中学聖日記⑤ 〜中学生に手を出した話〜

それから月日が経ち、1月になりました。
私の働く校舎でも、受験生がそわそわとしている時期でした。私立受験がそろそろ始まります。

私は学問の神様が祀られている、湯島天神へ。そこで、大切な生徒たちが全員第一志望に合格できるようにと祈り、絵馬を書きました。
あとは、御守りを買うだけ。
私の担当する生徒は3人。合格祈願のものではなく、かわいい貝のストラップ。幸運を呼ぶお守りということです。各々の生徒に似合いそうなカラーを思い出して、3つの御守りを手に取りました。

そこでふと、もうひとつの色が頭に浮かぶのです。透き通るような、愛に満ち溢れた、何色とも表現し難い綺麗な色。
私は無意識に、もうひとつの御守りを手にしていました。水色の貝殻でした。

そして御守りを購入した私は、あぁこの水色の御守りを渡さなきゃ、と理由をつけて舜に会おうとするのでした。

「受験もうすぐだね。御守りを渡したいから、今度塾のときに会える?」
と、LINEを入れます。
思えば、暫く連絡を取っていません。向こうもこちらも、お互いの存在を忘れていた頃でしょう。正確には、忘れようと必死だった頃。

「ありがとうございます!会いましょう」

暫くして、舜から返信がありました。
会うのには、“先生として"の理由があります。1人の女としてじゃない。自分の中でそう言い聞かせました。

そして数日後、塾の近くで舜と会いました。
舜は私のお陰で(と言っていた)苦手な英語を好きになり、努力を重ねて偏差値が65ほどになっていました。苦手な科目もまだあるようでしたが、合宿のときと比べて飛躍的な成長を見せていました。

私は貝守と、小さなお手紙を舜に手渡しました。お手紙といっても、受験への応援メッセージです。
自分の校舎の生徒には、寄せ書き形式で応援メッセージを書くことができる紙があります。舜も自分の校舎で渡されていますが、さすがに他校舎の私が書くことはリスクが大きいため避けました。
だからお手紙を渡したに過ぎません。好きだとか、大切だとか、危険なメッセージはなにひとつ書いていません。

いつの日にか私の中で、舜と会うことは
自分の中の罪悪感との闘いになっていたのでした。


舜は、都立の第一志望を直前でランクダウンしていました。結果、都立には合格し、私立は繰り上げ合格。都立の第一志望も受かるだろう、と思っていましたが、舜の中でも不安が大きかったのでしょう。最終的に舜は、大学付属の私立に進学することに決めました。

合格してからの解放的な時期、舜は私にたくさん連絡をしてきました。好きだとか、会いたいだとか、そんな言葉ばかりです。
私の心の中に何の変化があったのか、
舜のことを少し鬱陶しく思うようになっていました。

というのも、彼との年齢差が原因だったのだと思います。5歳下。大人になれば大したことない差なのかもしれないけれど、今は中学生。現実的でなさすぎるのです。
舜との未来が考えられなくて、私は舜に別れを告げることに決めました。

「舜、ごめんね。私はやっぱり、舜のことを生徒としてしか見られない。だから、恋愛対象にはならない。ごめん。」
(実際にはもっと長文で丁寧に送りました)

その返事は、「わかりました。でも、諦めないので。俺、先生以上に好きになれる女性いないと思うんです」でした。

なんでこんな女をここまで愛してくれるんだろう。これが愛なんだろうなあ、と涙が溢れました。でも、私は舜のことを好きになることはないと決断を下したのです。今更揺らぐわけにはいきませんでした。

でもこの時の私は、これから再び舜との波瀾万丈な関係が始まるとは思ってもいませんでした。

続く☕️

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