見出し画像

壮大な愛の物語

彼はこの世界に、宝物を散りばめた。

彼の愛するひとのために。

手紙だけではだめだったんだ。

言葉だけでは表せないこともあるから。

それに、ウィットに富んでいたほうが
面白いと思ったんだろう。

この世のありとあらゆるところに、
彼が彼女のことを愛しているという
証が散りばめられている。

空から落ちてくる雪の中にも、
海の中に住んでいる生き物の中にも。

7歳の時、初めてその宝物の一つを見た
彼女は目を見開いて驚いた。

彼女は手袋についた雪を見て、
信じられないという顔をした。

小さな雪の一つ一つが
美しい結晶のかたちをしていたから。

海の中の生き物を初めて真剣に見た時も、
空にかかる大きな虹を見たときも、
彼女は同じように目をまるくした。

そうして、少しずつ気づき始めたんだ。

この世は壮大な愛の物語であることを。

彼は彼女に素晴らしいものを用意している。

彼女がどこにいても、どこへ行っても
素晴らしい感動に包まれるように。




日が暮れようとしている今、
水色だった空は綺麗なオレンジ色に輝き出した。

身支度を始めた鳥たちが
「帰ろう」という合図を送り合っている。

でもその中にも仕掛けがあることを
僕は知っているんだ。

よく聞いてみるといい。

その中に別の何かが
隠れているのがわかるだろう。

この世は壮大な愛の物語だった。

愛する人のために用意された、
壮大な愛の物語。

その証は、風の中にも、空の中にも、
水の中にも隠れている。


















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?