【石狩データセンター10周年-挑戦の軌跡-】DXの歴史とともに歩むさくらインターネット石狩データセンター年表
さくらインターネット、広報担当の朝倉です。
連載もいよいよ第9回となりました。今回は、石狩データセンターの歩みを年表にして振り返ってみたいと思います。
たかが10年、されど10年。インターネットやICTの進化は非常に速いもので、この10年ほどの間に世の中はどんどん変化していきました。その中で、石狩データセンターがどのように歩みを進めてきたのか、当時を懐かしみならお楽しみいただけたら幸いです。
2010年
総務省の資料によると、この年はスマートフォンからのインターネット利用が国内で初めてパソコンを上回り、我が国のインターネット利用の中心がパソコンからモバイル端末へ移行したとあります。
石狩データセンターの建設が発表されたのは、スマートフォンで誰もがソーシャルメディアにアクセスする時代の幕開けとなった頃でした。
FacebookやTwitterがサービスを開始したのが2008年、2010年にはInstagramがサービスを開始しています。
また、この年には「第1回クラウドコンピューティングEXPO」が東京ビッグサイトで開催され、インターネット業界内では「クラウド」という言葉をよく耳にするようになってきた頃です。
石狩データセンターに関しては建設を発表したこの年、以下のような動きがありました。
【6月】石狩データセンターの建設を発表
【6月】社長の田中が北海道知事を表敬訪問
【7月】石狩市が主催する「グリーンエナジーデータセンターセミナーin東京」で田中が石狩データセンターの建設についてプレゼンテーション
【12月】屋根の仕組みと断熱性について検証するため、モックアップを使って実験開始(翌年3月まで)
2011年
この年東日本大震災が発災し、固定電話や携帯電話の回線混雑の影響で利用が困難になる中、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが活躍しました。そして震災後にLINEやFacebook Messengerがサービスを開始しています。特にLINEの登場は、これまでICTを日常的に使いこなしてこなかった層にまでオンラインコミュニケーションへ参加させる機会を拡大させました。(令和元年度版情報通信白書 第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety5.0)
また、企業の事業継続に対する備えについても大きな注目が集まり、BCP対策として郊外型データセンターを検討する動きも活発になりました。
石狩データセンターの起工式翌日に東日本大震災が発災したため、建設にも大きな影響がありました。
そして、この年の11月にいよいよ石狩データセンターが開所します。
石狩データセンター建設についての秘話は、連載第1回にも詳しく掲載していますので是非ご覧ください。
また、この年にはAWS(Amazon Web Service)が東京リージョンを開設し、各地でAWSを利用するエンジニアのコミュニティ(JAWS)ができ始めていました。Googleも、2008年にサービスを開始したPaasサービスであるGAE(Google App Engine)に加え、この年にGCE(Google Compute Engine)というIaasのサービスをリリースしました。
海外のクラウドサービスが日本でも定着しつつあるこの年に、さくらのクラウドが石狩データセンタで誕生しました。
【3月】起工式
【4月】石狩データセンターのオペレーションを担当するメンバーが堂島データセンターで半年の研修を開始
【10月】さくらのクラウド構築開始
【11月】開所式、さくらのクラウドサービス開始
2012年
この年、2010年頃から人気が高まってきたソーシャルゲームが新たな時代を迎えます。
石狩データセンターでは、本格的な運用が始まった頃です。
データセンター運用の苦労話、サービス品質向上の裏話については、こちらをぜひご覧ください。
クラウドサービスについては、この当時はまだ敷居の高さを感じているユーザも多かったり、従量課金であるため予算の見通しが立たないことや、アクセス数が増えれば増えるほど割高になる料金体系などがネックになって、クラウド環境からオンプレミス環境に移行したいという相談を受けたり、まだまだ過渡期の状況でした。
石狩データセンターでは、クラウドサービスのブラッシュアップも続けつつ、お客さまに寄り添いながらより良い環境の提案が可能となる各種サービス(さくらの専用サーバ・リモートハウジング・ハイブリッド接続など)が立て続けにリリースされたのがこの年でした。
【2月】さくらの専用サーバ提供開始
【4月】リモートハウジング提供開始
【7月頃】大型テナント2件の入居により、テナント常駐者へのサービス体制構築
【10月】ハイブリッド接続提供開始
【10月】さくらのVPS石狩リージョン提供開始
2013年
この年、LINEの登録ユーザが世界で1億人を突破したそうです。また、ゲーム業界では以下のようなニュースが続き、2012年に続いてターニングポイントとなった年でした。
ゲーム以外では、この年フリマアプリのメルカリが創業しています。それまでもYahoo!オークションなどのネットオークションサービスはありましたが、従来のインターネットオークションサービスが買い手によって価格が決定されるのに対し、フリマアプリでは売り手が価格を決定し、売りたい価格で買ってくれる人がいればすぐに取引が成立するという手軽さが受け、主婦や若者を中心に利用者が広がりました。
石狩データセンターでは、従来から外気冷房で空調における電気の利用を抑える工夫を取り入れていましたが、更に進んで送電や機器への給電時の電気のロスを減らす先進的な取り組みに参画しました。このような先進的な取り組みが注目を集め、データセンター見学会も活発に行われていた頃です。
【12月】2号棟がオープン
2014年
この年世間をにぎわせたのは、ベネッセの個人情報流出事件です。この原因が外部からのクラッキングなどではなく従業員(派遣社員)による個人情報の売却目的だったこと、被害者へ金券500円を提供する際、募金の選択肢についても案内したために大きな議論が巻き起こったことなどで、企業のブランドが大きく揺らぐことになりました。
セキュリティも含めて安心して運用を任せられるサービスとして、さくらのマネージドサーバが選ばれるようになり需要が伸びたため、この年に石狩データセンターにも構築が開始されました。
またこの年に「過労死等防止対策推進法」が制定され、「ブラック企業」「働き方改革」という言葉が出てきたのもこの頃のようです。
石狩データセンターでも増え続ける業務に対応するため、優秀な人材に長く働いてもらえるよう積極的な採用活動を行いました。その結果Uターン・Iターン人材を含む多数の人材を登用し、現在もその時採用されたメンバーが活躍して安定的な運用を生み出しています。
さくらのマネージドサーバを石狩データセンター内に構築開始
激増する業務を支えるため、積極的な採用活動を行う
2015年
この年ゲーム業界ではこのようなニュースがあり、特にモバイルゲーム市場における競争は激しさを一段と増していました。
通信キャリア端末のSIMロックフリーの義務化が施行され、ユーザーにとってはスマートフォンや通信キャリアの選択が自由になる一方、キャリア間の競争に拍車がかかることになりました。
ソラコムがIoTプラットフォームサービスを開始したのもこの年です。
石狩データセンターでは、この年3号棟の建設を発表しました。3号棟建設の秘話は、こちらの記事をぜひご覧ください。
【8月】太陽光発電所開所
【9月】3号棟の建設を発表
【9月】データセンターへの超電導送電実施
2016年
この年、日本銀行内にFinTechセンターが設立されました。これをきっかけに金融とテクノロジーの融合(FinTech)に対する期待が高まり、さくらインターネットが参加したブロックチェーン適用実験に対してもかなり大きな注目が集まりました。
これ以前にもさくらインターネットではコンピューター将棋ソフトのPonanzaにサーバーを提供するなど、演算能力に優れた高性能サーバーの提供には個別に対応していましたが、ブロックチェーン技術や、AIによる解析などを支えるサービスとして高火力コンピューティングへの取り組みを開始しています。
大量の電力を消費し、重量のある機材も置くことのできる石狩データセンターは、高火力コンピューティングにおいても有効活用されています。
2017年
この年、Google HomeやAmazon Echoなどのスマートスピーカーが発売されました。
また、Adobeが2020年末にFlashのサービスを終了すると告知しました。ゲームやWebアプリケーションになくてはならなかったFlashですが、サービス終了の背景にはセキュリティの脆弱性という問題がありました。警視庁は「サイバーポリスエージェンシー」を開設、すでに社会問題化していたサイバー犯罪に対する情報公開を始めています。
石狩データセンターでもセキュリティを始めとしたサービス品質に対する認証の取得を積極的に進めました。
【3月】PCI-DSSに準拠
【5月】SOC2に対応
2018年
この年の12月に、経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を取りまとめ、日本でもいよいよDXという言葉を耳にするようになります。
さくらインターネットは石狩市と包括連携協定を締結し、IoTプラットフォーム「sakura.io」を使った河川水位計測システムの試行運用や、石狩市内小中学校への出前授業などを通じて行われた教育分野におけるICT支援など、地域貢献における情報技術の利活用を模索し始めていました。
そんな中発災した北海道胆振東部地震では、2日以上にわたるブラックアウトという大きな試練を乗り越え、サービスを維持し続けた石狩データセンターに大きな注目が集まりました。
北海道胆振東部地震におけるさくらインターネット社員の奮闘ぶりは、こちらの記事をぜひご覧ください。
【9月】北海道胆振東部地震が発災
2019年
平成が終わり令和となったこの年、クラウド名刺管理サービスのSansanが東証マザーズに上場を果たし、人事・労務クラウドシステムのSmartHRや、ノーコードアプリプラットフォームのYapplyが大型資金調達を果たしています。
また、文部科学省が「GIGAスクール実現推進本部」を設置。小中学生に対する1人1台の端末整備と、学校に対する高速大容量のネットワーク環境の整備を同時に進めることを発表しました。
誰もがICTを活用し、豊かな暮らしを実現する時代に入ったと実感する1年となりました。
このような時代の移り変わりとともに、さくらインターネットが提供するサービスは「安くて速いウェブサーバー」から「お客さまの『やりたいこと』を『できる』に変える高付加価値サービス」へと進化を遂げました。
スーパーコンピューター(以下、スパコン)と言えば、大学や研究所などに置かれた特別な機器のようなイメージがありますが、石狩データセンターで稼働するスパコンが世界ランキングで順位を獲得したことは、我々にとっても感慨深いものがありました。
2020年
年が明けてすぐ、年末に海外で発生が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が日本でも確認され、大騒ぎとなったのは記憶に新しいことだと思います。
これまで当たり前だった生活が同じようにはできなくなり、新しい生活スタイルを模索する日々が始まりました。このような状況の中、在宅勤務やオンライン授業など、ICTを活用して生活することがあっという間に普通になり、ビデオ会議システムのZoomやUber Eatsなどの宅配サービスが脚光を浴びました。
このようなICTを活用した生活で必要となる様々なソフトウェアを支えるインターネットインフラサービスが、石狩データセンターを中心にどんどんブラッシュアップされていきました。
2021年
そして昨年、延期されていた東京オリンピック2020が開催されました。開会式ではドローンが編隊を組んで夜空を彩り、日本の代表的なコンテンツであるゲーム音楽での入場行進が話題を呼びました。無観客の試合を家庭で応援し、SNSなどで世界中の人が感想を共有し合ったことも、異例ではありましたがある意味忘れられないオリンピックになったのではないでしょうか。
一方将棋の世界では、AIを利用して独自の世界を切り拓いた藤井聡太さんが、史上初めて10代での四冠達成、最年少五冠を成し遂げて話題になりました。
10周年を迎えた石狩データセンターは、電力の調達先を変更し、サステナブルなデータセンター運営を目指して動き出しました。石狩市とも引き続き連携を強化し、社会のDXをしっかりと支えていきます。
【6月】電力をLNG・ガス火力発電に変更
【9月】石狩市と「デジタルトランスフォーメーションの推進及び脱炭素等のイノベーションによる地域活性化に関する包括連携協定」を締結
【11月】石狩データセンターが10周年を迎える
時代と共に振り返る石狩データセンター10年の歩みはいかがでしたか?
いよいよ次回は連載の最終回です。お楽しみに!
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