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ショートショート100:新年を迎えられなかった人たち

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 元日の朝、僕は親戚の家に遊びに来た。

 新年の挨拶を言う代わりにお年玉をたくさんもらって、それを持って親戚の大学生のお兄さんと一緒に初詣に行くことにした。

 お年玉で神社の屋台巡りをすることを楽しみにしながら歩いていると、僕は空に妙なものが浮かんでいるのに気がついた。

 それは巨大なシャボン玉のようなもので、中には人がいた。たまに中年くらいの人もいたけれど、ほとんどが中学生から大学生くらいの若い人がほとんどだった。

 僕はその変なシャボン玉を見上げて親戚のお兄さんに聞いた。

「あれなに?」

 親戚のお兄さんは頭上を見上げ、ふっとばかにするように笑った。

「年越しの瞬間にジャンプするっていう遊びがあるのを知ってる?」

「しらない」

「そういう遊びがあるんだ。そうするとね年明けに友達と集まって『どこで年越しした?』っていう話になったときに、『年越しの瞬間は地球にいなかった!』言い張ることができるんだ。バカの遊びだよ」

「へえ」

「ただね本当はとても危険な遊びなんだ。一歩間違えると今見てるシャボン玉みたいになってしまう。去年と今年の間に取り残されてしまうんだ」

「ふーん。あの人たちはどうなるの?」

「あの人たちは去年でも今年でもないところにずーっと浮かび続けているんだよ。だから絶対やっちゃいけないよ」

 僕は「わかった」と頷き、お兄さんと指切りげんまんをした。


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