中学聖日記⑦ 〜中学生に手を出した話〜

一時的に縁を切っている間も、舜を見かけることはたくさんありました。
最寄駅の大型量販店の文房具売り場だったり、駅のホームだったり。
そもそも私が大学に行く時間帯に舜に会うということは、高校生になった舜が相当廃れた生活を送っていて、遅刻魔だった証拠でした。

舜は身長が180センチ近くあり、とても目立つのです。だから私は遠くからでも舜をすぐ見つけることができていました。
舜を見つけると、私はそそくさとその場を離れ、見つからないようにするのでした。

そして月日は流れ、私は大学4年生・舜は高校2年生になりました。


6月、舜からInstagramをフォローされました。そこで、舜の投稿から桜子の写真やストーリーが消えているのを発見。別れたんだ、と確信しました。その日が奇跡的に舜の誕生日だったこともあり、私は舜に「お誕生日おめでとう」とLINEを送信しました。
しかし一向に既読がつかないため、Instagramでメッセージを送ります。


「私のLINEブロックしてる?」
「元カノがしたと思う」
「お誕生日おめでとうって送ったんだけどね」
「えっ!ごめんなさい!ごめん!今解除する!」

というやりとりを経て、私たちはまた繋がり直すのでした。
桜子と別れた舜は、自由でした。
私のことを否定したことを謝罪し、改めて私のことを好きだと言い、私が無理だと言うと「じゃあ生徒から、先生のおもちゃになる。遊んで〜」と、勝手なことを言うようになっていました。
桜子にどんなことを吹き込まれたのでしょう。一人暮らしの桜子の家に入り浸る生活の末、純粋な舜はそこにはいませんでした。

でも、どんなに時間が経とうと私のことを忘れないその皮肉なまでの一途さが、私を余計複雑な気持ちにさせました。


そして9月。私は3年付き合った彼氏に浮気をされ別れていました。誕生日をお祝いしてくれる男もいないので、舜が私に誕生日プレゼントをあげたいと言い、会うことになりました。
約束をして会うのは、貝の御守りを渡したあの日以来。私も、なんとなく緊張していました。

その日のために、渋谷にある私のお気に入りのイタリアンを予約しました。とてもお洒落なお店なので、私は舜に「大人っぽい格好してきてね」と念を押しました。
身長が180センチあるがゆえ、見た目は元から大人っぽいですが、やはり服装で年齢は分かってしまいますから。

しかし、現れたのは
My hair is Bad のパーカーを着た、明らかに高校生の見た目の少年でした。
舜がバンド好きで、マイヘアのファンだということなんて百も承知。何せ、桜子とはマイヘア繋がりだったし。
ですが、「憧れの人との久しぶりのデートだ❤️」とか浮かれているくせに、好きなバンドのパーカーを着てくるか???
と、私は呆れてしまいました。

でも、行くしかありません。ふたりで、お洒落すぎるイタリアンに足を運ぶのでした。
そのお店は「君の名は」のモデルにもなったお店で、地下に池(表現が難しいのですが)があったり、とにかくビジュアルが美しいのです。
舜は終始緊張した面持ちで、気が気でないようでした。

「明日マイヘアのライブがあって、元カノも来るんだよね。会ったらどうしよう」

もう桜子のことは未練もなく、ただの「元カノ」になっていたようでした。
だから私も安心して、普通に会話を楽しみました。カルボナーラと、私のおすすめの白子のピザを食べ、心もお腹も満腹になりました。

お会計のとき、私が全額支払おうとすると舜もお金を出そうとしました。舜はいきなりステーキやセブンイレブンでバイトをしていて、月に20万ほど稼いでいるのです。
でも、なんとなく大人の意地でした。未成年に払わせるのは違うと感じました。

でも、舜も男らしさを見せたいようだったので、「じゃああとでタピオカ奢って」と言い、その場は私が支払いをしました。

そしてそのあと、渋谷のGong chaに行き、
私はブラックミルクティのタピオカ2倍を買ってもらいました。舜はハニーミルクティのタピオカ無し。

「俺タピオカ嫌いなんだよ〜」
と言いながらも、付き合ってくれる舜。
騒々しい渋谷の街を、タピオカを片手にふたりで歩くのは 若者言葉で言うと「エモい」。塾の合宿で出逢った先生と生徒が、ふたりで渋谷を歩いているなんて。側からみたら犯罪ともとれるし、誘拐と間違えられるかもしれない。
でも2人の中だけで築き上げた絆があるんだなとしみじみと感じるのでした。

その夜、誕生日プレゼントを貰ってないことに気がつきました。問い詰めると、「あっ…やらかした…」と。明らかに、プレゼントは用意していはかったご様子。おいおいとは思いましたが、別に気にはしませんでした。
桜子にゾッコンだった舜が、私のことを再び愛している。その事実だけで心が満たされていったのです。

私は舜に恋をしていたわけではありません。
恋愛感情は一切ありませんでした。
ただ単に、愛されていることへの執着心や、自尊感情中毒だったのだと思います。
どんなに好きと言われても舜と付き合いたいと思えませんでしたが、好きじゃないと言われると勝手に傷つく。
我ながら自己中心的だなあと思います。
でもそれが楽しかったのです。


ある日、私はセブンイレブンに行きました。
そこでアイスコーナーを5〜6分凝視し、あれでもないこれでもないと悩みながら、何も買わずに店を後にしました。
そのあと舜からLINEで「そんなに見つめてないでアイス一つくらい買いなよ」と送られてきました。

は!舜のバイト先のセブンイレブンってここだったの?!
恥ずかしいところを見られてしまった…。
舜はアイスコーナー前のレジに立ちながら、ずっと私を見ていたらしいです。声くらいかけてくれればいいのに。その時は顔から火が出そうな思いでした。アイスを食べたいのにお金がなくて買えない金欠女のように映ってしまったのが、恥ずかしくて仕方ありません。
でもそんな私も愛おしいと言ってくれた舜が優しくて、大好きだなと思いました。

まだまだ舜との尊い思い出は続きます。

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