桜田一門

いろいろ書きます。

桜田一門

いろいろ書きます。

マガジン

  • ショートショート

    短編や長編の草案も兼ねた、300〜3000文字くらいのショートショート集です。ナンバリングが100いくまではとりあえず毎日更新。100いったので更新停止。気が向いたら再開。

最近の記事

“ひどい“と噂の映画『逃走中 THE MOVIE』を見て学んだこと

はじめに諸事情により『逃走中』の映画を観る必要が出たので、観てきました。 TV版の『逃走中』は小〜中学生のころによく見てました。が最近はめっきりで、なので『逃走中』のファンというわけではないです。主役の6人を演じたJO1やFANTASTICSのファンでもないです。 LDH出演作と聞くと『High & Low』という化け物コンテンツが過去にあるのでどうしても一抹の期待をしてしまう脳みそになっているのですが、それを踏まえても今回の『逃走中』には興味がありませんでした。 が

    • 『死亡遊戯で飯を食う。』が性癖に刺さっている。

      可愛い女の子が惨たらしく死ぬ話が好きです。 人格を疑われるからあんまり声を大にして言えないんだけどそういう趣味がある。少し前になるけど『呪術廻戦』の渋谷駅でのサイコロとか『フィアー・ストリート Part 1: 1994』の電動スライサーとかそういうやつ。 そんな中で出会ったのが記事タイトルにもある『死亡遊戯で飯を食う。』っていうMF文庫から出てるシリーズ。 最初にタイトルを聞いたのは1、2年くらい前。神保町の隅にある神保町らしい薄暗い照明のカフェで、生まれて初めて出版社

      • ショートショート100:新年を迎えられなかった人たち

        「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」  元日の朝、僕は親戚の家に遊びに来た。  新年の挨拶を言う代わりにお年玉をたくさんもらって、それを持って親戚の大学生のお兄さんと一緒に初詣に行くことにした。  お年玉で神社の屋台巡りをすることを楽しみにしながら歩いていると、僕は空に妙なものが浮かんでいるのに気がついた。  それは巨大なシャボン玉のようなもので、中には人がいた。たまに中年くらいの人もいたけれど、ほとんどが中学生から大学生くらいの若い人がほと

        • ショートショート99:よいお年をお迎えください

           そのオフィスビルの一階には案内用の受付ロボットが配備されていた。  動物をモチーフにした丸っこいフォルムのそのロボットは来客応対や入館証発行などの機械的な作業のほかに、挨拶などのコミュニケーション昨日も搭載されていた。  出社してきた人たちに「おはようございます」と声をかけ、退社する人たちには「おつかれさまでした」と声をかける。  内容は時期によっても代わり10月末ごろになると「ハッピーハロウィーン」「トリック・オア・トリート」と言ったり、12月24日と25日には「メ

        マガジン

        • ショートショート
          106本

        記事

          ショートショート98:困ったときに吹く笛

           旅人は道中の酒場で大魔法使いの女と仲良くなった。  一晩飲み明かした朝。先を急ぐという女はフラフラの足で酒場を出ていこうとした際に、奇妙な形の笛を旅人に渡した。 「これは信頼の証。困ったときに吹いてね」  吹くとどうなるのか、ということまでは教えてくれなかった。しかし大魔道士のくれたものだ。さぞ有効な使い道があることだろう。旅人はそう思い、肌身離さず笛を持っておくことにした。  旅人は酒場を出て森へ入った。深い森の中にはたくさんの魔物が息づいていた。旅人はほうぼうで集

          ショートショート98:困ったときに吹く笛

          ショートショート97-②:友情努力勝利!

          「ちょっと来てくれる?」  案内されたのは二階の角にある部屋だった。扉のところには木製のプレートが掛かっていて『ひろたか』と記してある。弟さんの部屋だという。  お姉さんはノックもなく扉を開け、真っ暗な部屋に入って行く。  こんな夜中にいいのだろうかと思いつつ俺はあとに続いた。照明がつけられて六畳ほどの部屋がぱっと明るくなると、ノックの必要性などなかったのだと分かった。  ひんやりとした部屋の中には誰もいなかった。  入って右手には丁寧にメーキングされたベッドがあり

          ショートショート97-②:友情努力勝利!

          ショートショート97-①:友情努力勝利!

           俺の一週間は友情、努力、勝利から始まる。  資格関連の講義を受けるために後期の毎週月曜日を友人のいない中野のキャンパスで過ごさなければいない俺にとって、唯一無二の戦友は少年ジャンプだった。  電車に乗る前に駅前のコンビニで購入し、いつもぎりぎり一つだけ空いている席に腰を落ち着けて紙面を開く。大学の最寄りまでの二〇分間、友情と努力と勝利の世界に没頭する。  そんな俺の熱血ルーティーンに突如としてその女性が現れたのは、十一月の末のことだった。 「ちょっといい?」  突

          ショートショート97-①:友情努力勝利!

          ショートショート96:大怪盗の置き手紙

          『明日の午前0時きっかりに、あなたのお宝を奪いに参上いたします 怪盗・石川キッド3世』  ある大富豪の家に稀代の大怪盗から予告状が届いた。  大怪盗が狙っているのはその大富豪が自宅にコレクションした世界各国の美術品たち。総額100億円にも及ぶそれらは大富豪の人生そのものだった。  大富豪はすぐさま親しい警察幹部と警備会社の経営者に連絡を取り、私人宅に対するものとしては異例の体制で来る明朝0時に備えた。 「コレクションルームに通じる扉は俺達がいるこれしかない」  大

          ショートショート96:大怪盗の置き手紙

          ショートショート95:ミスの天才

           私の部署にはどれだけミスをしても異動にならない不思議な社員がいる。  最近彼の世話役を仰せつかった私は、噂には聞いていたものの、そのミスの多さに改めて驚かされた。彼は最低でも1日1回はミスをする。細かいミスから大きなミスまで、それはそれはバラエティ豊かにいろいろなことを間違える。  彼は注意力散漫でもなければ、反省ない性格というわけでもない。むしろその逆だ。一度したミスは絶対に起こさない。にも関わらずミスばかりなのは毎回毎回新しい種類のミスばかりをするからだ。  しか

          ショートショート95:ミスの天才

          ショートショート94:サンタの正体

           クリスマスも間近に迫った12月のある日のこと。  田中くんがいきなり僕の机の方にやってきて言った。 「山元、サンタさんの正体って知ってるか?」 「……サンタさんの正体?」  僕は首を傾げて問い返す。 「サンタさんはサンタさんじゃないの?」  すると田中くんは一緒にいた上田くんたちと一緒に口元を抑えてぷぷーっと含み笑いをした。 「山元、もう高学年なんだからさ? いつまでも夢見るのはやめようぜ?」 「どういうこと?」 「サンタさんが実在するわけないじゃん?」

          ショートショート94:サンタの正体

          ショートショート93:七面鳥のクリスマス

           七面鳥のクリスマスは実に賑やかだ。    大きなログハウスに親戚一同が集まって、まずはみんなでプレゼント交換。中の見えない色とりどりの豪華なリボンが巻かれた箱を、みんなで輪になりぐるぐる回す。音楽に合わせて歌いながらテンポよく。誰のが自分に回ってくるだろう。どんなのが自分に回ってくるだろう。ワクワクでみんなの羽毛が飛び散る。    プレゼント交換が終わったら、もらったものはひとまずツリーの下において、次はお楽しみのディナータイム。赤々燃える暖炉の前に大きなテーブルをおいて、

          ショートショート93:七面鳥のクリスマス

          ショートショート92-②:ブンリシコウ

          「できたか?」 「プロットは出来た。原稿も三分の一くらいは」  翌日の夕方。  大学の講義を終えて自室に戻ってきた湯川が、ラップトップに向き合っていた僕に声を書けてきた。僕はキーボードを叩いてた指を止め、振り返る。首を捻ると凝り固まっていた関節が小気味よく音を立てた。 「どんな話になったんだ?」  湯川は背負っていたハンドバッグをベッドの上に放り、自らも身を投げ出すように腰を下ろした。スプリングが軋む。 「ジャンルとしては恋愛」 「恋愛?」  湯川は意外そうに

          ショートショート92-②:ブンリシコウ

          ショートショート92-①:ブンリシコウ

          「よし、消そう」  僕は一時間ほど迷った挙げ句、文書ファイルのゴミ箱ボタンにカーソルを持っていった。画面をにらみ、人差し指を高く上げ、思い切って右の右ボタンをクリックする。 ――この文書は変更されています。保存しますか?  警告文が表示される。僕はまたここでも悩む。五秒の空白。結局は『いいえ』をクリックした。こうして僕が一ヶ月かけて書いた文章は跡形もなく消滅した。  書いていたのは今月末、つまりは九月末に新人賞へ応募するはずだった小説。書いている途中から「何が面白いん

          ショートショート92-①:ブンリシコウ

          ショートショート91:ある日空から美少女が

           休日にふらりと出かけた街の片隅に、小さな神社を見つけた。    長い石段を登った丘の中腹。赤い鳥居が見えたので興味本位で登ってみれば、無数の御札べたべたと貼られた社があった。朽ちかけた緒と錆びかけた大鈴。年季の入った賽銭箱。古めかしさが逆にご利益のありそうな雰囲気を醸し出している。  社の横には木の看板が立っており、半分溶けかけた字で説明書きがされている。 「万能の社。これを見つけたあなたは超ラッキー。どんな願いも即日叶います」  社の雰囲気とはかけ離れたカジュアルな

          ショートショート91:ある日空から美少女が

          ショートショート90:無敵バリア

           少年はある朝目を覚ますと”無敵バリア”を手に入れていた。  無敵バリアは非常に便利な力だった。殴られたり蹴られたりする瞬間に  「無敵バリア、発動!」  と心のなかで思えば、見えない壁が目の前に現れて少年を守ってくれるのだ。無敵バリアは文字通り無敵で、パンチやキックは愚か、刃物や自動車などからも少年を守ってくれる。サッカーやバスケなどで使用すればディフェンスに邪魔されることなく敵陣まで難なく切り込める。雨の日に傘を指す必要もない。  少年はこの無敵バリアを駆使してク

          ショートショート90:無敵バリア

          ショートショート89:憂鬱な金曜日

           検索サービスとオンラインショッピング、そしてハードウェア開発で世界シェア1位を獲得している世界最大のIT企業は、そのオフィスの豪華さでもよく知られている。  完全無料の社員食堂に、最新マシンが揃うトレーニングジム、ワークアウト後にありがたいスパ、無料の映画館、ゲームコーナー、常時50%OFFで買い物ができるショッピングモール。さらにはほぼすべての従業員に専用の個室まで用意されている。従業員の多くは終業後に映画を楽しんだり、買い物を楽しんだりしたいがために効率よくタスクを片

          ショートショート89:憂鬱な金曜日