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君の不幸は蜜の味3話【創作大賞 漫画原作部門】

本編

〇道
 ・大、幸の後に付いて歩いている
大「(疑っている様子で)分かった、って本当かよ」
幸「本当です。賢さん?」

 ・賢(事務所にいる)、イヤホンから話す
賢「はーい」
幸「犯人は配信者のZさんだと思います」
賢「了解、じゃあ彼を呼び出すから、その場所に行ってくれる?」

 ・幸と大のスマホに地図が贈られる
大「この女のことを信じんのか?」
賢「そうだね。信じるね」
大「お前もマスターもなんでそこまで……」
幸「人望ですかね」

 ・大、呆れる


〇倉庫前
 ・幸と大、携帯で場所を確認して立っている
幸「ここですね」

 ・幸、扉を開ける


〇倉庫内
 ・Z(27歳)、キョロキョロして肩をすくめて立っている
 ・大と幸、Zに近付いていく
 ・幸が大より少し前にいる

Z「俺の秘密をばらまくってどういう意味だ?」

 ・幸、大の方に身体を向ける
幸「大くん、問題です。人の心はどこにあると思いますか?」
大「は? 何ふざけてんだ」
幸「どこにあると思います?」
 ・大、無視する
幸「どこ?」
 ・大、胸に手を当てる

幸「正解です。不幸が積もりに積もった人は、そこから甘いの蜜があふれ出してきます」
大「蜜?」

 ・幸、舌を出す
幸「そう、それを私は吸ってるんです。そしてその不幸を味わうことで記憶を見ることができます。だから胸と直に触れ合う下着をお願いしたんですけど……まあ家だとノーブラ派の人も多いからいいんですけど」

 ・大、バツが悪そうにする
賢(イヤホン)「どんな記憶を見たの?」


<回想>
〇タクシー
 ・A子、ZとコラボをしてYoutubeの依頼をDMで受け、画面をマネージャー(28歳)に見せてる
マネージャー「A子、Zさんがコラボしたいって」
A子「えっ、あのZさん!? 私と?」
マネージャー「うん、同じ事務所の後輩の夢を応援したいって!」

 ・A子とマネージャー、抱き合ってる
A子「やった! これで爪痕残せば、目標の登録者100万人も、夢じゃない!」

 ・A子、笑っている

〇A子の家
A子「コラボありがとうございました!」
Z「いいんだよ。事務所のかわいい後輩だし」

 ・Z、A子をじっと見つめてA子が照れている
Z「それにA子ちゃんはこれから伸びるだろうしお互い様だよ」
A子「ありがとうございます。あっ、お湯湧いたみたい」
 ・A子、キッチンに行き、コーヒーを入れている

 ・Z、盗聴器をA子が見ていない時に机の下、小型カメラを花瓶の後ろに付ける

〇同
 ・A子、スマホの通知を見る
マネージャーメッセージ『A子の部屋、隠し撮りされてるみたい。ネットで広まってる』

 ・A子、ネットを見ると下着姿のA子の写真がある
A子「なにこれ……どこ」
 ・A子、物を落として部屋を荒らす

 ・A子、花瓶を落として小型カメラを見つけぶっ壊し、泣き崩れる

〇会議室
 ・A子と社長(50歳)とマネージャー、向かい合って座っている
A子「Zさん、あなたが犯人って分かってます」

 ・A子、携帯を三人に見せる
A子「ペットカメラに写ってました。訴えます」
社長「いいけどさ君、そんなお金あるの? 彼の方が発信力も信頼もある。強いバックもいる。世間はどっちを信じるかな?」

マネージャー「A子、もういいじゃん。下着くらいさ」
 ・A子、声を張り上げる
A子「下着ぐらい? え、私のことなんだと思ってるの?」

社長「まあ君の登録者数、伸びてるじゃん。有名になりたくて始めたんでしょ? 良かったじゃん」

 ・A子、絶望の顔をして、Zはニヤッと笑っている

〇A子の部屋(夜中)
 ・A子、電気もつけずに布団にくるまってスマホを見ている
ネットコメント1「このオフ感マジエロい」
ネットコメント2「これきっかけで堕ちてくんないかなw」
ネットコメント3「隠し撮りしかむり」
ネットコメント4「チャンネル登録してきたわら」

 ・A子、スマホを投げて声を出して泣く

〇同(夕方)
A子「(細々という感じ)Z、絶対に許さない」
 ・A子、立ち上がって部屋着から黒の服に着替える
<回想終了>

Z「証拠は?」
 ・スピーカーから、賢の声が流れる

〇Zの部屋
 ・賢、床に張り付いて注視している
賢「こいつの家に血痕残ってたぜ」

〇倉庫の中
幸「だ、そうですよ。合ってて良かったです」
大「確証なかったのかよ!?」
幸「服を着替えていたので、犯行現場までは見れないんです」

 ・大、呆れる
賢(スピーカー)「まあ、アンチヒーローに証拠とかいらないでしょ」
大「(イラっとした様子で)俺はそういうの気にする派だ」

Z「アンチヒーロー。昔の事件だけを扱うんじゃ……」
大「残念ながら、規模拡大だ」

 ・Z、大の足にしがみつく
Z「俺は、俺は連続殺人犯でもなくてたった一人殺しただけです。悪いと思ってるし。助けてください」
賢(スピーカー)「殺しだけねえ。こいつ他の女の子の動画もいっぱいばらまいてるぜ。泣いてる女の子はまだまだいるんじゃない?」

 ・幸、跪いているZに目線を合わせる
幸「Zさん、A子さんの一番大きな不幸は何か分かりますか? すれ違った人、横に座った人、レジ対応する人……そんな生活のちょっとした人だとしても、あの写真見たかもしれないと思ったら怖くて気持ち悪くて、外を歩くことができなくなりました。そののち、カメラの向こうの視聴者をも恐れ、撮影ができなくなりました。彼女の不幸は、夢をあきらめざるをえなったことです」

大「なんで盗撮なんてしたんだ?」
Z「金が欲しくて……」

大「金? いっぱい持ってるだろ。しょんないやつだな」
Z「俺よりも金持ってるやつなんてたくさんいるんです。キラキラした街じゃ俺なんてまだまだなんで、それで上に行きたくて」

大「欲が尽きないんだな。俺がお前ほど金持ってたら、もっと幸せだろうにな」
幸「本当に?」
 ・大、幸を睨む

 ・Z、土下座している
Z「申し訳なかったです」

大「殺した理由は揉みあいでって感じか?」
Z「あいつがカッターを出してきてそれで……しょうがなかったんです。だからどうか許してください」
 ・Z、頭を床にこすりつける

 ・大、左手に手袋をはめる
大「しょうがない、ねえ。じゃあお前と今から揉みあいになって果てに殺すことになってもしょうがないよな」
Z「許してください」

大「謝罪も反省も俺には関係ない。こっちは雇われの身だから仕事をするだけだ」
Z「ごめんなさい、ごめんなさい」

 ・大、Zの首を片手で絞める

〇倉庫の中
 ・戸川と警察官たち、扉を開けてZが死んでいるのを見つける
 ・ホームページを見ている
 ・ホームページには戦隊もののお面を被った大がZの死体とともにピースをした写真と、『みんなの正義の味方だよーん』のメッセージがある
近田「やっぱりアンチヒーローは本気だったんだ」
 ・戸川、床を蹴る
戸川「くそっ。アンチヒーロー、犯人はまだこの辺りにいるかもしれない」
 ・警察官たち、探す

戸川「絶対に僕が許さない。正体を明かして、罪を償ってもらう」

〇倉庫の屋根
 ・大、寝そべっている
 ・幸、座っていて息を大きく吸い込む
幸「被害者に同情してるんですか?」
大「してねえ」
幸「(疑ってるように)ふーん?」
大「……不幸とか悲しみってのはそいつにしか分かんねえし、そいつのもんだ。誰かが勝手に理解したつもりになって入りこむもんじゃねえ。だから同情なんてしない」

 ・幸、大の胸に手を当てる
幸「暴論な気も優しい気もする。じゃあこの甘い匂いって何ですか?」
 ・幸、大の服を脱がせようとする

 ・大、幸を手で振りほどく
幸「じっとしてください。楽になりますから」

 ・大、じっとしてシャツを脱がされる
 ・幸、大の鎖骨下を舐める

幸「大くんの不幸は、一番おいしいけど不幸の理由が見えないんです」
大「俺の不幸の元が分かんないってことか?」
幸「そうです。でも心配しないでください。私が大くんを幸せにしてあげます」
 ・大、ハッとする

 ・幸、大を引っ張って屋上から転げ落ちようとする
 ・大、幸に覆いかぶさる形で転げ落ちるのを制止する

 ・幸、大の顔を撫でる
幸「私があなたの不幸を受け止めてあげます。だから大くんは強くなろうとなんてしなくていいです。ただ私を生かすことを考えて、優しい大くんのままでいてくれればいい。あなたの弱さは私を生かすから」

 ・幸、微笑んでから立ち上がって大に手を伸ばす
幸「だから幸せになるために、まずは最上の不幸を探しに行きましょう、私と一緒に」

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