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元天才少年起業家が現代最強忍者と組んで忍者業界で市場シェアNo.1を目指す話【2話】 

本編【2話】決断

①〇路地裏
 ・初芽、石川のお金を盗んだ青年を詰めている
初芽「石川さんのお金、返しなさい」
 
 ・青年、堪忍したように土下座をして謝る
青年「ごめんなさいっ」
 
 ・初芽、ため息をつきながら青年に近付くと、青年が隠し持っていた手裏剣で攻撃をしてくる
 ・初芽、攻撃を避けて青年を羽交い絞めする
初芽「出し抜こうなんて10年早いわ。(物憂げに)石川さん、大丈夫かな?」

②〇人気のない路地
 ・石川は地面に座り込んでいて、福部は跪いている
福部「拙者のビジネスパートナーになって、会社を忍者業界トップシェアの大企業にしてほしいでござる」
石川「忍者? ヘッドハンティング? 話がよく…」

 ・福部、石川と目を合わす
福部「忍者は今でも存在するでござるよ」
石川「見たことないですけど」
福部「忍者にとって一般人に紛れることはなんてことない。それに」
 
 ・福部、下を指さす
福部「普段は下にいるでござる」
石川「下?」
福部「地下都市でござる」

石川「(信じられない感じで)そんなの……」
 ・福部、石川に顔を近づける
福部「とにかく、石川殿は拙者と忍者業界トップを狙ってくれるでござるか?」
石川「状況が……。それにもしその話が本当だとしても、僕には借金があるので」
福部「なるほど。そのことが気掛かりなのですな。それなら今から借金元に話を付けに行くでござる」
石川「話を付けるって?」
 
 ・福部、親指を立てている
福部「まあ、任せるでござる。そこの男、案内してくれるか?」
 ・福部、借金取りAに話しかける
 ・石川、顔が青ざめている


③〇組の建物、エントランス
 ・借金取りA、ドアを開ける
 ・20人以上の組員たち、銃や鈍器をもって待ち構えている
 ・石川は足が震えているが、福部は堂々としている
借金取りB「(笑って)さっきお前たちがぐちぐち話してるときに連絡しといたんだよ」

石川「(こそっと)福部さん、やっぱ逃げましょう」
福部「なぜでござるか?」
石川「リンチに遭って終わりです。ってか、すでに終わってます」
借金取りA「おい、逃げようなんて考えてないだろうな? きっちりけじめつけてもらうぞ」

 ・福部、大きく息を吸って大きな声で言う
福部「拙者は戦うつもりはない。ただ組長と話しにきたでござる。渡曾組長、出てきてほしいでござる」

 ・組員たち、全員笑い出す
借金取りB「自分の立場が分かってないみたいだな」

 ・組員たち、一斉に襲い掛かる
福部「まあよい。石川殿、拙者の実力をしかとご覧に入れよう」
石川「えっ」

 ・福部、身一つで戦う
 ・銃の弾丸や鉄パイプを素早く避けて、蹴りや殴打をいれる

 ・福部、戦いながら石川に手を振る
福部「石川殿、見てるでござるか」
石川「(絶叫する感じで)あー、やめてーー!!」

 ・借金取りA、福部に蹴られて石川の横に吹っ飛ばされる
 ・石川、それにひいっと怯える
借金取りA「聞いたことがある。服部半蔵と同等の”天才”が現代にもいる、と。そして、そいつはダサい語尾で話す、と」

 ・福部、借金取りAをもう一回蹴る
福部「(むかついた様子で)”ござる”は拙者のアイデンティティでござる」

 ・福部、石川にウインクをする
石川M『(青ざめながら)どんどん事が大きくなってる。こんな組に反抗するようなことをしたらますます……よし、逃げよう』

 ・石川、出口に向かって出ようとすると、初芽が入って来る
初芽「当ったり! やっぱここか」
石川「えっ篠崎さん!?」

 ・初芽、石川に向かって微笑んでピースをしている
石川「なんでここに......ここ危ないから離れた方がいいですよ」
初芽「(得意そうに)大丈夫、私頑丈だから。石川さんは優しいですね」
石川「でも...…」
初芽「(淡々と)それにお兄ちゃんはこんなの楽勝だから」
石川「(すごく驚く)お兄ちゃん!?」
初芽「うん。そっか、篠崎は仮名だし気付かないか」
石川「(独り言のように)てっきり付き合ってるのかと」

 ・初芽、噴き出して笑う
初芽「ありえない、あんな脳筋」

 ・石川、へらへらと嬉しそうに笑う
初芽「……(しょんぼりして)実は私が石川さんのこと教えたんです。巻き込んじゃってごめんなさい」
石川「なんで僕なんか」
初芽「店長に秘密で店内の配置をたまに変えてたでしょ?」

 ・石川、ギクッとして、その反応を見た初芽が微笑む
初芽「そうする度、絶対に売上が上がるから、気になって石川さんのこと調べたんです。そしたら、少年天才起業家って出てきて、今でもその実力は衰えてないんだなって確信しました」
石川「僕なんて、そんな」

 ・初芽、石川の頬っぺたをむぎゅっと手で挟む
初芽「”僕なんか”じゃない! 私は石川さんがいいなって思ったの!」
石川「ふぁい」

 ・初芽、ふふっと笑う
初芽「提案、前向きに考えてくれたら嬉しいです」

 ・初芽、取り返した10万円を石川に渡してウインクをして外に素早く出ていく
石川M『石川さんがいい』
 ・石川、ニヤニヤする

石川M『でも僕は篠崎さんが思ってるような人間じゃないから』

④〇同
福部「よし、これで組長のところに行ける」

 ・石川、福部に引いている
福部「(ぼそっと)そうだ。(しらじらしく)いつもは刀や手裏剣を使うから、もっと強いでござるよ」
石川「あんな人数を短時間で……(切羽詰まったように)ああ、僕はどうすれば」
 ・福部、石川の肩に手を置く
福部「拙者のビジネスパートナーになればいいでござる」

石川M『篠崎さん、ごめんなさい。逃げようと思います』


⑤〇組長室(二階)
 ・渡曾(組長)、椅子に座って頬杖をついている
 ・石川、福部に無理やり腕を組まれて部屋まで連れて来られる

 ・石川、渡曾に怯えて福部の斜め後ろに立つ
福部「初めまして、渡會組長」
渡會「全員やったのか?」
福部「殺してはないでござるよ」
 ・渡曾、ふっと鼻で笑って石川を見る
渡會「それでうちの債務者と一緒に来て、何の要件だ?」
福部「石川殿を貸してほしい」
渡會「貸す?」
福部「ああ、会社の経営の指揮を執ってもらおうと思っているでござる」
渡會「ふっ、お前は見る目がないな。こいつには何の才能も価値も根性もないぞ」

 ・石川、下を向く
 ・福部、むっとして拳を握る
渡曾「とは言っても、こいつはわしらの大事な”お客様”だ。はいどうぞ、とは言えないな」
福部「今の借金は300万ほど。そしたら、一年後1000万にして返す」
渡會「おいおい、うちは十一だぞ。それに一年間も定期的な入金がないことになるんだ。(威圧的に)3000万だ」
福部「(間髪入れずに)承知したでござる」
石川「えっ?」

 ・福部、石川の方にくるっと振り返る
福部「石川殿、最初の利益3000万までは全てお主に渡そう。その後の売上もたっくさん持っていっていい。拙者に力を貸してくれないか?」

 ・石川、少し間を置いて下を向きながら弱弱しく話し出す
石川「僕なんか無理です」
福部「(真剣に)自分なんて何をやっても成功するわけないって思ってしまうでござるか?」

 ・石川、過去のことを思い出しながら話す
石川「起業した時、辛い現状から抜け出せたらって一生懸命頑張りました。でも大人たちに騙されて、元通りになって……僕は結局はこうなる人間なんだ、人に利用される人間なんだって思ってしまいます」

福部「……拙者は裏切らないでござる。(優しく)なぜなら、拙者も裏切られる痛みを知ってるから」
 ・福部、服をめくって体にある数々の痛々しい傷を見せる
福部「部下たちに裏切られ、父から引き継いだ会社を手放したでござる。5年前に起業したはいいものの、経営の素質が全くなく売上ゼロでござる」

 ・福部、嬉しそうに笑い、石川を指さす
福部「だが拙者は天才と出会えたラッキーボーイだから、石川殿の運の悪さは問題なし。石川殿はお主を信頼している拙者を信じればいいでござる」
 ・福部、得意げに胸を叩く

石川「なんでそこまで僕を」
福部「絶望を味わってもなお人に親切にし、辛い現実に真摯に向き合っている。その生き様がかっこいいからでござる。拙者はそういう人と一緒に頑張りたいと思う」

 ・福部、ハッとし顔を上げて福部を見る
 ・福部、爽やかで屈託のない微笑みを浮かべている

石川M『僕はその瞬間、ある言葉を思い浮かべていた。一番大切なのは、心の声や直感に従う勇気を持つこと(スティーブ・ジョブズ)。もしそれが正しいのなら』

石川「(思わず口から言葉が出る感じ)福部さん、やりましょう」

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