次はどの企業を買う?!ゲーム出自のDeNA・GREE・mixi・コロプラが買収したいサービスとは。過去5年間のM&A事例から読み解く!
基本情報
各社2016年度の売上高・営業利益は以下の通りです。調査対象企業の中では、mixiが売上高2,071億円・営業利益890億円と他3社を圧倒する数値となっています。モンスターストライクのインパクト、改めて恐るべし...!
子会社化件数
2013-2017年の4社の子会社化件数は合計13件です。これまで調査を進めてきたキャリア・プラットフォーム企業と比べると、子会社化件数はかなり少なくなっています。
事業観点で自社事業の方が投資対効果が良いこと、リソース観点でキャッシュ・買収後PMIに必要なリソースが不足しているということが少ない要因と考えられます。
企業別調査
1. DeNA
まずは、DeNAが今後目指す姿について触れます。
2016年実施の事業戦略説明会にて、2020年度までに主力のゲーム事業の強化に加え、それに匹敵するような新たな柱の礎を築く。そして、そのためにはM&Aを積極的に活用すると明言されています。
DeNAの事業セグメントは、2017年第一四半期の決算説明会資料で以下の4つに分類されています。この新規事業のドメインの中かから、ゲーム事業に匹敵する収益の柱を生み出したいということでしょう。
続いて、過去5年間の子会社化事例です。DeNAは過去5年間で子会社化した会社のうち3社はいずれもキュレーションメディア事業です。金額は単体では金額非公表ですが、iemo・ペロリ(MERY)の買収額は合計で50億円となっています。
サービス名 | サービス概要 | 金額(百万円)
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2014年
iemo | キュレーションメディア | 非公表
ペロリ | キュレーションメディア | 非公表
2015年
FindTravel | キュレーションメディア | 非公表
上記の企業を買収後、2015年にはキュレーションプラットフォームの新構想「DeNAパレット」を発表していました。この構想に加わる領域特化かつユーザー数を多く抱えるメディアの買収が続くと思っていましたが、2016年にWelq問題が起きたことでキュレーションプラットフォーム構想は閉じることになってしまいました。
その後の子会社化事例はなく、資本参加を含めて見ても2017年にオンラインプログラミングスクールのProgate・ひきこもりを加速するのキャッチフレーズでお馴染みのVRスタートアップClustarの2社に留まっています。
これらの情報から、今後のM&A方針はまだ固まっていないように思います。
ただ、大枠の方向性としてIP創出プラットフォーム・オートモーティブ・ヘルスケア事業を加速度的にグロースさせるための集客エンジンを買収する方針に進んでいくのではないでしょうか。
2. GREE
こちらも目指す姿から考えていきます。
2017年第四半期決算説明会資料記載の中期方針では、ゲーム・エンタメ事業を継続成長させ、投資期の事業として広告・メディア事業、新規事業を推進していく方針です。
DeNAもそうでしたが、ゲーム事業を収益基盤としながら他の事業領域に展開していくことは当然の流れと言えるでしょう。
そんな中で、2018年度の事業方針として、ゲーム・エンタメ事業では継続成長を狙うためにIP活用・グローバル展開。広告・メディア事業ではアプリ×オリジナル動画×継続投資のコンセプトで事業展開を進めていくようです。
広告・メディア事業は複数ジャンルの動画メディアで地位を確立していく狙いのようなので、ジャンル特化のユーザー数を多く抱えたメディアや、動画制作のノウハウを保有した制作会社などが買収対象となってくるのではないでしょうか。
上記の情報を踏まえ、過去5年間の子会社化事例を見てみましょう。金額はセカイエが13億円、3minuteが43億円と、こちらも国内ではなかなか大きい金額です。
サービス名 | サービス概要 | 金額(百万円)
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2014年
セカイエ | リフォームEC | 1,300
2017年
3minute | 動画メディア・EC | 4,300
2014年に買収したセカイエはオンライン上で定額リフォームを提供するサービスですが、既に株式会社Qに譲渡価格1円で株式譲渡を行っています。
当時は住まい・ヘルスケア領域への進出も検討したGREEでしたが、ゲーム事業とは大きく離れた領域で事業展開していくことは失敗し、しばらくはゲーム事業で培ったケイパビリティが活用できる範囲で事業展開していく意思決定をしたことが推測されます。
2017年の3minuteの買収に関しては広告・メディア事業を強化していく意図が読み取れます。ファッション領域の動画が多い3minuteを買収し、コンテンツ制作・グロースのノウハウを社内に蓄積し、他の領域に横展開していく展開になると考えられます。
横展開しやすい領域の基準は明確にわかりませんが、コスメ・料理・フィットネスなど女性向け動画サービスでユーザーを多く抱えたサービスは買収検討対象になるのではないでしょうか。
3. mixi
mixiの事業セグメントは、エンターテイメント・メディアプラットフォームの2つに分類されている。
モンスターストライクやSNSのmixiが含まれるエンターテイメント事業の2018年の戦略は、130億円の投資を通じて領域拡大・新規タイトル創出を行うこと。内訳として、50億円がユーザー還元施策、アニメ・動画コンテンツ領域を拡大するために30億円、オフラインにストアを設けるマーチャンダイジングの推進に20億円、新規タイトル創出に30億円投資する予定となっています。
また、メディアプラットフォーム事業は引き続きライフタイムが長く安定した事業を複数展開することに注力していくようです。
さて、同じく子会社化事例を見ていきます。
2013年から買収事例が記載されていますが、その年はちょうど朝倉さんがmixiの代表にされた年でもあります。モンスターストライクが登場したのも2013年です。
代表が変わったこともありM&Aの戦略も立てられ、今あるキャッシュを未来のキャシュフローへ転換するという考えのもと、立て続けにEV/EBITDA倍率が低い複数の事業を買収をしていきました。その中で買収に至った企業が以下の4社です。
サービス名 | サービス概要 | 金額(百万円)
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2013年
Diverse | 結婚支援 | 1,090
コンフィアンザ | 街コン | 非公表
2015年
ミューズコー | 動画メディア・EC | 1,749
フンザ | チケットフリマ | 11,573
チケットフリマのフンザは、今のメディアプラットフォーム事業の主力となっており、mixiにとって今後事業領域を拡張するために非常に良いM&Aになっているのではないでしょうか。
また、自社サービスとしてminimoも順調に成長しており社内でCtoCサービスをグロースさせるノウハウ蓄積や人材育成が進んでいると思われます。特定領域のCtoCでユーザー数多くマーケットも大きいサービスは買収可能性があると考えられます。
4. コロプラ
コロプラは、2017年9月期は2016年9月期と比較し減収減益見込みと厳しい状況となっています。
そんな中、業績挽回のための打ち手は完全にVRに絞っているように見えます。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の普及に向けて、ゲーム・360度動画・ファンド運用の3つの柱で会社運営を進めていきます。
今までの3社と比較して、コロプラだけがゲーム領域を中心とした事業展開を進めていくところです。ライフサイクルが短い事業の中で新しいサービスを生み出していく意思決定になるはずなので、チャレンジングな方針を掲げていると感じます。
そんなコロプラの子会社化事例は以下の通りです。子会社化もゲーム領域の会社に絞って実施していることが読み取れます。
サービス名 | サービス概要 | 金額(百万円)
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2013年
ソーシャルゲームインフォ | ソーシャルゲーム情報サイト | 非公表
2015年
リアルスタイル | ゲーム開発 | 非公表
ピラミッド | ゲーム企画・開発 | 非公表
2016年
エイティング | ゲーム企画・開発・運用 | 2,350
また、推測ですが今までの3社は事業自体を買収することが目的の中心であったのに対して、コロプラは人の買収が多いように見えます。エイティング・ピラミッドの買収はどちらも開発リソースの拡充・開発体制の強化が目的とされています。
今後、VRコンテンツを開発していくために必要な開発リソースを調達するためのM&Aは積極的に起こるのではないでしょうか。
まとめ
DeNA・GREE・mixi・コロプラの今後のM&A方針をまとめます。
まず、コロプラだけはM&Aの大きく方針が違い、VR開発リソースを拡充するM&Aを実施していくと考えられます。
その他3社の中でも、DeNAは現段階では方針が見えていません。社内での事業開発が得意な集団であるのであまり活発には行われない前提ですが、するとしたらオートモーティブ・ヘルスケア事業を成長させるために必要なものを調達してくることになるでしょう。
GREEは、あえて領域を特定しにいくのであれば、女性向け動画(コスメ・料理・フィットネスなど)サービスでユーザーを多く抱えたサービスは買収検討されるだろうと思います。
mixiは、チケットキャンプ・minimo運営て培ったノウハウを活用できる、特定領域のCtoCでユーザーがついてきており、マーケットポテンシャルが大きいサービスは買収可能性があると考えられます。
引き続き、今後の各社の動向に引き続き注目です!