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○ひとり、空を歩く
今年の夏から密かに更新を楽しみにしている、POPEYE WEBの特集。
上白石萌歌さんの『ひとりがたり』。
彼女の感性がそのまま詰め込まれた、彼女が見えている世界を味わうことが出来る、唯一無二のエッセイがとても好きだ。
中でも好きな回は「浴場の戦士たち」。
銭湯と戦闘をかけているのかな、と思いながら少し笑みがこぼれたり、銭湯って日本独自の文化だよなと気付かせてくれたり。
ひとりの時間を大切にしつつも、どこか深い部分で他人との繋がりを感じられる。そんな彼女のひとりがたり。
わたしも倣って書いてみようと思う。
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わたしの心の調子を整えてくれたり、現実を少しだけ忘れさせてくれるものがマンガだ。
読んでいる時はかならずひとり。
けれど作品の中で息づく登場人物たちと、その作品を描いている神様・作家さんたちがわたしをひとりにさせない。
マンガを読んでいる時、大体は空から作品を眺めているような、まるで透明人間になって覗いているような感覚になる。
ごく稀に主人公に憑依して、主観的な視点で作品世界を見ることもあるけれど本当に数少ない。
どの作品も主人公が主軸になって物語が進むけれど、結局書かれていること以外、主人公のことは何も知らないからだ。
どんな昨日を送っていたの?
場面切り替えのこのタイミングではどんなことが起こったの?
なぜその食べものが嫌いなの?
過去にどんな人と出会ったの?
いつもそんなことを思いながら、時には妄想しながら彼らに思いを馳せている。
『狼陛下の花嫁』を読んだ時に柱部分で先生が、複数人のファンの方から李順というキャラについて質問を受けたという話を書いていた。
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細かいキャラ設定についてだったらしく、皆知りたいことは同じなのだなあと同士を見つけた嬉しさを感じた。
作品には人の心を整えたり掻き乱したり、色んな力を秘めている。
荒川弘さんの作品『黄泉のツガイ』では、作中に漫画家が登場する。
![](https://assets.st-note.com/img/1728950962-tvPo439KLrb1dJfhRFUSWVgE.jpg?width=1200)
その漫画家が描く作品は、とても優しい。けれど現実はそこまで優しくない。その漫画を読めば、この作品の人たちは裏切らないだろうなと思える。そんな趣旨のやりとりがある。
どこまで行っても、よくもわるくもフィクションだ。現実には存在しない。
けれどその作品を生み出した人は、紛れもなく現実世界の人。
そのことを勝手に誇りに思っている。
世の中には優しい作品がたくさんあって、そんな世界を生み出せる人がいる。そんな世界を想像できる人がいる。その世界に救われる人がいる。
もちろん現実を突きつけるような、脳裏にへばりついて離れないような、暴力的で加虐性を孕んだ作品もある。
けれどやっぱり
Fact is stranger than fiction.
(事実は小説よりも奇なり)
わたしのひとり時間は、いつだって少し騒がしくて愛おしい。作品世界の空を自由に飛び回って、彼らとともに歩いている。
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