗ねちゃった」
 
 ・洋太、床に乱雑に置かれていたリュックを手に持って部屋から階段に向かう
洋太「(舌を出す)もういい!蓮真たちと修行に行ってくる。俺は絶対なるんだから」
幸代「分かったよ。レジ横にあるクッキー持ってきな」
 
 ・洋太、幸代と浩一のいる後ろに振り返る 
洋太「(嬉しそうに)いいの!? やった、ありがとう」
 
 ・洋太、どたどたと足音を立て外に出ていく
 ・浩一と幸代、困った表情で微笑しながら顔を見合わせる
浩一「甘やかしすぎなのかな?」
幸代「10歳になったしもうちょっと大人になってくれたらなぁ」


③〇公園
 ・洋太、蓮真(10歳)、修(10歳)、良樹(10歳)、文人(10歳)、集まっている
洋太「(ワクワクしている様子で)よし、今日も組手やるぞ! 牙楯軍に入るためには戦えなきゃいけないからな!」
修「えー、今日も? 俺別に軍人になりたいわけじゃないんだけど」
良樹「俺も。サッカーやりたい」
 
 ・洋太、頬を膨らませて拗ねる
郁人「拗ねたな」
蓮真「まあまあ、考えてみ? こいつが軍に入って死ぬほど強くなったらこの町は安泰。俺たちもハッピー」
 
 ・修と良樹、不服そうな顔を見合わせている
    ・洋太、急に立ち上がり親指を上げる
洋太「そういうことだから、よろしく!」
 
洋太「最強キック、最強パンチ」
 と、蓮真を圧倒する
 
 ・蓮真、よろけて尻餅をつく
蓮真「見かけによらないずすばしっこいな。さすが俺の親友」
 
 ・洋太、ふんっ!と自慢げに鼻を鳴らし、腹を触る
 
 ・勇田雄二(10歳)、ぼーっと空を見て歩いている
 ・洋太、雄二を見つけ、手を大きく振る
洋太「(上機嫌で)おーーい、雄二! 一緒に鍛錬しようぜ」
雄二「(にこやかに)洋太君。鍛錬って?」
洋太「(誇らしげに)牙楯軍に入るために組手とか筋トレとかしてるんだ! 雄二も軍入りたいんだろ? 一緒にやろうよ」
雄二「(淡々とした様子で)その修行って本当に意味あるの?」
洋太「ある!」
雄二「ふーん。でも僕は一人でやるから遠慮しておくね」
洋太「分かった、気を付けて!」
 
 ・雄二、洋太に手をあげて角を曲がる
 ・蓮真、洋太に近付いく
蓮真「(引いている様子で)洋太、よくあいつに話しかけるよな」
洋太「(不思議そうに)なんで?」
 
 ・良樹、修、郁人、テンポよく答える
良樹「(不快そうな様子で)いっつもぼーっとしてて気味が悪いじゃん」
修「デリカシーがないし」
郁人「空気が読めないし」
 
 ・洋太、首をねじる
洋太「そんなことないと思うけどな」
修「(からかうように)あいつ実は、妖人だったりして」
 
 ・洋太、修の胸ぐらを掴む
 ・良樹と郁人、洋太の後ろから抱き着き、洋太を止める
洋太「(激昂)冗談でもそんなこと言うなよ」
 
 ・修、顔を腕でホールドしている
 ・洋太、修をポコポコ殴っている
修「いやーごめんって。俺のポテチやるから許して」
 
 ・洋太、殴りかかる腕を止める
洋太「(ニコニコして)ポテチ! どこ?」
 
 ・修、頭をポリポリ掻いている
修「(困惑している様子で)なんなんだよ」
蓮真「あいつの前でああいうのやめろよ」


④〇人がいない道路(夕方)
 ・洋太、立ち漕ぎをして自転車に乗っている
 ・時計が17時を指している
洋太「(焦った様子で)遅くなっちゃった。あーもう、母ちゃんに怒られちゃう」
 
 ・白田一布(一反木綿の姿)、前から風に乗って浮遊してやってくる
白田「ひゃっほーーー」
 
 ・洋太、遠くに見える白いタオルのような白田に目を凝らす
洋太「(目を細めながら)なんだあれ?」
 
 ・洋太の斜め前にあるスピーカーから放送がなる
放送「付近に正体不明の妖人反応一体あり。皆さん、安全な場所に身を隠してください」
 
 ・洋太、自転車を止めスピーカーに目を向けている
洋太「妖人?」
 
 ・白田、洋太の口と体に巻き付き、口を塞ぐ
白田「(嬉しそうに)我ながらナイスアイディア。こいつを人質にとってこいつの親から金をゆすって…そしたら上納金はなんとか」
洋太M『なんだこれ。息ができない』

 ・白田、大笑いする
 ・洋太、白田に巻き付かれ空に浮いている
洋太M『怖い、苦しい、誰か』
放送「付近に別の正体不明の妖人反応一体あり。皆さん、安全な場所に身を隠してください」
 
 ・井達風斗(16歳)、高校の制服の上に牙楯軍の制服を羽織っている
 ・風斗、洋太と白田の元に走ってきて、姿を変化させる
 ・風斗(モデルかまいたち)(目が赤い、鎌を持っている、犬歯が生えている)
 ・風斗、鎌を一振りする
風斗「かまいたち」
 
 ・白田、かまいたちを食らいアスファルトの上に落ちて、姿が人間に戻る
 ・洋太、白田の上に落ちる
洋太「いった」
 
 ・風斗、かまいたち後のポーズのまま立ち尽くしている
 ・洋太、風斗を見つめる
風斗「やべ、人間の子供だ。いつもの癖で妖怪化しちまった。こりゃ隊長に怒られるな。またぐちぐちと詰めが甘いだとか注意力散漫だとか」
 
 ・風斗、気まずそうに洋太を見る
 ・洋太、風太をじっと見る
洋太『この見た目、それに赤い目』

 ・洋太、近くの木の枝を手に取ってから、風斗に向かって腕を振るわせながら構える
洋太「妖人、俺が倒してやる」
 
 ・風斗、ため息をつく
風斗「落ち着けガキ。俺は普通の人間の高校生兼牙楯軍の軍人だよ」
 
 ・風斗、背中の服の文字[牙楯軍]を見せる
洋太「妖人が軍人なわけないじゃん」
風斗「にんげn」
洋太「人間は見た目が変化しないよ」
風斗「そうだよな。さすがにごまかせないよな」
洋太「どういうことだよ…もしかして妖人が牙楯軍のふりをしてるのか?」
風斗「…んあぁそうだ! 良く分かったな。俺は軍人のふりをしている悪い妖人だ」
 
 ・風太のトランシーバーから、木櫛(隊長)の声が響く
木櫛「風斗、さっきお前の妖気を感じたんだけどさ、人間の前で妖怪化してないよね? 何回も言ってるけど、軍が妖人だけで構成されてることはバレてはいけないからね。もしばれたら罰則対象になるよ」
風斗「もちろんっすよ、隊長」
風斗M『罰則ってもしかして刑務所、とか?』
 
 ・白田、目を覚まして話し始める
白田「(笑いながら)そうか、人間どもは知らないのか。牙楯軍に人間は入れないんだよ。普通に考えて人間が束になって戦っても俺らに勝てるわけないだろ」
風斗「うるせぇ!」
 ・風斗、白田にチョップをして気絶させる

 ・洋太、膝から崩れ落ちる
洋太「(絶望した様子で)牙楯軍が妖人の軍。俺は、おれは絶対軍に入って、みんなを守るのに。人間は入れないなんて、嘘だ」
 
 ・洋太、泣いている
 ・風太、洋太を見つめ考え込み、しばらくするとポケットから瓶を取り出す
風斗「しょうがない。1個しかないが、これを使うか」
 
 ・風太、しゃがんで瓶を洋太の前に差し出す
風斗「これでここ10分の記憶を消すことができる。今からお前にかけるから。いいな?」
 
 ・洋太、動かない
 ・風太、洋太の頭に瓶の中の液体をかける
風太「知らない方がいいことだったよな。悪かったな」


⑤〇同
 ・洋太、目を覚ます
洋太M『牙楯隊は妖人しかいないなんて…』

 ・洋太、アスファルトの上で目に腕を覆いかぶせて号泣している


★洋太が落ち込んでいる生活を羅列していく
⑥〇洋太の部屋(次の日)
 ・幸代、洋太の部屋に入りがみがみとしている
幸代「もう7時30分だよ、起きなさい!」
 ・洋太、なかなか布団から起き上がらない

⑦〇家、リビング
 ・洋太、朝ご飯を残す
 ・浩一、不思議そうに見ている

⑧〇教室
 ・洋太、窓の外をぼーっと見てる

⑨〇グラウンド
 ・洋太、体育でぼーっとしており、頭にボールが当たっている

⑩〇教室(放課後)
 ・洋太、机に顔をうずめ突っ伏している
 ・蓮真、修、良樹、郁人、洋太の机を囲むように集まってくる
修「洋太、今日も公園で鍛錬するだろ?」
洋太「今日はパス」
蓮真「(不安そうに)今日、ずっと変だけどなんかあった?」
 
 ・洋太、ハッとしてこぶしをぎゅっと握る
 ・洋太、4人の方に顔を上げる
洋太「(笑って)……なんもないよ。ただちょっと体がだるくてさ」
良樹「そっか。じゃあ今日は俺たちだけで行くか」
 
 ・4人、洋太に背を向け教室を出ていく
 ・蓮真、手をひらひら振る
蓮真「親友、よく休めよ」
 
 ・洋太、再び顔を机に突っ伏す


⑪〇通学路(放課後)
 ・洋太、下を向きながら一人で歩いてる
 ・雄二、後ろから近づいてきて洋太に声を掛ける
雄二「洋太くん」

 ・洋太、雄二に驚く
雄二「今日は修行しないの?」

 ・洋太、頭を掻く
洋太「(気まずそうに)今日は、休もうかなーみたいな。ってか、俺軍に入るのやっぱいいやーみたいな」

 ・雄二、立ち止まる
雄二「え、なんで? あんなになりたがってたのに」

 ・洋太、立ち止まり後ろを振り返り雄二を見る
洋太「やっぱり俺じゃなれないかなって思ってさ」

 ・雄二、洋太に近付く
雄二「そんなの分からないじゃん。僕は君よりも運動できないけど、本気でなるつもりだよ。(悔しそうに)それなのに君があきらめちゃったら僕は…とにかく君はすごいから絶対なれるのに」

 ・洋太、一呼吸置いて話す
洋太「…そうだよな、頑張れば出来ないことなんてないよな」
 
 ・雄二、洋太の手を握る
雄二「うん、諦めちゃだめだ」

・放送、大きな音声で流れる
放送「仁保公園に妖人反応1体確認。周囲の住人は」
雄二「仁保公園って、いっつも洋太君たちが遊んでるところじゃない?」 
 ・洋太、目を見開き、公園の方向に走り出す
雄二「待ってよ!」

 ・洋太、無視してとにかく走り続ける
 ・雄二、後ろからついていく
 ・住人たちは逆方向から逃げてきている


⑫〇公園
 ・洋太と雄二、走って息が上がっている
 ・蓮真たち、固まって震えている
 ・広田大地(敵の妖人)、二人を見る
洋太「…妖人ってお前か?」
広田「なんか増えた。ちょうどいいや。俺、この辺に住んでいる子供の妖人探してて。この子たちに質問してるんだけど何も答えてくれなくてさ。何か君知ってる?」

 ・雄二、首を振る
洋太「知らないよ」

広田「ふーん、そっか。埒が開かないな。じゃあさ、この子殺せば教えてくれる?」
 ・広田、蓮真の首根っこを掴んでいる
洋太「なんでそうなるんだよ! 本当に何も知らないのに」

広田「10、9、8、」
洋太「おいっ、何にも知らないって」
広田「7,6,5、4」
洋太M『どうする? 一発殴る? 相手は妖人だし勝てるわけない。蓮真が死んじゃう。やばい。どうすれば。怖い。誰か』
広田「3,2、い…あっ、そういえばその妖人の子、昨日白田っていう一反木綿に襲われたらしいんだけどさぁ」

洋太M『えっ、それって俺のこと?』
 ・洋太、体の中のぬらりひょんに身体を乗っ取られて広田の顔にフックをきめる

雄二「洋太君、その目」
 ・洋太、目が真っ赤になっている
広田「ラッキー、一発で引き当てた」
 と、目をキラキラさせ、口元の血を拭いながら立ち上がる

放送「妖怪反応を一体確認しました。住民の皆様は自分の身を守ることに集中してください」

 ・洋太、広田に断続的に攻撃を入れている
 ・洋太、目の前の景色がぼんやりとして赤みがかっている
洋太M『なんだよ、これ。勝手に体が』
広田「まだコントロールできないのか。困ったな。しょうがない、止めるか」
 
 ・広田、妖怪に見た目を変える(モデル:大地打)(目が赤い、口が鳥のくちばし、髪の毛は長髪、筋肉隆々)
広田「おらっ」
 
 ・広田、手に持っている槌を洋太をめがけて何回も振り下ろす
 ・地面が衝撃で割れる
 ・洋太、全ての攻撃を避ける
洋太M『どうなってるんだよ』
 
 ・洋太、広田にキックを入れる
洋太M『怖い。痛い。止まれ、止まれ』
 
 ・広田、吹き飛ぶ
広田M『妖怪化してても一発も入れられねぇ。心が読まれてるみたいだ』
広田「手荒にい」

風斗「(食い入るように)どういう状況だよ」 
 ・風斗、かまいたちを広田に食らわせる
 
 ・広田、少し後ろに吹き飛ぶ
風斗「大地打か」
風斗M『あっちもやばいが、こっちの妖気がすごいやつはなんだ?』

 ・洋太、風斗にすばやく襲い掛かる
 ・風斗、よけながら洋太の顔を見る
風斗「(驚きながら)お前、昨日のガキじゃねえか」

 ・風斗、バランスを崩す
 ・広田、よろけている風斗に槌で横殴りする
 ・風斗、槌が当たり公園の遊具まで吹き飛ぶ
 ・風斗、腹部を手で触り腹部から血が出ていることを確認し舌打ちをする
風斗M『妖怪化をコントロールできてねえみたいだ。あいつ止められるのか? あっちも何とかして。ガキどもも逃がさなきゃ。まずどうすりゃ』

 ・洋太、広田に蹴りを入れる
 ・広田、耐えて洋太の身体を手で摑まえる
広田「捕まえた!」

風斗「おい、待て」
 ・広田、洋太を横腹に抱えて、走って公園から出ようとする

広田「よっしゃ!これで俺も昇格っと」 
 ・広田、上を向いて大笑いしている

 ・木櫛、空から雷を降らせ、逃げている広田と抱えられている洋太に食らわせる
 ・木櫛、ゆっくりと公園に歩いてきて姿を現す
木櫛「情けないね、次期小隊長が」

 ・風斗、よろよろしながら立ち上がる
風斗「隊長!」

 ・洋太、気を失って倒れている
木櫛「すごい妖気を感じたから来たんだけど、この子か」
風斗「あの、ちょっとやりすぎじゃ?」
木櫛「大丈夫、妖人は頑丈だから」
風斗「妖人…」
木櫛「こいつは僕が連れてくから後は風斗に任せるね」
風斗「えっ、俺ケガしてるんすけど」
木櫛「大丈夫、妖人って頑丈だから」
 ・風斗、不満そうな表情をする

⑬〇同、10分後
 ・洋太、目を覚ます
 ・風斗、洋太の横で立っている
 ・蓮真や雄二ら、遠巻きに洋太と風斗を見ている
洋太「…俺、人間じゃない」
風斗「親から聞いて事なかったのか?」
洋太「施設育ちだから、母ちゃんも父ちゃんもそもそも知らなかったんだと思う」
風斗「そうか」
洋太「ねえ、俺これからどうなるの? 何にも変わらないよね?」
風斗「…残念だが、ここを離れて俺たちの村に来てもらう。そうじゃなきゃ、お前の周囲の人にもお前自身にも危険が及ぶ。強力な妖人を一人でも多く求めるやつらは、お前を手に入れるためにどんな手も使うだろう」
洋太「じゃあ母ちゃんと父ちゃんも一緒に」
風斗「無理だ。人間は軍の敷地には入れない。それに万が一入れても、人間であることを理由に差別を受けて辛い人生を送ることになる」
 
 ・洋太、横たわる
洋太「…あん時は7歳だったなあ。俺のいた施設は、園長が虐待で捕まるくらいくそみたいなとこだったんだ。毎日意味も分かんないまま生きてた。そんな時に母ちゃんと父ちゃんが来て、一緒に生きようって言ってくれた。ここに来てから友達もできて毎日夢みたいで…。そんである時、テレビで牙楯軍の軍人が”みんなの生活を守る”って言ってたんだ。俺もこの生活を一生守るために命を懸けたいと思った」
 
 ・洋太、泣く
洋太「でもさそれは、この幸せな生活がこれからも続くって思ってたからなんだよな。もう意味ないじゃん。なんで俺っていっつもこうなんだろう? 幸せになれないのかな?」
 
 ・雄二や蓮真ら、近寄ってくる
雄二「そんなはずない! 危険も顧みず助けに行く君が幸せにならないなんておかしいじゃないか」
蓮真「俺の親友は幸せにならないといけないのに」
 ・みんなで大号泣する
風斗「完全にこいつらのこと忘れてたっけ。こういうとこが隊長に…」
 
 ・洋太、しばらく泣いた後、涙を拭き立ち上がって風太の方を見る
洋太「(真剣な顔で)あのさ、一つお願いがあるんだけど」
 
 ・洋太、風斗に手招きをして耳打ちする
 ・風斗、目を丸くし驚いた表情をする
 ・風斗、考えて頭を抱えている
風斗「(渋る様子で)できなくもないが」
洋太「(真っ直ぐな感じで)お願い」

 ・風斗、はーっとため息をつく
風斗「分かった。明日の夜までに、準備を整えておく」

 ・風斗、洋太の頭に手を置く
風斗「安心しろ。それまで守り切ってやる」


 
★洋太の日常
⑭〇家、リビング(次の日の朝)
洋太「おはよう!」

 ・洋太、朝ご飯をバクバク食べる
 ・幸代、びっくりしている
 ・浩一、ニコニコと洋太を見ている

⑮〇教室
・洋太、授業を聞きながらノートを取っている

⑯〇教室(休み時間) 
・洋太と蓮真、笑いながら談笑している

⑰〇公園(放課後)
・洋太と蓮真と雄二と良樹、サッカーをしている

⑱〇家、リビング(夕飯後)
・机の上には食器が置かれている
・洋太、手を合わせている
洋太「ごちそうさまでした!おなかいっぱい」

 ・幸代、洋太の前に座り微笑みを浮かべている
 ・浩一、マカロンを皿に並べて机に持ってくる
浩一「新作ができたから、試食してよ」
洋太「うめーーーーー!!!」
浩一「でしょ?結構自信作なんだ」

 ・浩一、間を置く
浩一「最近なんか落ち込んでたみたいだけど、また元気になってくれてよかった」
 
 ・洋太、マカロンに伸ばす手を止める
幸代「何があったのか話してくれないの?」

 ・洋太、下を向いて黙る
幸代「話したくないならそれでいいけどさ、一つだけ覚えといて」

 ・幸代、洋太の頬っぺたを手で包み洋太の目線を上に上げさせる
幸代「母ちゃんと父ちゃんは、洋太と一緒にいられることが幸せなんだよ」
浩一「洋太がこの家に来てくれたことが、本当に嬉しいんだ。だから立派になろうとかなんて思わなくていいからね」
洋太「…分かってるよ! もうお風呂入るから」

 ・洋太、リビングを出る
 ・浩一と幸代、顔を見合わせて嬉しそうに笑う


⑲〇洋太家、屋根の上
 ・風斗と洋太と隠田榎吉、下(住宅街の景色)を見ている
洋太「今日、何人俺を捕まえに来てた?」
風斗「15。隊総出でなんとか」
洋太「そっか。ありがとう」
風斗「(ぶっきらぼうに)別に」

 ・風斗、横にいる隠田に手を添えて洋太に紹介する
風斗「この人は神隠しの隠田さん。お前の願いを叶えてくれる」

 ・隠田、手を振っている
隠田「こんばんは。洋太君」

 ・洋太、軽く一礼する
隠田「(不安そうに)ほんとにいいの? 僕、みんなの記憶から君のこと隠しちゃうんだよ?」
洋太「うん、友達と家族は俺がいなくなったら悲しむじゃん。だったら最初から俺と出会わなかったことにすればいい、って思ったんだ。俺のこと全部忘れて今まで通りに生きていってくれればいい」
隠田「…分かった」

 ・隠田、目を閉じて手を合わせる
 ・光の粒が町に散らばっていく(洋太に関係した一人ずつに散らばっていくイメージ)
 ・洋太、口をかみしめて見ている
 ・洋太、大声で叫ぶ
洋太「大丈夫! みんなが覚えてなくても俺が全部覚えているから。一緒に鍛錬したことも、一緒にお菓子いっぱい食べたことも、たっくさん愛してくれたことも。俺の幸せは、”みんながこのまま笑って生きていってくれること”。みんなの生活を守れるように、どんな悪もやっつけられるくらい俺は強くなる。一緒にいられなくたって、みんなの幸せを一番に思ってるから」

 ・洋太、笑顔を浮かべながら泣いている
 ・風斗、洋太を一瞥して、洋太の頭をガシガシと撫でる
ナレーション【強くなる、その想いがある限り彼らはずっと繋がっている】


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