ショートショート | 田中くん
1年5組の田中くんは、みんなに怖がられる存在だった。
家柄が家柄だけに、誰も田中くんに近づこうとはしなかった。
誰も、田中くんと目を合わせない。
田中くんは、話しかけられることもなければ、
いじめられることも当然なかった。
教室の窓際で堂々とタバコを吸っていても、
それをとがめる先生もない。
クラスメイトたちは何も気づかないふりをしながら
田中くんに目をつけられないことを常に気にした。
しかし、当の田中くんは誰かに目をつけようなどという
気持ちはさらさらなかった。