中学聖日記⑧ 〜中学生に手を出した話〜
お互い彼氏彼女がいない時期。
私たちは自由でした。
私は、マッチングアプリでマッチした男性と親友の域で仲良くなり、クリスマスはおそろコーデでディズニーに行きました。でも、それ以上の関係に発展することはありませんでした。
舜はとてもモテる男なので、イブもクリスマスも別の女の子にデートに誘われていました。それで軽々とついていくのが舜です。
クリスマスデートを承諾してもらえたら、告白はokも同然。ですがそこで潔く振るのも舜です。クリスマスは2日とも女の子を泣かせたと、武勇伝のように語っていました。
「ずっと好きな人がいるって言って断った」
「それって私のこと?」
「もちろん」
「その女の子も、舜の好きな人が22歳のおばさんだって知ったらブチギレるだろうな」
「ボロ負けだよ、魅力の桁が違う」
よくもこう女を喜ばせる言葉が出てくるなと。
だからモテるんだろうな、と悔しくなりました。でも単純な私はその言葉でにやりと笑い、喜んでしまうのでした。
そして年が明け、2020年になりました。
教員採用試験にも合格し、晴れて来年度は公務員になることが決まっている私。舜との関係はそろそろ断ち切らなければ…と思い始めていました。
「舜、最後に1回だけ会おうか」
その最後が本当の最後かはわからないけれど、大まかな括りで「学生同士」という関係で会うのは最後でした。
私たちは3月に、新宿に映画を観にいきました。坂口健太郎さんと永野芽郁さんの「仮面病棟」。
私と舜はふたりで歌舞伎町を歩きます。
そこで舜は「バイト先で煙草吸ってる」だの、「お酒もめちゃくちゃ飲んでる」(お酒は中3のときから飲んでいた)だの、明らかに悪い言葉を次々と発していきます。
「私煙草吸う人きらいだから」
「咲桜先生が嫌だって言ったらもちろんやめるよ、煙草なんかより咲桜先生の方が大切に決まってるじゃないですか」
「ふーん」
映画館では、キャラメルポップコーンのLサイズを注文。でも、映画に思った以上に集中してしまい、映画を観終わるころにはまだ半分以上のポップコーンが残っていました。
私はその後友人と高級焼肉を食べる予定を入れていたので、ポップコーンを舜に託して映画の感想を語り合いました。
そして、電車の発車時刻までルミネエストをぶらぶらとまわることにしました。
部活の卒業コンパで着るドレスを購入しなくてはいけなかったのでドレス屋さんに赴き、舜とドレスを選びました。
でも、全く参考にならない。
なぜかって?
全部「かわいい」「美しすぎる」「尊い」と、褒めちぎってくれるからです。
「ピンクが1番似合う、でも清楚系だから白も似合いますね、レッドは色気出るからなんか着てほしくない気もする」
どの言葉も最高の褒め言葉。
そして最終的には、「俺卒業式の日歌舞伎町で待ってていいですか、ドレス姿の先生見たい」とまで言い出す始末。
舜は相変わらず高校生の格好でしたが、こんな会話をしていたがゆえに周りからは明らかにカップルに見えていたでしょう。
私は正直、満更でもなかった。
彼氏として見れなかった舜が、少し大人になったと感じた瞬間でした。
舜は私が電車に乗るところまで送ってくれました。
「先生、これで最後だなんて言わないで。また落ち着いたら会ってください」
「社会人になったら落ち着くどころか休みなんてほぼ無いと思うけどね」
「でも約束ですよ」
そこで舜とは分かれました。
その日からというもの、舜はますます私に愛の言葉を重ねるようになりました。
「会ってから咲桜先生のことで頭がいっぱいで…会いたい、好きってなる」
「映画の主題歌聴くだけであああってなる」
「付き合って、いやもう結婚してください。自分にぞっこんな年下男子悪くなくない?」
「ライブでラブソング聴いたら脳裏をよぎるくらい好き」
などなど、LINEのトークから抜粋したら数えきれないほどの愛の言葉が溢れてきました。
どの言葉も、自己肯定感の低い私が生きていくために必要なビタミン剤でした。
舜が私の生活を変えた点はもう一つ。
舜は好きなアーティストのプレイリストを私に送信し、強制的に聴かせるのでした。マカロニえんぴつ、サイダーガール、マルシィ、ラックライフ、anica、Absolute area、reGretGirlなどなど。
西野カナが好きな私は、邦ロックに全く興味がなく、最初は半信半疑でした。
でも、舜は私の好みを分かった上でチョイスしてくれていたので、全てどストライク。すごいなあと関心するばかり。
少しずつ舜色に染められつつある私。
でも私たちの関係はまた、破綻してしまうことになるのでした。
続く💫
(もうそろそろ最終回になります!引き続きご愛読宜しくお願いします❤︎)